case.1 好きなあの子の嫌いなところ
お昼休み
僕は教室の端っこで朝コンビニで買った菓子パンを貪る。
もそっとした食感がなんとも虚無感をより一層強くさせる。
彼女ーー春華は女子グループの中心で楽しそうに弁当を開いてる。
「春華それ、手作り? 毎朝大変でしょ?」
「ううん。もう慣れちゃったから。弟とお父さんの分も一緒に作っちゃうし、朝食も同じようであんま良くないよね」
囲いの女子達は「すごーい」とかいいつつ春華をはやし立てる。
彼女の家は父子家庭で母親は中学生の時亡くなっている。それから家事はほとんどやってるらしい。
直接聞いた訳じゃないけど、長年一緒にいるんだ。それくらい知ってるさ。
そんな事情も知らず聞いてくるあの取り巻きに苛立ちを覚えながら同時に優越感が押し寄せてくる。
これは普通の考えなのだろうか?
時々僕は頭がおかしいんじゃないかと思う時がある。
人と考えが違う。
中学生の時は厨二病で住んだけど、今更になって普通の人との距離感をより覚えるようになってしまった……
僕の事はいい。
彼女の話に戻ろう。
弟は姉と違い、内気な性格。どちらかと言うと僕に似ている……のだが、決定的に違う所がある。
容姿だ。
見た目は姉に似て、端正な顔立ち。
何を考えてるか分からないミステリアスな雰囲気もあってか女子にモテる。
更にはスカウトマンに目に止まってちょっと有名なモデルをやってたりもする。
春華に近ずけば弟にも近づけるようになるかも、と彼女の人気のひとつの要因にもなっているかもしれない。
そう思うと、無性に腹がたってくる。
だって彼女のことは全く見てないってことじゃないか。
春華がお弁当を食べ終えて談笑し始める。
最初は中心的に話していたが盛り上がってくるとあまり喋らなくなる。
一歩引いたように、周りを立てるように。
そんなことに僕の気持ちにゆらぎが起きた。
どんな風にとは言えないけど、ネガティブな感情だ。
これが嫌だという感情なのだろうか?
…………分からない。
でも一つ言えることは彼女が場に合わせて引いたことに違和感を覚えた。
そもそも嫌だという感情がよく分からない。
そこを知る必要があるのかもな。