到着日はBAD DAY
「後もう少しか…」
東京を出発して何時間か…飛行機に乗り続け、そろそろ足が痛み出してきた頃、機内アナウンスが到着間近と客達に伝えた。
悪魔の都フィエンド・ハビタット。そこは世間に隠れて生きる悪魔達の楽園。かくなる僕も悪魔として、そこへ何年も行きたいと懇願していた。しかしどうやって行くのか?フィエンドはヨーロッパの某所にあると風の便りで知り得ていたがその行き方がわからず、長年悩ませられてきた。
しかし、答えは間近にあった。というか答えは源爺さんが知っていた。うちは母さんも父さんも、僕が悪魔の子だと知って家を飛び出して行ってしまった。そんな俺を、見知らぬ爺さんは拾ってくれて、ここまで育ててくれた。その爺さんが源爺さんだった。源爺さんもどうやら悪魔で、過去に一度フィエンドへと行ったことがあったらしい。しかも爺さんの知り合いがフィエンドにいるそうで、その知り合いの紹介を受け、俺は念願のフィエンドに行く方法ーーヨーロッパ行きの特別便に乗り、今こうして飛行機に乗っているわけだが…全くプランを立てずに来てしまった。流れるように事は捗り、源爺さんに別れを告げて日本から旅立つまでほんの数日しかかからなかった。いざ行くとなると、何もできなくなってしまうものだ。
でもとりあえず、普通に学校通って、生活して、バイトして大人になったらその時その先の事を考えればいい。
ピコんっ
シートベルト着用のランプが点灯した。着陸体制に入るのだな。
俺はシートベルトを付け、フィエンドで何をするかを考えながら、着陸の時を待った…
轟音とともに着陸は始まった。グラグラ揺れる飛行機。まぁ、これが始めての飛行機ってわけじゃないけど、やっぱり少し緊張はする。
数分間飛行機は動きつづけ、静止した。本当に長い空の旅だった。
でも、これから新しい生活が始まる。一悪魔として、フィエンド市民として。日本での窮屈な日々は終わったのだ。これから僕は自由だ。源爺さん、感謝してます。これから僕は一つ、成長を遂げます。これから何があっても源爺さんのことは忘れません。
「機内の皆様、もう一度席に着きなさい、コラ‼」
神のような源爺さんへ感謝の言葉を述べていたのにいきなりアナウンスかよ…ってか、コラってなんだ、コラってよ。
機内は騒然となる。長旅のせいで疲れ果てた僕らにとって、そんなアナウンスを聞くきなどさらさらない。速くベッドの上で寝たいのだから。
「話しを聞けよコラ!野郎共、突撃だゴラ!」
どこのヤクザだよ!ここヨーロッパだよな?まさか本当に来るとはーーって、マジでなんか数人きやがった。
「やっちまえ‼」
あわてふためく乗客達の雑音、その中から何か変な音が聞こえる。
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ…
まるで爆弾の音のようなーーてか、もしかしたらもしかしたらかも知れない。誰かに伝えなきゃ!でももしあいつらが仕掛けてたなら多分、即爆発をさせるはず。悪魔だからわかる。悪知恵なんてだいたい一緒。
どうしたもんかな…こうなればやるしかないか!
「デビラァッッッー‼」
身体に宿りし悪魔の力を解放させる。叫んだからって容姿が変化するわけじゃない。力が増幅するだけだ。少し黒いオーラはでるけれど。
「オラッ!」
機内の窓を突き破り、飛行機の上に乗る。爆弾のとこにいっても、それを何とか出来るとは思えない。ならば残り時間はわかんないが、迅速に奴等を片付け爆弾をかたさせる方が得策だと思う。
窓を突き破った音で、きっと俺がいた方向に奴等はむかっただろう。それから考えるに…
「トウッ!」
飛行機の天井を破壊し、機内に戻る。強引だが気になどしてられない。そしてビンゴの様だ。奴等俺がは元いた場所に向かっている。
「ハーアッッ‼」
ダッシュして奴等と間合いを詰める。そして背後から一人目に蹴りをかまして気絶させる。残りは二人。気づかれたがどうということはない!
「フッ‼」
突き付けられた銃口を振り払い二人の腕を掴み、機内の奥へと吹き飛ばす。
これで勝ちーー
「なんだ貴様‼」
どっかで聞いた声。さっきの声の奴が機内正面からこちらに向かってきた。まるで絵に描いたような悪人ヅラをしている。
「はあっ、やるしかないか」
正直、こっちにきてからも争いに巻き込まれるなんて思ってもみなかった。でも爆弾があるかも知れないし、生きていたい。やるっきゃない。
「ふざけんなよクソが!」
男の手から蜂が飛び出て来る。蜂を使役する悪魔のようだ。まためんどくさい奴だ。きっと根元を潰さないと蜂は無限にわくだろう。もしそうなったら僕はまだしも、力がないと思われる悪魔の乗客方は、蜂に刺されてひどいことになるだろう。
たが、そんなことさせる気はない。
「エンハース二倍!」
更に力を上げる。身体が力を帯びていく。それが身にしみてわかる。さぁ、勝負だ!
「うおっッッ‼」
雄叫びを上げて男に向けて走り出す。それを止めんとばかりに蜂が寄って来る。なめられたもんだ。こんなちっこい虫風情で、俺をとめられない。俺の気に触れてか、蜂は力なく落下し死んでいった。
「嘘だろ…」
「嘘じゃねぇッ‼」
驚きの表情が隠せない男目掛けて拳を放つ。遠慮はしない。
「グアッ!」
決まった。男はそのまま気絶した。うん?そもそも俺がこいつと戦った目的って…あっ!尋問して爆弾を解除させようとしてたんだ。どうしよう…もうこの飛行機はどうなってもいいよね!
「皆さん、助け合いの精神の元、機内から逃げてください!」
これしか解決方法はないだろう。乗客は僕の言うことを聞いてか、一人一人機内から脱出をしていった。
残されたのは俺と…チンピラ野郎共4人。流石においてくわけにはいかない。
右肩に一人、左肩に一人、右手に一人、左手に一人ずつ持つ。こんな時怪力の悪魔で良かったなと思う。
「爆発10秒前…」
不意に機会音が聞こえた。10秒前?機内入り口から出れないじゃん!もう、仕方ないな‼
「おオッッッッ!」
思いっきり壁にぶつかり、宙に身を放り出す。ヤバイ、肩の奴落ちそうーー
ドガーンッッッッッ‼
ばっ、爆発した⁉マジで爆発した。それより無事にじめんに着地しなきゃ。
「痛ッ!」
手もつかずに足だけで着地なんて、絶対痛いにきまっていた。予想したよりひどい痛みに悶絶する。
でも無事にチンピラも救うことが出来た。あれ?なんか瞼が思い。なんでだろうか?でも、閉じるのをこらえる必要はないよね。疲れたし、このままここで寝てしまおう…




