くましー
んー、キャラをそのまま移行できるゲームもあるが、さすがにオヴリビオン・ダスクとモフモフ・オンラインじゃ、ゲーム性が違いすぎるよなぁ……。やっぱ何かのバグなのか?
「ねー、ともだちになろー」
「にゃー、ともだちにゃー」
「バウ! バウ!」
こんなふわふわなゲームに、暴力じみたステータスは似合わない。
てか、ゲームが違うんだから、ステータスの項目も違うはずだろ?
これは……面倒臭いけど、一回やり直すしかねぇかな……。
「なにこれー、かっこいいにゃ~!」
「わ~、かしてかして~ガウガウ」
獣人たちが、俺の剣を抜こうとする。
「ちょ! あ、あぶないから!」
カンストさせたラグナロクだぞ⁉
こんな弱々しい獣人たちなんて、剣圧に触れただけで蒸発してしまいそうだ。
「にゃー、けちー、見せてにゃー」
「バウワウ!」
グイグイと肉球で押される。
「だめだめ、死んじゃうから……」
ん? このゲームって死ぬのか?
よくわからんが……、とにかくこれはまずい。
俺の鎧はパッシブで『常時カウンター』が発動してるからな。
うっかり殺したとか洒落にならない。
とりあえず武器はストレージにぶちこんで……。
確か、初期装備の服があったはず……お、あった!
俺は『初心者の服』を装備した。
これで、獣人達がはぐれ死することはないだろう。
さすがに木っ端微塵になった獣人など見たくないからな。
えーっと、スキルも使えるのかな?
俺は近くの猫獣人に【鑑定】を使ってみた。
―――――――――――――――――
なまえ:ニャベル
しゅぞく:ねこじゅうじん
なかよしれべる:3/10
とくちょう:かりがうまい
―――――――――――――――――
お! 使えた!
へぇー、変わったステータスだな……。
ていうか、このステ見て、何をどう判断しろというんだ⁉
あれ? このゲーム、シナリオは無いんだっけ?
んー、狩りがあるんだから、戦闘がないわけじゃ無いと思うんだが……。
とにかく、まずは自己紹介かな?
「こ、こんにちはー、俺はねこやしき、だよぉ……」
――き、緊張する!
こんな普通の挨拶をしたのなんて、何年ぶりだろう⁉
頼んでもないのに脇汗が凄い。
「わーい! ボクはニャベル! よっろしくにゃー!」
くるんと一回転した後、ニャベルは嬉しそうにジャンプした。
【ニャベルのなかよしれべるが+1上昇しました】
おお! あ、あがった……! なんか嬉しい!
もう一度鑑定してみると、なかよしれべるが4/10に変わっていた。
へぇーっ! 意外にすぐ上がる仕様なのかな?
よーし、この調子で……。
で……?
――ふと、我に返る。
なんだこれ、カオスすぎない?
なかよしれべるを上げていけばいいのか?
そもそも、上がったからってどうなる?
既に帰りたくなってきたんだが……。
「わふ! まずはおうちをつくろうよ!」
犬獣人が尻尾を振りながら言う。
なるほど、少しはガイドがあるのか……でも、どうやって作るんだろう?
「誰か家の作り方わかるかな?」
そう訊ねると、獣人達はキョロキョロと周りを見た。
すると、さっきの犬獣人が、
「がうー、"くましー"なら知ってるかもー」と、少し離れたところに見える、赤い屋根の家を指さした。
「くましー?」
言われた通りに、赤い屋根の家に来てみた。
ていうか、何でみんなついてくるんだろう……。
後ろを見ると、十数人くらいの獣人がワイワイ言っている。
俺は木のドアをノックした。
「こんにちわー」
「「こーんにーちわーっ!」」
「うぉっ⁉」
俺に続いて、後ろの獣人達も合唱のような挨拶をした。
「び、びっくりさせるなよ……」
その時、ギィッとドアが開き、中から大きな熊が顔半分だけ覗かせる。
「……何か用かぁ?」
「あ、えーっと、くましー? 俺はねこやしき、と、ともだちになろう!」
くましーは、じーっと俺を見つめて、
「いまは気分じゃないなぁ、蜂蜜をくれたらなってもいいよぉ……んじゃ」
「ちょ⁉」
呼び止める間もなく、くましーはドアを閉めてしまった。
次話は明日12時!
良かったらブクマ登録お願いします!