010. レプリカ作成の技術
「あれは……彼女がよくつぶやいてた言葉だ。
あの言葉に習って、できる限り一つのアーティファクトに対してあの三つを揃えれる物だけを店に出すようにはしている」
「それでもすごく大変な気がしますね」
じゃぁあのお店に置かれている物は、あのオタク三箇条を守って置かれた布教用、ということに……
「理由はオリジナルの保存のため。
オリジナルから作るレプリカはその性能も純度も高く、最良品質のレプリカとなるんだそうだ」
しっかりとした理由あった。
まるっきりコピーできると言うわけではないのかな……?
「さっきの冷蔵庫の動力、あれもレプリカで動いているんだが、オリジナルが有れば、材料さえ用意できたら同レベルのレプリカをいくつも作ることが可能なんだ。
一から作ることもできるんだが、そうするとどうしても粗悪品になってしまうのが現状だ」
一から作ると粗悪品て……。
「幸い動力のオリジナルは豊富に存在していて、複製も可能」
そう言って棚の上の方から箱を下ろして開け、その中の一つを手渡してくれる。
「ここに入ってるのは動力のレプリカだ」
先ほど言われたくらいの大きさの、ちょっと白色に濁ったほぼ透明の塊。
中には何かの金属片とコイルのようなものと、水晶のかけらのようなものが入っている。
「オルゴナイト…………?」
中に入っているものは、たしかにオルゴナイトの材料のようだった。
「そっちではそう呼ぶのか?
クゥもはじめ見た時大笑いしてそんなことを言ってた気がするが……」
「気になるのはこの材料なんですけど、この部分はなんなんですか?」
そう言って、わたしは半透明に見えている部分を指した。
「ガラスだ」
「これがガラス……?」
ガラスというには触感が何か違う気がする。
ガラスというよりはプラスチックの方が近いような……
「実際見た方が早いだろう、ちょっと待ってくれ」
そう言って何やらゴソゴソと材料と道具らしきものを引き出しの中から出してきて、片付け終わった机の上に乗せる。
まず、白い綺麗なマットを引きその上にコイル、金属片、あとおそらく紫水晶?のかけらをいくつか置く。
そして部屋の隅に置いてあった大きな麻袋から、小さな箱一杯のおそらく砂(?)を持ってきた。
用意した材料を全部右側に寄せて、左側にまた別の引き出しから動力のオルゴナイト(?)を出す。
レプリカと言っていた先程のものより透明度が高い。
あと小さな指輪も。
金属部分はだいぶ錆ていて、ひどい状態だけど、
水色の半球のレジンっぽいものが台座に収まっていて、底の部分に鏡のような質のものがあり、よく光を反射している。ワンポイントに、よくあるネイル用のダイヤ形のメタルパーツ。
百均に売ってるのと一緒だな……多分……
指輪を真ん中に置き、左側に動力オルゴナイトを設置する。
「アーティファクトの透明な材質の物だが、これは現在の技術では再現不可能となっていて、代替え品として発見されたのがコレだ。質の良いものを入手するにはかなり遠出する必要があるが、コレ専門に商売してる奴もいるから、入手がむずかしいってわけでもない。質の良いものはそれなりの金額するがな」
わたしの知っているガラスとは違いそうな雰囲気……
「まず、このアーティファクトの指輪に元となるものを記憶させる」
輪の部分を持って台座を動力アーティファクトに向けると、淡い光が指輪から発し、動力アーティファクトを包み込む。
魔法だ
「記憶させた物を、材料の方に向けて力を放つ」
一度発光が収まると、指輪を材料の方に向ける。
今度は眩しいくらいの光が動力アーティファクトを包んだ状態の形で一瞬現れたかと思うと、すぐに材料全部を包み込み、じわじわと形が変わっていき最終的に左側の動力アーティファクトと同じ大きさになった。
同じくらいの大きさになってから暫くすると、光がだんだんと収まっていき、消える。
後に残ったのは、先程のレプリカと似たような物だった。
「───────‼───────」
魔法だ……!