第二十六話 落ちている?
視界の隅で小さな体がそこにあるはずのない白い空間へと落ちていくのが見えた。つかもうとしたが俺はつかめなかった。だが、ホルンはいそべの体をうまく引っ掛けた。俺よりも速いからすぐに動いてくれたんだろう。ほっと一息する前にいそべを引き上げようとするがホルンといそべをつかんだ瞬間、急に重くなる。ホルンが浮かんでくれているから少なからずいそべはそこまで重くないはずなのに、白い空間に落ちていくごとにまるで重力がかかるみたいに重さが増していく。ホルンが支えてくれてると思ったから油断していた。このままじゃ俺ごと落ちる。
俺たちは何もいえず、真っ逆さまに白い穴へと落ちてしまった。継ぎ目とかがなくて真下を見ても床があるのかもわからない。俺たちは落下死してしまうのか。
「いそべ!」
ホルンに引っかかっているいそべを見てみると気絶しているのかしばらく目覚めそうにない。ホルンは動いてないから多分同じように気絶している?感覚的に落下しているけど終着点が見えないからいつ着くのかなんてわからない。
白い空間へ落ちていく。どこに着くなんて俺にはわからない。
白い空間に落ちていく。
ずっと白い空間に落ちている。
ずっと……
どのくらいたったかわからない。
いつ終わりがくるんだ。
おわりがなかったら、おれはどうすればいいんだ。いそべもホルンもおきない。おれがどうにかしないといけないのに。
てをのばしてもかべにとどく、けはいはない。
ここにはおれたち、いがいだれかがきたようなにおいもけはいも、かんじたことがない。たすけはこないかもしれない。
絶望していると新たな白い空間にたどり着いた。落ちた瞬間はそこまで衝撃は無かった。そこまでどころではなく痛くも痒くも無かった。冷たくてふわふわとした感触があり、何年も考えていた床とは違ったものだった。このまま落ちて死ぬものだと思っていたから安堵を覚える。立ち上がって周りをよく見てみると雪景色が広がっていた。いそべとホルンを抱き抱えていたはずだったのにいつのまにか滑り落ちたようだ。雪景色の中には見えないから歩いて探してみることにした。
「いそべーーー。どこーーー。ホルンーーーー。返事でもなんでもしてくれーーーー。」
さっきまで何にもないとこで落ちていたから鼻が効いているのかもよくわからなくなってしまった。遠くで青い髪の男性がいる。この世界の人かもしれないから近づこうと雪をかき分けて歩いていくと男性の近くにいそべが倒れているのが見えた。
「すみませーーーーーーん。」
大声で叫んでみたが雪が強すぎて聞こえてないのかいそべの体を持ち上げ始めた。すると、男性がいそべの首を持ち、遠目でもわかるくらい危ないことが起きそうなのが見えた。
「初対面でそれはダメだろーーーーーー!!!!」
さっきより大声で叫ぶとこちらに気がついたのか、男性の口がいそべの首に近づくよりも先に俺と目が合った。剣を構えて男性に威嚇の意志を見せると男性がにやけている。俺が男性に剣を振るよりも先にホルンが雪の中から飛び出して男性の腹、一直線に飛んでくる。ホルンが吹っ飛ばしている間にいそべが無事か確認をしてみると何事も無さそうな様子でスヤスヤと寝ている。
「無事か。よかった。ホルンも何もなさそうだな。」
男性が倒れた方を見るとさっきのようにニヤニヤと笑っていた。
「こんばんわ。人狼くん。今夜は月が綺麗だ。そう思わないかい?」
「なんだお前。いそべにしようとしたこと何もなかったようにするな。」
威嚇をしていると雪景色が少しピンク色に染まる。上を見てみると月が見たことのない真っ赤な色に染まっていた。雲が月を見えるようにはけている。月を見ていると何かがザワザワとでてきそうな気がする。月から目を離せなくなった瞬間、俺は、俺の目の中が真っ赤な色で染まった。




