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ハンドメイダー異世界紀行⁈  作者: 河原 由虎
第一部 一章 ある日マンホールに落っこちたら
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009.三ヶ条

 店の奥、扉を開くと右手に食糧庫のような場所があり、奥の方に冷蔵庫がいくつか並んでいた。

 左側はメモなどが張れる場所になってるようで、様々なメモが張られている。


 そういえば電化製品、ランプとかも見たけれど動力はどうなっているのだろうか……?


 気になっている内容を感じとったのか、説明してくれる大吉さん。


「ここは食糧庫で、買い物が済んだらすぐここで保管作業に入る。冷蔵庫の動力はレプリカだ。部屋に行ったら見せるが、大型家電の動力は規格が

 縦十二センチ、横四、五センチで厚みは二センチまでのものだ。

 粗悪品は数ヶ月でダメになっちまうから目利きが必須になる」


 へー、半永久とかじゃないのか。

 うん百年も残って動いているらしいから、半永久に動き続けるのかと思っていた。


 食糧庫を過ぎ行き止まりまで行くと、上の階に続く階段があった。


 廊下も階段も人二人すれ違うには十分な広さで、古いけれどしっかり掃除されて小綺麗になっている。


「上には三部屋あって一つは物置になってる。

 ガラクタを物置に移したらだいぶ空くはずだから、とりあえず藍華に必要ないものはそこに移そう」


「ありがとうございます」


 登りきってみると、階段の真上は棚になっていて、いろいろな荷物が置かれていた。


「ここのものもそろそろ片付けるかな……」


 置かれているものを一瞥(いちべつ)してそう言う大吉さん。


「階段登ってすぐが俺の寝室、その隣が物置部屋。物置部屋の中には屋根裏にいく梯子もあって、そこにもある程度の荷物は置ける。突き当りがバスルームでその向こう隣がトイレ。そして──」


 物置部屋の横にある部屋の扉の前につき、鍵穴に向かって鍵を差し込むのではなく、鍵をかざす。

 すると鍵は僅かな光を発して、ドアが自然と少しだけ動く。


「ここだ」


 開かれたドアから中を見ると、落ち着いた色合いの草色と茶色で彩られた壁と家具、どこかカントリーチック(?)な雰囲気で控えめに入っている唐草模様もいい味を出している。同じ雰囲気の作業用であろう机がまたいい感じ。


「すっごく好みなんですけど……!」


 ええええコレ大吉さんが? とか思っていたら


「この部屋はクゥさんが使ってたんだ。

 壁の色とか模様は全部彼女の仕事だ……。

 元はただの白い壁に茶色い家具。

 “味気ないから模様替えとかしていい?”って言われてokしたら次の日にはこうなってた」


 作業机らしいそれは、ライティングビューローと呼ばれるタイプのもので、作りかけ途中らしい何かが散らばっている。


「すまん、作業途中でそのまま。

 机はここに残してくから使ってくれ」


「大吉さんの部屋にも机あるんですか?」


「あぁ。大丈夫だ。

 あ、とー小道具、工具系は必要か?」


 散らばっていたそれらを、近くに置いてあった空箱に入れながら言う。


「必要ないです。ちょうど資材の買い出しで新調したのがこのリュックサックに入ってるので」


「じゃぁ必要だったら言ってくれ。クゥさんの残してったやつもあるから」


 ぎゅるぃん


 と変な音立てて振り向くわたし。


「興味あるので見せていただけるならウレシイデス!」


 クゥさんといえば、幅広く色んなものを作られているので、工具というと、ワイヤーアクセサリーに使う物だろうか。ペンチ系も豊富そうだ……!


「彼女の残してった工具はこの箱の中だ」


 木の箱にシンプルに“碧空”のロゴっぽいマークがデーンと描かれていた。


 そっと開けてみると……

 ペンチは平ペン、丸ペン、先曲ペンチ、ニッパーのみで、想像していたのより少なかった。あとは種々様々な針に金属製の爪楊枝のようなものや、おそらくネイル道具のドットスティックや筆が何本か入っていた。


「なんか、感動します……

 リアルに使っていたという道具が拝めるとは…………!」


 思わず手を合わせるわたし。

 だいじにそーっと蓋を閉じ、


「できることならコレはメンテナンスはしっかりしつつ、神棚にでもあげて毎日拝みたいです!」


 と、言いながら、神棚の設置場所を考えようと、ふと入ってきたドア周辺を見ると、ドアの右隣、そこには簡易だけども神棚が!


 お社を模した扉と屋根のついた木でできたもの、その両隣には榊をたてるための花瓶のようなものまである……!


「あの社は俺の両親から受け継いだものだ。

 俺はあんまりやってなかったんだがな。クゥさんが来た時に毎日手入れしてくれてて……。今では俺も時々手入れして手は合わせてる。なんか本も残してってくれてな。それも思い出した時にパラパラ読んでみてるよ」


 クゥさんは神道に詳しかったのかな?

 わたしは朝晩お参りするってことくらいしか知らないけれど。


「わたしがこの部屋お借りしてる間にも気にせず拝みにきてくださいね!」


「わかった。ありがとな」


 そう言って頭をポンポンとなでる。

 子供扱い……?


 少し納得いかない感があるけれど、何故だかわからないし、まぁいいや、と次の質問をする。


「ところであの神棚の横のあの文言は…………」


『アーティファクトに関する三ヶ条


 ☆観賞用 

 ☆保存用

 ☆布教用


 一つのアーティファクトに必ずこの三つを用意すること』


 えーっと…………


 オタクの三ヶ条かな…………?

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