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女王の騎士 一話 支配のはじまりです!

 突如、異世界と繋げられた東京。扉の先から現れたのは幼女だった。女王のような風格と姿。紫を基調としたその服装、黒い髪と白い肌、クレオメの髪飾り、黒い煙のようななにかを纏う。形容するならそう、闇の女王──。

 女王は左手を突き出し強く握り締めた。


「一つ、ここと異なる世界を私は支配した」


 繋がったと言えど、人にその扉は見えず触れず操れず。初め女王は人から見ればただのふざけてる子供。


「次に、私はこの世界を支配しよう」


 交差点の中心に立ってわーわー騒ぐ子供。どんな人も無視して通りすぎるのは仕方のないのとだった。


「手始めにこの都市を支配する!」


 幼女の拳を起源に黒い球体が発生した。風船のようにどんどん巨大化していく。大きくなるにつれ判明したのは、それがただの黒ではないということ。何があってもその巨大化は止まることなく、人を、物を、建物を、町を飲み込んだ。逃げようとした人は大勢いるが、逃れた人は多くない。

 都市の一部を黒い球体によって隔離された。内側は外とこれと言った変化はない。しかし特殊な場だと女王は言った。


「これよりここは戦場となる!しかし、戦闘により死ぬことはない。私は殲滅しに来たのではなく、支配しに来たのだ!戦士でないものは即刻立ち去れ!そして伝えよ!外の戦士達へ!七日に一度、私は支配する領域を拡張する!止めたければ、我々五人を倒して見せよ!以上だ。行け!」


 突然の出来事だった。球体の内側にいた全ての人間は外へ転移し、内側には女王のみとなった。


「流石、お見事です。女王様」


 交差点に一人、扉の向こう側から来た人が現れた。女王と似た雰囲気で執事風の男だった。


「おぉ~!ここがハートのにぃにぃが繋げたラルタナかあ~」

「ふむ。なんだつまらぬ戦場だな」


 続いて、中世ヨーロッパにありそうな服装の幼い男の子が出現した。少年の上着はサイズが合っておらず手が見えない。少年と秒違いで来たのは、貴族風で長身の男だった。


「グローメルはどうした」

「強者との戦いのときにのみ行こうぞ。とのこです」

「…まあ良い。ナキキ、始めよ」

「はーい!いっくよーー!」


 掲げられた右手からなにか黒いものが打ち上げられた。遥か上空で爆発し円形の奇怪な模様、魔方陣のようなものが出現した。そこから逆さまに黒い外壁の城が降りてきた。


「毎度思いますが、よくあのようなおぞましいデザインを思い付きますね」

「そう?僕は結構気に入っているけどな~」

「はっ!良いではないか!狂気と混沌に喜劇を混ぜたあの城。姫に相応しいものではないか!」

「分かりかねますね」

「にひっ!」

「行くぞ」




 その後日より今日まで。日本の自衛隊は女王の侵略行為を阻止するため球体に部隊を送り込み続けた。


「全く、つまらないな!」

「ホントだよ。僕らの世界の方がもっと強いのいいっぱいいたのに」


 彼らは連日連勝を重ね支配領域を順調に広げていた。彼らは銃弾も爆弾も化学兵器も効かない。戦車も戦闘機もほとんど一撃で破壊されてしまい、まるで歯が立たなかった。通常兵器では彼らの服を破くことすらできなかった。彼らの尋常じゃない力の正体は不明、未知の力だった。言うならゲームやマンガにあるような魔法のようだ。

 連敗続きの自衛隊だが今のところ一人も死者は出ていないのが不思議なところだ。しかしそれは、女王の宣言通りだった。兵士達の話では死にそうな目に遭うといつの間にか球体の外に放り出されていたということらしい。怪我をしても外へ出れば元通り。それが死なない戦場ということなのだろうか。


