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第1話:無限の目録

数ある作品の中から本作を選んでいただき、誠にありがとうございます。

歴史の英知と異世界の建国が交差する物語、開幕です。

楽しんでいただければ幸いです!

鉄とインクの遺産 〜私と父、そして地球の過去が帝国を築いた方法〜


第1話:無限の目録



挿絵(By みてみん)


中村ルキウスは高校生だった。東京大学の名誉教授である中村大原の独り息子として、期待されるような全科目万能な秀才ではなかったが、歴史に対してだけは異常なまでの情熱を注いでいた。


ある金曜日、父が学校まで彼を迎えに来た。新刊の出版を祝うため、父子は予約困難な高級レストランへと向かっていた。しかし、横断歩道を渡っている最中、ブレーキの壊れたトラックが二人を襲った。衝突の直後、なぜかブレーキが正常に戻ったという運転手の不可解な供述を残し、その事故は解決の糸口のないまま処理された。


ケンジは跳ね起きるように目を覚ました。体にトラックの衝撃が残っているような感覚があった。硬いベッド、大きな窓から差し込む明るい光。だが、部屋の中は推奨される室温よりも遥かに寒かった。事故はただの悪夢で、全ては元通りだと思いたかった。しかし、天井を見上げた瞬間、自分がどこにもいない場所に来たことを悟った。視界に入ったのは太い木製の梁と、どう見ても藁で葺かれた天井だった。


恐ろしくなり、彼はベッドの上に座り周囲を見渡した。そこは不揃いな石壁に囲まれた広い部屋だった。開いた窓からは夕暮れか朝方のような光が差し込み、ベッドの毛布には穴が空いていた。


外の様子を確認しようと立ち上がろうとしたその時、目の前に一枚の画面が展開された。


挿絵(By みてみん)


【ルキウス・アルベルトゥス二世:市民ネクロマンサー レベル1】


MP:13

メインクエスト:ディマス王国を帝国の地位へと引き上げよ。


何が起きているのか理解できぬまま、ルキウスはコンピュータの画面を操作するようにメニューを叩いた。ステータスの項目を開くと、そこには以下の数値があった。


筋力:01

知力:14

敏捷:01

体質:02

運:10


ゲームの知識から、「01」が絶望的な数値であることは理解できたが、「14」がどれほどの価値を持つのかは分からなかった。次に「ライブラリ」という項目をクリックした瞬間、聞き慣れた父の声がはっきりと響いた。


「ルキウス、無事か?」

「父さん……!」

ルキウスは叫びながら周囲を見渡し、声の主を探した。

「ああ、私だ。まだ確信は持てないが、あの事故が我々をこの世界に飛ばしたらしい。お前はこの体に、私はこのシステムの中に閉じ込められているようだ」

「でも、どうしてそんなことに?」

「まだ分からん。だが共に協力して道を探そう。ミッションは明確だ。この王国を帝国に変えることだ」

「でも、こんな体で……」


その時、一人の男が乱暴に部屋へ押し入ってきた。敬意の欠片もない態度で、侵入者は言い放った。

「ルキウス様、王が評議会でお待ちです」

「僕の父さんが……?」

「早くしろ!」


男の怒声に押され、ルキウスは立ち上がった。男が現れた瞬間にシステム画面は消失していた。ベッドの脇にあった擦り切れたリネンのズボンを履き、革のサンダルに足を通した。何が待ち受けているのかは分からなかったが、恐怖よりも好奇心が勝っていた。何より、父が共にいるという事実が、彼の心を支えていた。


重い木製の扉を通り抜ける際、ルキウスはその造りの粗末さに気づいた。木工の知識はなくとも、それがただ二枚の厚板をボルトで固定しただけの、無骨で質の低い仕事であることは見て取れた。廊下も同様だった。石を積み上げ、乾いた泥で固めただけの壁。擦り切れた絨毯の下には、ひび割れたタイルが覗いている。王城でありながら、この国に衰退の影が色濃く差しているのは明白だった。


大広間に足を踏み入れた瞬間、不快な沈黙が流れた。部屋には黒ずんだ木製の大きなテーブルがあり、四人の評議員と、上座にはこの世界の「父」である王が座っていた。王は肥満体で、虚ろな目をしながら手元のジョッキに注がれたビールに執着していた。王の傍らには、ルキウスと同年代の、手入れの行き届いた革の鎧を纏った青年が座っており、その向かいには空席が一つ用意されていた。


