1. 空間
初投稿になります。
何度も読み返して校正してますが、表現の不備や誤字脱字等ありましたら教えて頂けますと助かります。
『死』というモノは唐突に訪れる。
齢15の頃より引き金を引き続け、齢90を前にして大往生とも言える生涯に幕を引いた。
引いた、筈だった。
確か最後は末の曾孫の誰だかが手を握り続けてくれて、孫の誰だかが必死に声を掛けてくれてたか?
妻に先立たれた後はコロっと逝くかと思っていたが、存外しぶとかった様だ。
で、今。
目を開き上半身を起こすと、一面真っ白で上か下かも判別が付かない空間に一人、ポツンと寝転んでいたようだった。
「…ん?」
と疑問しか湧かないが、少し思案して一つの答えに行き着く。
「確か…、曾孫とやってた何とかってぇゲームでこんな所に出会したな。 天界だか天国だか神界だかか?」
一族に言わせればこの破天荒な男は、外で遊ぶも屋内で遊ぶも出来る中々見かけない御老公である。
ゲームなんて老眼鏡がありゃお手の物だと言わんばかりだが、実際に自身がゲームの世界に来るとは考えもしなかった故か、途端にその場にしゃがみ込んでブツブツ言い始めた。
「天国ってなぁ生前に良い事した奴が来るんだよなぁ…。 俺が来れる訳無いんだから、此処は天界やら神界ってトコか?」
と自分の中で適当な答えに不時着させようとした直後、ふと声を掛けられた。
「永きに渡る生命の旅を終えた直後だというのに、お呼び立てしてしまい…申し訳御座いません。」
顔を斜め上まで上げると頭に輪っか、背中に6枚の羽根、オマケに神々しく光り輝く女性が其処に浮いていた。
似たフォルムをゲームやらで見た事ある為に特段驚く事も無く無言で相手を見つめたが、その反応に相手が逆に驚き狼狽えた。
「あ、あの…、こういう場で特にリアクションが無いのは…どう反応すれば良いのでしょう…。 い、一応これでも私、神と呼ばれ崇められる存在なのですが…。」
と項垂れる自称神の少女。
下を向いても前に落ちてこない長さの、プラチナブロンドに輝くロングヘアーが靡く事で神々しさは増した。
だが、増したからと言って彼にとってはどうと言う事も無い様子である。
「あぁ、神様な。 俺自身が無神論者だっつっても存在に対して驚きはあるが、曾孫とやってたゲームではよく見かけたからなぁ。 想像で作ったフォルムだったとは言え、今のアンタの感じと雰囲気はそっくりだったわ。」
カラカラと笑いながら男の口から飛び出したその言葉を聞き、更に落ち込む自称神様。
あまりの落ち込み具合のせいか、自身と同じ様な高さにまで落ちてきた為、自然と頭に手が伸びた。
「まぁアレだ。 あんま落ち込むな。 神様っつーくらいだから長生きしてんだろ? 長生きしてりゃ色々あんだろ?」
と言いながら頭を撫でる。
曾孫共と同じ扱いで良かったのか、などと考えてみたが神様とやらは少し満足した様子でフッと目を閉じて感じ入っていた。
「んー…あの…あ、だ、大丈夫です!もう大丈夫です!…けど……、もう少しだけ撫でて頂いても…宜しいですか?」
「あぁ、それは構わんがなぁ。 それで話は進むんか? アンタが俺の前に出て来たって事ぁ、それなりに用事があっての事じゃあねぇのか?」
何の気なしに質問を飛ばしたつもりだったが、その言葉に神様とやらはビクッと一震えする。
撫でられながら、怯えた様子で見上げて言葉を紡ぐ。
「あ、あの、えっと…そうですね。 本題に入りましょうか!」
と、元気良く言うが、撫でるのを止めろとは言われず、そのまま話が続く。
「貴方に重要なお話があって、この場に寄り道して頂きました!」
「…だろうなぁ。」
と、しか言えない。
それ以外に理由があるのであれば、どうでも良い理由という事である訳である。
どうでも良い理由で留め置かれたとなれば、此方としてもそれ相応の対応をしなければならない。
それを理解してかせずか、曰く神様は言葉を続ける。
「悟ってらっしゃる様な感じですね…。」
「こちとら伊達や酔狂で孫や曾孫達とゲームやり続けてたりすんだ。 こんな展開もラノベや『なろう小説』で飽きる程見てきたぜ?」
あまり格好が付かない台詞ではあるが、神様への精神的なダメージは効果的であったらしく、飛べる筈の存在がとうとう両膝を地面に落として落ち込んでいた。
「何か…どう、お話を持って行けば良いのやら…。」
「本題から直球で来い。 変化球から入るのは嫌われるぜ?」
そう答えると、決心したかの様に神様は立ち上がった。
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