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スカイウィッチ 一話 「蒼い翼」

 似てると思われてもなにも言えない…

 12時32分、カリア海南東の上空を監視所からグレー出現の報告を受けた蒼い鳥に跨がる四人の航空魔女が出現ポイントに向け飛行していた。


「予想遭遇ポイント到着、待機する」


 遭遇ポイントを中心に四人でぐるぐると円を描くように飛び、敵を待つ。しかし、いつまで経っても現れることがなく、痺れを切らしたサラが文句を言う。


「んも~、いつになったら現れるのさー!」

「実はもう行き違ってたりしてな」

「ぷーつまんないー!」

「お二人とも、任務に集中しなさい!怪我してしまいますよ」


 テアは無線で基地に敵の位置を聞いたが、基地のレーダーから敵の反応が消失し確認できないと返答された。


「クロイツェル大尉、どうしますか?」

「このままここにいても魔力を無駄に消費するだけだな。一度引き返して」

「テア!上!」


 無線の先から大声が響き見上げると、上空から黒く巨大ななにかがこちらに向かって降りてきていた。


「全員!散らばれっ!」


 四人は間一髪のところで回避することに成功した。陣形を立て直し、再び向かってくる灰色の鳥を迎え撃つ。


「敵確認した!タカ系中型だ!これより戦闘を開始する!」


 1816年、突如あの美しい大空に出現した灰色の鳥。グレーと名付けられたそれは、何の前触れもなく地上を攻撃した。彼らに対抗する手段はただ一つ、魔力兵器だった。しかし、それも十分ではなく決定打にはならなかった。ブルーが現れるまでは。ブルー、魔女の力によって操られたグレーのこと。始まりはグレーの模倣計画だった。彼らを彼らの力で倒すというもので、別の方法でグレーを再現するつもりだった。だがあるとき、グレーを魔女が操れることが判明、その際にグレーの体表が青色に変色したためそう名付けられた。世界中で魔女が集められとある部隊を結成した。魔女の力は15歳前後の少女が最も高いため、その部隊は基本その少女達で構成されていた。部隊の名は、航空魔女隊(スカイウィッチ)。人類最後の希望だった。


 1820年3月7日14時23分現在、カリア海へ出撃していた四人の航空魔女がゼルン共和国北方にあるヒルフランド基地に帰還した。


「クロイツェル中隊、只今帰投した。格納庫を開けてくれ」

「了解。格納庫解放。みんなお疲れ様」


 滑走路へ降り立ち格納庫へブルーを歩かせ、庫内に拘束した。戦闘の緊張から解き放たれ、ため息や伸びをして体をほぐす。


「はー!腹へったぜ~」

「んーー!疲れた!」

「怪我人が出なくて良かったですね。大尉」

「あぁ」


 誰かのお腹が鳴って静かな格納庫にそれが響き渡った。突然、サラがお腹を押さえロッティにもたれ掛かった。


「あう~。お腹すいたぁ」

「サラ、大丈夫か?」

「大丈夫じゃ、ない」

「無理もない。昼食前だったからな」


 格納庫へ隊長と新人二人がやって来た。


「みんな、お帰りなさい」

「あぁ、ただいま。ビディ」

「お疲れ様です!みなさん!昼食、出来てますよ!」

「やったー!ごはんー!」


 その言葉を聞いたサラは飛んで喜び、食堂へ走っていった。


 その日の15時、新人の藍華とファニーはルーシー指導の下で飛行訓練を行っていた。


「速度を上げます。ついてきなさい」

「はい!」


 ファニーはなんとかルーシーの藍華は思うように速度が上がらず離れてしまった。ファニーも始めは付いていけていたがカーブが大回りになってしまい大きく離された。


「ファニー、カーブはもう少し傾けなさい」

「はい!」

「藍華、あなたは羽ばたき過ぎです。…藍華、返事はどうしました」

「はぁはぁ、す、すいません。でも私、もう…」

「藍華ちゃん!」


 体力が底をついた藍華は糸の切れた操り人形のようにただ重力に引っ張られて海に落ちていく。それに気づいたファニーが急いで助けに向かう。


「だめ、間に合わないっ」


 半泣きになりながら藍華に手を伸ばすが到底届く距離じゃなく、それどころか更に離れていく。このままでは海面に激突してしまう。


「ちょっと様子見に来たら…。まったく、かわいい新人だな」


 高速で飛行してきたブルーに乗ったロッティが藍華を華麗に受け止めた。藍華のブルーはそのまま落ちていったが藍華は無事に助けることができた。すぐに藍華のもとへ向かうファニーとルーシー。