「ようやく目が覚めたか」

青年が蔑みの色を隠さぬ声で言った。ルキウスの兄、カイオだった。

ルキウスは無言で席に着いた。王からも周囲からも視線を向けられることはなく、会議は再開された。


「野党どもです。訓練も受けていない卑賤な連中ですが、備蓄していた僅かな小麦を略奪しています」

評議員のアベルが言った。

「根絶やしにする。それだけだ」

カイオはテーブルを叩き、その音にルキウスは肩を震わせた。

「怯えるなよ弟よ。俺たちの敵は野党だ」


ルキウスは動じなかった。この程度の挑発で傷つく自尊心は持ち合わせていない。それよりも王国の問題点を理解し、この世界の仕組みを知ることに集中していた。


「もう一つの問題は水不足です。王都でも配水制限を行っており、多くの農民が土地を捨てています」

内政官の老ボニが説明を続けた。

王はジョッキを傾けながら尋ねた。

「雨は降っているはずだ。なぜ農民は水がないと言うのだ?」

「怠慢だからですよ。畑に水を運ぶ努力すら惜しんでいるのです」

カイオが吐き捨てるように言った。

「まずは野党を片付け、その後に水の問題を叩き潰してやる」

「問題は剣だけでは解決しません」

ボニが遮った。

「山から平地へ水を引く必要があります。水路を築き、農民が逃げ出さずに済むようにしなければ」


苛立ったカイオはルキウスを指差した。

「なら、その市民ネクロマンサーとやらの力で、水桶を運ぶ農民の霊でも呼び出したらどうだ?」


その時、ルキウスの脳内に父の声が響いた。

『私にはこの水問題を解決できる人物に心当たりがある。ルキウス、解決できると言いなさい。ただし、人手が必要だと付け加えるんだ』


「僕が水の問題を解決します」

ルキウスは控えめに、しかしはっきりと言った。

「ただし、人手が必要です」

「どうやってだ? 異世界からコップ一杯の水でも召喚するつもりか?」

カイオが嘲笑した。

「王がお許しになるなら、私の配下を貸しましょう」

ボニが言った。彼はカイオを黙らせたい一心で、ルキウスを信じたわけではなかった。

「だが失敗すれば、責任はお前が負うのだぞ」


王はジョッキを空にすると、重々しく宣告した。

「よかろう。カイオは野党を、ルキウスはどうにかして水の問題を解決せよ。会議は終了だ。あとは静かにさせてくれ」


全員が立ち上がった。カイオは去り際にわざとルキウスにぶつかり、彼を突き飛ばした。アベルが手を貸し、ルキウスを立たせた。

「自分が何を言ったか分かっているのか。水がなければ、この国はすぐに幽霊たちの国になるぞ」

「わかっています」

ルキウスは自分の部屋へと戻った。


一人になると、彼はすぐにシステムを開いた。

「父さん、どうやって解決するんだ? 僕は土木なんて何も知らないし、このステータスじゃシャベル一本持てないよ」

「いくつか分かったことがある」

教授が答えた。

「システムを解析したところ、市民ネクロマンサーは過去の人物の霊のみを召喚できる。今のレベル1では、助言を与えてくれる霊を二十四時間だけ呼び出せるようだ」

「だからみんな、農民を呼べって馬鹿にしてたのか……。でも、霊がどうやって水を引くんだ?」

「可能性は無限だよ。地球の歴史に名を刻んだ専門家や天才たちを呼び出せるんだからね」

「現代のエンジニアを呼べばいいのかな?」

「いや、それは理想的じゃない。周囲を見なさい。ここは地球で言えば中世だ。現代のエンジニアには、最新の道具や技術がなければできることは少ない」

「じゃあ、誰を呼ぶの?」

ルキウスが尋ねると、大原教授はローマ時代の装束を纏った男の画像を提示した。

「彼こそが適任だ。紹介しよう、フロンティヌスだ」


挿絵(By みてみん)

第1話を読んでいただき、誠にありがとうございます。読者の皆さんにこうして読んでいただけることを光栄に思います。


『鉄とインクの遺産』は、私がポルトガル語で執筆しているオリジナルの物語です。私の日本語はまだ未熟なため、翻訳にはAIの助けを借りています。

また、私は絵の才能が全くないので(笑)、イラストもすべてAIで制作しています。


次回からは、フロンティヌスの指揮のもとで動き出すルキウスの物語が始まります。


それでは、またすぐにお会いしましょう!

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