第八話 『誰が殺したかはそこまで重要じゃない』
第五章
『人が殺人を犯したとき、誰が殺したかはそこまで重要ではないと、僕は思う。だってそうだろ? 殺人というのは大抵の場合、なんの理由もなく、ただウッカリ、少しの失敗で起きるんだからね。例えば、転んで膝を擦りむいたのと、そういう殺人は概要としては一緒だ。ただウッカリ。世の中に進んで転びたい人間がいないのと同じように、進んで人を殺したい人間もいないのさ。前にも話したと思うけれど、そう思う人間はすでに人間ではなく、鬼だからね。だからまあ、大抵の場合の殺人というのはドラマのように完全犯罪ではなく、アニメのように劇的でもなく、マンガのように見事なトリックなんてないのさ。ただの普通のウッカリで、人は簡単に死んでしまう。だからこの場合は、殺した人間は本来、罰を受ける資格すらないんじゃないかと私は思う。罰を受けていいのは、自分の意志で人を殺した人間だけだよ。人を殺す覚悟のあった人間だけだ。それ以外は、ただ運が悪かっただけだよね。目の前にある石を回避する方法を知らず、けっつまずいてしまっただけの、そんな人間だ。だから人は、誰が殺したかよりも、まず最初に誰が殺されたかを考えるべきなんだよ。復讐は何も生まないなんて言わないけどさ。でも、思い出してやるべきだ。けっつまずいた先に、偶然命があったその人のことを。ただ運が悪かった人のことを。それぐらいでしか彼らは救われないのだから。あ、ところで愛川君、にんじん切れたかい?』
林間学校の途中だっただろうか。
まだアイツと出会ったばかりの頃だったと思う。
口調もまだボクっ娘しゃべりで、馴れ馴れしく話し掛けてくる奴だと思った。
その上、小難しい話を永遠と繰り返すものだから、さしもの俺も随分アイツから逃げていたものだ。
そういえば、あの時食べたカレーの味はどんなのだったっけ?
美味しくなかったのかもしれないし。
不味くはなかったのかもしれない。
『誰が殺したかはそこまで重要じゃない』
なんて、お前は言ってたけれど。
この場合は例外だろう。
なあ、リーベちゃん(出会った当初はこう読んでいた。水兵リーベ、みたいな。悪口だ)。
お前は一体、誰に殺されたんだ?
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