第五話 異世界とは
魔法をモロに喰らったはずだったが盾になるかのように立ち塞がったアライが全て受け止めてくれたようだった。正確にはアライの使いたがっていた魔法が発動したんだろう。放たれた魔法を全て無効化した瞬間には少しばかり驚いていた。
「早くやってよ。獅子舞。」
「そうしたいけどどうやら舞が終わったら効果が出るみたい。それまでじかんかせげるのか?諦めて逃げるか死ぬかどっちかだぞ。」
「でも大丈夫。俺はさっき出た魔法使えるようになったからまかしてよ。」
アライは誇らしげにいうと僕の前に出た。
すると、ヤマタノオロチぽいやつは一つ一つ顔を前に出しながらニヤニヤと僕らを眺めている。
下手に戦うより逃げた方がマシだから逃げよう。こいつ置いて行こう。
戦うより逃げた方が効率がいいし、こいつは僕がいなくても一人で大丈夫そうだしなんとかなるだろ。
後こいつ嫌いだから見捨てよう。そうすれば、滑稽な姿を見れるかもしれないしな。
「アライこの世界でがんばれよ。僕は諦めて元のとこに帰るわ。じゃ!」
そう言いながら帰り道であるところへ転移するための歪を造り出し中へと素早く入って行く。アライの表情を見えるように顔ぐらいの大きさに変えて、顔を覗かせてみると、アライは驚いた表情と絶望が混じったような表情をしていた。
面白いなと思う束の間、アライは僕の方へ近づこうと足を動かしているうちにヤマタノオロチはアライに噛みつきにかかった。物理は効くからめちゃくちゃ痛そうな叫び声が響き渡る。
痛そうな悲鳴とその辺にいる街の人々。人々はありがたいと泣きながら土下座をしている。狂った宗教的なのはなおさら手をださないほうがいいんだよな。
アライとかっぴらいた目があい口パクでがんばれと言って手を振ってみると絶望から何かを悟ったような表情へと変わっていった。
「嫌だ。助けて。死にたくない。元の世界に帰してくれ。」
自分からこの異世界にいたいと言っていたのなんとまあ。
自分勝手とはこのことをいうのかもしれないな。
これだから異世界は理不尽だ。でも、それを舐めてかかった奴らの物語は面白そうでならない。一つの物語は今まさに終わりを迎えそうだけどね。
僕はアライが噛み砕かれながら、この狂った街の人々の表情を見つつ歪を少しずつ閉じていった。真っ白い空間の扉や窓などを避けながら途方に暮れそうなほど長い空間をのんびり歩いてみる。
「今回は少ししかいなかったけど疲れたな。さて次はどこに行こうかなぁ。漫画とか小説で見るタイプのがいいな。ステータスとか見ないといけないのは面倒だし。
でも、今回は学べたか。ステータスで太神楽がバフ技として使えるからなんとかなる場合があるってことだけど。足を早くしてすぐここに逃げ込むっていうのが簡単にできそうだ。
ああ、そうだ忘れてた。」
さっき急いで閉じた歪の近くに行き、紙とハサミを取り出して真剣に切り始めた。先ほどのヤマタノオロチの切り絵を歪の隙間に入れた他と見分けのつきやすいようにした。満足できるくらい上手く切れたので僕は他に切り絵のないところを探しながら歩み出した。
そして、僕は知らない異世界に行くために新たな扉を開けた。




