084.思い出して、自分の設定
「藍華、隣、いいか?」
アグネスとフェイが食事を持ってやってきた。
「もちろんどうぞ!
フェイ、これありがとう!」
フェイさん、から呼び捨てに変わってるのは、昼ごはんの時に彼にそうしてくれと頼まれたから。
首から下げたそれを指しながら言うと、
斜め向かいに座りながら答える。
「どういたしまして。少しでも助けになるといいんだが。」
「十分です!」
「しかしよく気づいたな、例のコト。」
向かいに座ったアグネスが言う。
「大吉から聞いたけど、こういう仕事、初めてなんだろ?」
「えぇ。。まぁ・・・なんですかね、生い立ちのこともあって、周りの雰囲気とか普通とか普通じゃないとか、ある程度は敏感に感じ取ることはできてるのかもしれないですね・・・」
生い立ちとその環境から、褒められることがあまりなかった身としては、照れて思わず本音が漏れてしまうが、はたと気づく。
あ、しまった。記憶喪失っていう設定だった。。。
「ハッキリとは思い出せないんですけど」
言って冷めたお茶を口に運ぶ。
カンの良い人たちだからこれで追求はしてこないだろうと踏んで。
「。。。そうか。。」
そう言ってフェイもお茶を口に含む。
「大吉は藍華のことをとても信用しているようだな。」
何を思ったのか突然そう口にするフェイ。
「藍華も、な。」
ニヤリというアグネス。
どうやらアグネスはフェイに話してはいないようだ。。。
わたしがモニャモニャということを。。。
わたしはというと、噛み途中だった肉を飲み込んでしまい、むせる前にとお茶を飲み干してしまった。
耳だけ熱が上がってるようで熱い。
顔面は赤くはなっていないことを切に願いながら食事を進めていると、大吉さんがポットを持って戻ってきた。
「おー、大吉気が効くじゃん。」
アグネスが言うと、
「あったほうが楽だろ?藍華も飲んじまったみたいだし」
そう言って空になってるカップに注いでいく。
み
見られて。。。た。。。?
耳からまた熱が上がってくる。
「サンキュー大吉」
「ありがとうございます」
フェイに続いてわたしもお礼を言った。
「例のことだが、商隊の連中にはすぐ言うそうだ。
事が起きた時に馬を御しやすいように。」
「そうか。そろそろかもしれないということがわかっているだけでも、動きやすいでしょう。」
アグネスが言う。
「護衛チームの方へは俺たちから───とのことだ。」
「んー・・・
護衛チームに伝えるのはしばらく後にしよう」
大吉さんの言葉に、難しく何かを考えるように言ったのはフェイだった。
「アグネスはどう思う?」
大吉さんが問うと、
「リーダーの耕助さんは大丈夫だと思うけどなー。。
まぁしばらく後でいいんじゃない?」
「???」
何故?
と、1人はてな顔の私。
「敵意レーダーにも引っ掛からず、フェイ、アグネス、俺の3人からも気取られずに、アーティファクトが使える距離までキャンプに近づくのは不可能だろう、ってことだよ。」
と、これまでよりも小さな声でそう私に言う。
「・・・・・」
大吉さんたちの考えはこうだった。
この商隊もしくは護衛チームの中に盗賊の内通者がいる可能性があること。
もしくはこの旅程で何かを起こそうとしている人物がいる。
「事態として、50メートル先からアーティファクトを操られるより、敵意レーダーに映らないような認識阻害系とのアーティファクトでもって身近に敵がいる方がやばいし、可能性が高いから、そっち向けの対応でいくことに決めたんだ。」
「認識阻害はまずいな。。。対応が俺たちの感覚に頼られる。」
大吉さんの言葉にフェイが言い、さらに大吉さんが応える。
「あぁ。。藍華が1番危険になる。」
どきん。
「藍華、絶対に1人になるなよ?
馬車で移動中はともかく、こういう食事の時とか。」
「女だけの用事なとこはあたしが一緒に行くから心配するな。」
アグネスがこたえてくれる。
「す。。ありがとうございます。。」
すみません、と言いそうになり言い直す。
気配とか殺気とか、感じ取れるのかと問われたら、答えは否。
相手は確実に素人ではない。
気配を消すことすらできるだろう。
できる限り足手まといにならないようにするには1人で行動しないのは必須。
「もし戦闘になって離れることがあったら強めの結界でしのぐんだぞ?」
心配されて、嬉しい反面。なんだかその心配て、親が子供を心配してる感じがして複雑な心境になる。
一応大吉さんとわたしは護衛として参加してる。
そう、わたしも護衛として参加してるのよ。。。
専門はアーティファクトってことになってるしそうなんだけど。
いや、イケナイイケナイ。
身の丈以上のことをビギナーがしては失敗した時に大変なことになる。
「善処します。」
ようやく出せた言葉がこれ。
しょうがない。人生初のことが多すぎるんだから。
この“きょうと”までの道。




