5. 魔改造?
既にチート状態なのに、まだ上乗せするんですかね…
「まず向こうの世界は魔法はあんのか?」
唐突な質問に、神様は首肯する。
「よし、んじゃまずは魔法を使える様にしてくれ。」
迅の希望にまたしても首肯し、神様は言葉を繋げた。
「それでは【魔法術】アビリティをマスター状態で付与しますね。 慣れ方とかは向こうの世界で修行と言いますか、鍛錬を行なって下さい。 やり方は世界で其々違いがあると思いますので、申し訳ありませんが、向こうで伺って下さい。」
成る程、と納得し、迅は次の希望を伝える事にする。
「銃が使えねぇっつー話だが、代わりになりそうなモンはあんのか? 例えば弓とか…」
迅が言うや否や、食い気味に神様は返答した。
「あります! 弓もクロスボウも、もっと大がかりな物でしたら投石機なんかもありますよ! どれになさいますか?」
神様の勢いにまたも引き気味になった迅だが、悩ましい所であった。
まず使った事があるのは弓矢。
しかし、引き金を引く感覚を考えるとクロスボウかと悩む。
最初から投石機は除外である。
暫し黙考している迅の様子を、神様は少し不安げに見つめていた。
数分の後、迅が口を開いた。
「弓にしてくれ。 出来るんなら、俺の銃の技術を再現出来る様にしてくれると助かる。」
迅の言葉に首肯し、神様は返答をする。
「それでは【弓術】のアビリティをマスター状態で付与しますね。 【銃術】と【弓術】は派生スキルは非常に似てまして、むしろ【弓術】の方が派生数は多いので迅さんの懸念は解決しているのかな?」
迅は安堵した様子で頷くと、更に続ける。
「向こうはゲームの世界みてぇっつってたが、やっぱ剣だの斧だのが主流の武器か?」
神様は頷き、返答をする。
「そうですね。 特に軍に入る時や冒険家としてギルド登録する時は武器持ちの方が有利な様です。 拳闘士も居るみたいですが、そういう方は求道者と言いますか…自己研鑽のみに主眼を置いている方が殆どの様です。 弓矢だけでも良いと思いますが、念の為に近接武器のアビリティも取っておいても宜しいのでは?」
それを聞き、うーんと唸りながら迅が次の希望を口にする。
「俺、刀やらは肌に合わなかったんだよなぁ…。 斧も合わず、結局チェーンソー買ったしなぁ。 槍ってあんのか? あるんなら槍術を付けてくれや。 扱いも多分杖に似てんだろう。」
「御座いますよ! それでは、【槍術】のアビリティをマスター状態で付与しますね。」
軽い返答の後、【槍術】が付与される。
付与されたからと言って、当然実感は無い。
納得したか否かは定かで無いが、迅は何とも言えない表情のまま希望を続ける。
「今より強くなりてぇ。 レベル上限のキャップを外す事は出来ねぇのか?」
その希望に神様は少し顔を曇らせた。
「それはその…、今の力に更に上乗せを希望される、と言う事でしょうか…?」
その言葉を迅は即座に否定する。
「んにゃ、ニュアンスが違うな。 俺は鍛錬しても今のトコ魔法しか伸びねぇんだろ? それじゃ詰まらんからな。 鍛錬した分、まぁレベル上げしたらしたなりの成長は欲しいってだけだ。」
神様はその言葉に一つ嘆息し、安心した様子で思いを告げた。
「それでしたら安心ですね。 てっきり、今の力に大きな力の上乗せを希望されたのかと勘違いしました。 それでは向こうの世界には無い迅さん独自のアビリティ【限界突破】を付与しますね。」
神様はニッコリと柔和な笑顔でアビリティを付与した。
このアビリティが後にとんでも無い騒ぎを起こすとは、この時は二人共知らない。
そしてこのアビリティによって、迅は向こうの世界にて騒ぎの中心に巻き込まれていく未来に繋がってしまうが、それはまた、別の話である。
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