「ん?」


 貴族風の男と無謀な一騎討ちをしていた兵士が妙な力を発動させ、男の服に傷をつけた。誰も成し得なかった偉業の発端だった。


「貴様、やるではないか。我輩はコルー-ヴェリアス!王より狂気を任されている者だ!一つ正式に我輩と剣を交えようではないか!」

「望むところだ!」

「だが!今ではない。貴様は戻りその力をより強くして見せよ!」


 吹き飛ばされ球体の外に放り出された兵士は気を失った。それから数ヶ月もの間、彼女は戦場に現れなかった。

 その日の彼らの夕食では、その兵士の話が話題に上がった。


「姫よ!今日は非常に今後が楽しみな奴が現れたぞ!」

「ほう。どんな奴だったのだ」

「微力ながら魔法を扱えるものが現れたのだ。強くなれるかは分からぬがな」

「ようやくか、長かったな」




 その日から、戦場が新たなステージへと押し上げられることになった。魔法を発動させた兵士はその力をより強くさせるため訓練を開始した。魔法専門の研究機関が作られ、長期に渡って魔法の研究が行われた。

 そして、研究の結果、魔法は15歳前後の少女が適正が異常に高いことが判明した。しかしながら、年端も行かない少女達を戦場に送ることはできない。よって、微力ではあるが大勢で挑めばあるいはという考えの下に人類史上初の魔法部隊ルドベキアを結成し送り込んだ。

 ルドベキアは始めは優勢に見えていたが、それはただ相手が本気ではないだけだった。三百人近い兵士達が僅か数分で敗北した。それもたった一人に。


「なんだ貴様ら。つまらぬ。弱い!弱すぎるぞ!」


 全国から特に優れた魔法適正を持つ12人の少女を召集し、教官に最初の魔法使い篁有穂一尉をつけ、魔法部隊ストレリチアを結成した。現状ではそうするしか、方法が無かった。




 あるよく晴れた日。今日はいつも朝から騒がし球体の内側が珍しく静で平穏な時間が流れていた。退屈するコルーは交差点の中央に持参した城の椅子を置き、座って空をただ呆然と眺めていた。


「おやぁ?なにか来たようだな。10人…いや、13人か?すくないが、なるほど」


 交差点それぞれの方向から武装した少女達が現れた。みんな自衛隊から支給された装備に身を包み武器は魔法で作り出したものらしかった。そして、コルーさんの目の前には有穂さんが立っていた。


「はっ!久しぶりだな貴様!あのときの兵士ではないか!どうだ?少しは強くはなれたか?」

「いや、全く。だから、きさまっ…貴方に頼みたいことがある」

「ほう」

「全員集合!整列!」


 武装した少女達が有穂さんの横に並び武器を納めて気を付けの姿勢をとった。


「恥を忍んでお願いします。私たちに魔法を教えてください!」

「お願いします!」

「っは!喜んで引き受けよう!」


 椅子を城に向かって放り投げ元気よくOKの返事をされ、逆に驚く少女達と有穂さん。


「えっ、いいんですか!?」

「もちろんだ!我輩はな、この町でこのような本を見つけたのだ!」


 そう見せられたのは漫画だった。学園ものの漫画で、少女達も有穂さんもご存知の有名なもののようだ。


「マンガじゃん」

「そういうものなのか?まあ!よく知らんが、この話は非常に面白い!我輩もこの先生というやつをやってみたいと思っていてな!」

「でも、よろしいのですか?この人物の許可などは必要ないのですか?」


 有穂さんはコルーさんに女王の写真を見せた。


「許可か。姫からはやりたいようにしろとの指示を受けている。つまり、問題ないということだ!」

「そう、ですか」

「そこでな!少女達よ!」

「はい?」

「今後、我輩のことはコルー先生と呼ぶように!よいか!よいな!」

「わー!はい!コルー先生!」

「うむ!」


 そのころ城では戦場の様子を少年ナキキ、本を持った執事ハートマン、女王ミラの三人が魔法で覗いていた。


「コルーは、いったいなにをしているのですかね」

「でもなんか、たのしそーだよ?」

「全く…」

「そうだな!思ったほど、悪くなさそうだ」


 とても嬉しそうに笑う女王の顔は普通の少女のようだった。

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