第十六話 『一体、なんだったんだろうな?』
第七章
『えーっと、これは一体どういうことだい? 愛川』
『いや、だから合鍵』
『それは見れば分かる。で、何のだって?』
『だから、俺の部屋の合鍵だって。もうその質問三回目だぜ、語部? 調子でも悪いのか?』
『いや、むしろその質問は私がしたいくらいだ。どういう考えがあって、私に君の部屋の合鍵を渡すんだい? それは私に君がいないときにも君の部屋に入る権利を与えるということなんだよ、愛川?』
『いやだからそう言ってんじゃねえかよ。その方が便利だろ? 俺も助かるし』
『…………君って奴は――まったく……』
その後、小一時間ほど説教を食らった。
俺、何か悪いことをしたのだろうか?
まあ、語部が怒るのだからきっと悪いことだったんだろう。
『でもさあ、その方がお前も便利だろ? どうせ月二くらいでうち来るんだし。その時に俺がいなかったら悪いだろ?』
『この間、私が外で待っていたのは気にしない約束だろ、愛川? あれは私が好きでやっていたのだから、別にいいんだ。それにね、そもそもそういう問題じゃない。合鍵を渡すということは、それだけ信頼出来る仲じゃないといけないんだ。つまりそれは、君がいないときに私が何をしていても、君が文句を言う資格を失うということなんだからね。君はそれでも良いのかい?』
『別にいいけど?』
『もう少し考えてくれ……』
『ところで聞くけど、語部は俺がいない間に俺の部屋で俺にバレちゃいけないようなことするのか?』
『いや、そんなことは……』
『なら問題ねえじゃん』
『いや、だからそういう問題じゃ……!』
『それにほら、いつかみたいにいきなり倒れた時も安心だしさ。持っといてくれよ。どうせ俺が持ってても無くしちまうし』
『…………そこまで言うなら、仕方ないな』
なんだかんだ言って、語部は合鍵を受け取ってくれた。
その顔は何とも表現しにくい表情になっていたけれど。
口角が上がり、顔がほんのり赤くなる。
ニヤけている、というのが一番近いような気がした。
俺としては本当に他意はなく、『便利だから』そうしただけなのだが。
あとから鬼瞳にそのことを話すと「ありえない」と彼女は若干引き気味にそう言った。
彼女が言うには、俺はお前に依存してたらしいよ、語部。
確かに、あの一年間はお前に頼りっぱなしだったからなあ。
依存。
依存か。
果たして、それは一体何なのだろう。
本当に『便利』だけが理由だったのか。
それとも。
俺の無意識に他意はあったのか。
分からない。
分からない。
分からないけど。
分かろうとはしている。
なあ、語部。
俺にとってお前って……
……一体、なんだったんだろうな?
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