4. 過去と今
まだ暫くプロローグが続きます。
一頻り喜びに身を任せていた神様は、迅の視線に気付き顔を真っ赤にして俯きながら落ち着く。
「す、すみません…。 つい、その…嬉しくて…。 また断られたらと…。」
迅は再び大きく溜息を吐くと、念押しを更にしておく事にした。
「大事な事だからな、もう一回だけ言っとくぞ? 条件次第だ。 此方の条件を飲んで貰わにゃあ流石に断るぞ?」
「そ、それは勿論です! どういったご希望ですか!?」
食い気味に言葉を放つ神様に若干引きつつ、迅は自身の考えつく条件を話す。
「結構あるからな。 覚悟しとけよ。 まず一つ目は俺の愛銃だ。 此れが無きゃ話にならん。」
一つ目の条件を聞き、神様は再び項垂れた。
迅としては外せない条件であったが、神様の動きを見遣り、やはり、といった顔をした。
「…銃の存在しねぇ世界か。 クソ、参ったな。」
癖になってるのであろう、頭をガシガシと搔く仕草で本当に困った顔をしている。
「…仰る通りです。 何でも、と言った上、早々に…申し訳御座いません。」
そう言うと深々と頭を下げた。
「それは後回しにするか…。 よくラノベやらだか何だかである様な、能力みてぇなモンは付与は出来んのか?」
その言葉に神様は意外な反応を見せた。
「出来ます!やります!や、やらせて頂けるんですか!?」
目をカッと見開き、迅の肩を揺すりながら興奮した様子で大声を上げる神様。
ガクンガクンと動くご老公の頭部にハッと気付き、バツの悪そうに肩からソッと手を離すと、真っ赤な顔を両の手で覆った。
「も、申し訳御座いません…。 一度誰かをその…、表現が悪いのですが、調整してみたかったので…。」
「おぅ、悪ぃ表現だぞ。 だがまぁそうだな。 言ってる事ぁ間違いじゃねぇ。 とりあえず
造るに当たって、手始めに俺の現在のステータスってなぁ、どういう具合になってんだ?」
腕を組み神様を見降ろすかの様に言い放ったゲーム好きのご老公的には、やはり自身の今が気になる。
迅の言葉を聞くと、神様が中空に薄透明の板を出現させ、表記してある文字を読み、また驚愕の顔を浮かべる。
「じ、迅さんって…生前は何をされてらしたんですか?」
質問に質問で返ってきた事に不満があるのか、露骨に機嫌の悪そうな顔になる迅。
だが、自身のステータスの由来が気になっているのかと思い、話す事にした。
「若ぇ間はバカみてぇな一兵卒だよ。 来る日も来る日も影に隠れてスコープ覗いてバンッだの、鉄砲抱えてジャングル走り回ったりな。 20幾つか超えてからは国に帰って色々やった後は畑と狩猟、後は水の方の漁もだな。 それで食ってたらあっつー間にチーンだ。 それが何か関係あんのか?」
かなり略して自身のルーツを話すと、神様は納得した様子で言葉を発し始めた。
「迅さん。 まず所謂『レベル』的なモノですが、既に上限いっぱいまで上がりきっています。 それから次の世界で重要になる『アビリティ』ですが、とんでもない事になってるんですが…。」
『とんでもない事』という抽象的な表現に訝しげな顔をし、続きを促す。
「まず持っているアビリティですが、【銃術】【狙撃術】【杖術】【隠密術】【擬態術】【近接格闘術、剛・柔】【気象観測術】【解体術、有機体・無機体】【調理術】【生産術】といった12個です。 す、全て極めきってますので、これ以上の成長は求められません…。」
ほぉ、と驚き目を見開くが、人生の時間を考えるとそれもそうか、と納得する。
「それが俺の現状だな。 よし、んじゃ俺の能力も判った事だし、魔改造を始めるとするか。」
子供の様な笑顔を見せるが、神様は期待と驚きで複雑な笑顔になっていた。
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