「シャルロットさん!藍華は?!」

「安心しな、ぐっすり寝てるだけだ。無事だよ」

「よかった」

「ルーシー、藍華はまだ軍に入ったばかりなんだ。もう少し優しくしてやってくれよ」

「ここは最前線です。しっかりと戦力になってもらわないと困ります」

「まあまあ、そう言うなって。藍華はこのまま私が基地まで連れていくよ。二人は藍華のブルーを頼む」

「はい」


 基地の藍華自室にあるベッドに藍華を寝かし、ロッティはすぐそばで藍華が起きるのを待った。




 ある日の灰降る夕方。多くの人で混雑する軍港に藍華は一人で泣きながら家族を探していた。


「お母さん!!おばあちゃん!!どこにいるの!?」


 人の叫びと大砲の音に藍華の声はかき消されてしまい、誰にも届かなかった。人混みの中で家族を必死に探したが、途中で軍の人に腕を掴まれ船に乗せられた。家族を探してると説明すると、一人の兵士が私が必ず連れてくると言いってくれたが、その人が戻って来ることはなく、そのまま船は出航した。


「お母さーーん!!」


 直後、軍港にレーザーの雨のように降り注ぎ数秒で火の海となり、停泊していた複数の軍艦も巻き込まれ大爆発を起こした。後数分遅ければ藍華は生きてはいないだろう。


「そんな…」


 彼女はその場に膝から崩れ落ちた。




「…っ!」


 目が覚めるとそこは自室のベッドの上だった。窓から見た外はすっかり暗くなり時計の短針は21時を指していた。


「お、目覚めたな」

「シャルロットさん」

「なあ、体どっか痛いのか?」


 すこし焦った様子で藍華にそう言った。


「いえ、大丈夫です」

「大丈夫ったって、泣いてるぞ」


 自分でも気づかない内にものすごいたくさんの涙が溢れていた。ロッティがポケットからハンカチを取り出し藍華に渡した。


「ありがとうございます」

「悪い夢でも見たのか?」

「軍港でのことを…」

「そうか。あまり、無理しないようにな」

「はい。すいません、」

「謝らなくてもいいさ。それより、体調はどうだ?」

「もう大丈夫です」

「なら、良かった」


 ロッティは静かに立ち上がって部屋を出ようと扉に手を掛けるが、そこで一度止まって藍華の方に振り返った。


「そうだ。明日、ファニーにはちゃんとお礼いっとけよ。お前が寝ている間、お前の分の仕事はファニーがやってたからな」

「ファニーちゃんが、」

「それじゃ、おやすみ」

「はい、おやすみなさい」


 扉がパタンと閉まり、足音が遠くなっていくのを感じた。静かな夜、虫達の囁きがとても心地よく、藍華はまたすぐに眠りについた。




「……ちゃん……かちゃん…藍華ちゃん」

「はっ…!」


 起き上がると目の前にはファニーがいた。時刻は6時半、窓から白い光が差し込んでいて朝になっていた。


「ファニーちゃん、」

「おはよう。朝だよ」

「おはよう、ファニーちゃん。そうだ、昨日はありがとう」

「え?」

「シャルロットさんから聞いたよ。私が寝ている間、私の分の仕事もしてくれてたんでしょ?ありがとうね」

「ううん。いいよ、そんなこと。それより、体調はもう平気?」

「うん!すっかり元気だよ!」

「よかった」

「じゃあ、行こうっ!」


 今日も廊下から二人の楽しそうに話す声が聞こえる。

 あんまり触れてほしくないかな…

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