真由
これから新しい生活が始まる。不安だな。やっていけるかな。そう思う。私、高橋真由は新しい高校に馴染めるか不安でいっぱいだった。私が行く夕波高等学校には、知り合いがその高校に行くという情報はなかった。というか聞いたことがなかった。皆からは「真由ならきっと大丈夫だよ!」「すぐに友達できるよ!」「絶対馴染めるよ!」そう励ましてくれる。知った口をきいても私の気持なんか誰にもわからないよ。
入学式が近づいてきた
こわい。馴染めない。不安だ。あぁどうしよう。逃げたい。全部投げ出してしまいたい。そう思いながら眠りにつく。もう朝だ。入学式だ。嫌すぎる。新しい制服に袖を通す。吐き気がする。やっぱり無理かもな。やっぱ完治してないのかも。再発したのかな。もう病院はいや。でも行くしかないか。頑張ろう
夕波高校の門をくぐる。
何もなく卒業できるのかな。
色々考えながら教室に入る。
「え?」
教室に入って第一声がそれだった。目の前にはめっちゃギャルしてるギャルがいる。今の時代じゃ絶滅危惧種だと思ってた。
「あんたもここの教室?まぁそんなんどうでもいいからさ仲良くしようぜ!」
「う、うん」
そんな距離のつめ方とかあるんや。ギャル恐るべし。
えぇと、私の席は、ど真ん中。まじか~、そう思いつつもとりあえず座る。
「横やん!よろ~」
まさかのさっきのギャルが横。。
「うち嶋田まや略してしままや!あんたは?」
「えぇと、高橋真由です。よろしくおねがいします。」
早いって。まだ心の準備ができてないよ。
色々あったけどなんとか一日が終わった。大変だ。ここからなんとかやっていけるのかな。落ち着いたら一回病院行こうかな。
「真由さん。あなたは――です。幸い早期に発見できたので症状は楽なほうです。頑張って治していきましょう。」
また思い出してしまう。少しでも病院に行こう。体がだるいな。そう思っただけでも思い出す。もうあんな日々は嫌だ。もう嫌。やっぱ行かないでおこうか。そう思っていたら朝になっていた。休日か。よかった。平日でこんなんなら学校いけないよ。
「真由ー。今日は病院行くのよ。早く準備してね。」
嘘。嘘でしょ?病院?そんなの聞いてないよ。もう動きたくない。ここから1㎜たりとも―。
「――です。頑張って治し」
「――。」
嫌だ。もう出てこないで。やめてよ。これ以上私を。。
「真由、大丈夫?」お母さんがそう言う。
私は「ほんとに病院なの?」そう聞いた?
「何言ってんのよ。病院なんかじゃないよ。今日、買い物付き合ってくれるんでしょ?」
夢だったのか。それならまだよかった。あんな記憶早く消し去ってしまいたいのに。
私とお母さんは一緒に大型ショッピングモールを訪れた。色々をした。服、アクセサリー、帽子、いっぱい買った。結構楽しかった。こういう日々が毎日続いてくれたらなぁ。そう思っていた次の瞬間いきなりめまいに襲われた。あ、ダメなやつや。
「真由?真由!?」
お母さんの声が次第に遠くなる。視界もだんだん―。
気が付いたら寝ていた。どこだろう。いきなり倒れてしまったな。お母さんに迷惑かけちゃったな。周りを見渡してみる。
お母さんがいない
なんで?さっきまで一緒にっ、
「――です。」「真由さん。落ち着いて聞いてくださいね。あなたは心臓病です。幸い早期に発見できたので症状は楽なほうです。頑張って治していきましょう。」鮮明に繰り出されるあの記憶。何があっても思い出したくはなかったあの記憶。私が今いる場所。
病室だ。
まさか、そんなこと。そう思っていた矢先、ドアが開いた。
「真由さん。目が覚めましたか。もしかしてと思っていられるかもしれませんが。」
「先生、私、また心臓病に。」
「残念ながら、はい。」
やっぱりか。薄々わかっていた。でも、こんなタイミングで、私の新しい生活が始まるっていうのに。神様、また私をいじめるの?私じゃなきゃだめなの?
「真由さん。今日が終わったら退院してもらいます。」
え、なんで。
「落ち着いて聞いてください。私たちも最善を尽くしましたが、真由さんが3年後この世にいられる確率は極めて低いです。すみません。」
「先生、私、本当に生きていられないの?」
話が入ってこない。泣きたい。でも、泣けない。
「本当にすみません!!」
「頭上げてください。もう仕方のないことです。受け入れます。先生ももう休んで。」
「すみませんでした。では、失礼します。。」
あぁ、もうここまできてしまったのか。もう戻れないんだな。どうしようかな。余命が来る前にもう―。
「真由!真由!!ごめんね。ごめんね。。本当にごめんね。。」
お母さんにまで涙させてしまった。もういいのに。私のことなんか放っておいても。
「明日からは真由がしたいことなんでもさせてあげるから!真由。一緒にいようね。」
そう言われた瞬間、涙が止まらなかった。こんなにも私を愛してくれたのに。神様やっぱり酷いよ。私にばっかり。もう、許して、、
4月10日
私は学校を休んだ。
ピッ
スマホの着信音が鳴った。
(まや…?)よく考えたらあのギャルだった。でも、連絡先交換してないのになんでだろう.…
『なんか、学校来てないけどダイジョブそ?』
そう、メッセージが来ていた。私はなんて返そうか。聞くことが多くて困る。
『全然大丈夫だよ!!あんまり気にしないで!!!』
とりあえずそう返した。嘘ついちゃった。私のことなんか忘れちゃえばいいのに。私は長いこと生きていられない。誰がどう願おうとも、私の運命は変わらない。
「余命より先に死んじゃおう」
あれ、私、今なんてこと。今まではそんなこと思わなかったのに。でも、ここまできちゃったら本当にそうしてしまうしかないのかな。私は長く生きられてもあと3年。もしかしたら明日、いつ寿命が終わってしまうかわからない。それなら、死んでしまうタイミングを決めとけば怖くないかも。9月1日なら、私みたいな人がいっぱいいるかも。
その日から私は学校を休んだ。
まやちゃんから連絡が来ても私は言い訳をした。
やりたいことをする。
それでも、人には迷惑をかけない。
学校ではもう夏休みらしい。
私には関係ないけど。
8月31日
私は遺書を書き始めた。
やっとだよ。
『ごめんね、お母さん。今までありがとうね。』
そう言葉を並べた。
これでいいんだ。これで。。