第十六話 告白
俺はエーデル様の騎士となってから決めたんだ。命に変えても守ってみせるって。
お互いの武器がぶつかる音が鳴り響く。俺は獣人の中でも早いほうなのにメイドのこいつも俺と同じ速度で相対できているのがむかつく。わざわざ主人の命令で殺しにくるなんてなんてやつだ。
「あんたはなんでエーデル様を呪ったんだ。呪われるほどの方ではなかったはずだ。あんたの主人にでも命令されたのか?」
「………いえいえ。そのようなことでは決してありません。私の単独の犯行です。ただ憎かったのです。私はナイト家に昔から勤めていた頃から見守ってきたのに新参者の彼女がきたせいであの二人に間に入るのはいつも婚約者という肩書を持ったエーデルサマ。それが私にとって憎くてたまらないことなんです。」
目の奥を見ても何を考えているかわからない。でも、こいつが犯人で間違いないなら倒すしかない。剣を構えて相手の様子を伺う。。全く隙がない。こいつのレイピアでの突き技は早過ぎて見切ることしかできない。時間が長く感じる。俺はこいつに勝つことができるんだろうか。
剣とレイピアを交えてる最中、急に俺たちが出てきた穴からキラキラと光る何かがメイドの首に飛びついてくる。よく見てみるとエーデル様のネックレスだ。なぜここに?
『よーし。時間稼ぎになっているようで何よりだわん公。』
「いそべ!エーデル様は無事か?」
『当然に決まってんだろ。やっと解放されるー。』
エーデル様が無事で良かった。それよりなんでネックレスがこいつの首に巻き付いてるんだ。床に倒れ込んでいるメイドに近づいてみてみると苦しそうに悶えている。
「これもしかしてあの時のエーデル様と同じことになっている?」
『わん公。わかるようになってきたじゃないか。なぜ同じような殺され方をされているのか。それは呪い返しと言って強い思いがある呪いほど呪われていることをバレた時のリスクがでかい。名のとおり呪いを返したんだよ。かけた本人にね。』
「このままだと死んで死ぬぞ。ネックレスが首に食い込んでる。もう許してやった方が…………」
『仕方ないだろ。そいつがしたことはただの殺しじゃない。呪ったんだ。呪いほどリスクが多いものはないのにな。』
普段と変わらない様子でいう。俺はいそべに何か言ってやろうと思っていたがエーデル様の呼んでる声に視線がいく。
『助かったのね。私やっと助かった。ありがとういそべ。あなたがいなかったら私どうなっていたか。』
『気にするこたないさ。お姫様。』
エーデル様が泣いている。あんなに泣いているのをみたことがない。俺はあの人を守ることができたんだ。あっちの部屋の扉が開く音が聞こえると入ってきたのはあっちの俺だった。
『エーデル様どうかされたんですか。おい。お前。エーデル様を泣かせたのか?』
『違うの。やっと終わったのよ……いそべ。少しの間だけ二人っきりにさせてくれない?』
『良いよ。まあ、僕はこのまま元のとこに戻るからじゃーね。』
いそべは扉を閉めるふりをして覗き見るかのように隙間を開けて壁に寄りかかる。俺も聞き耳を立ててみるとエーデル様は鼻をすすりながらあっちの俺に話し始めた。
『ねえ。アルト。私ずっと前から言いたいことがあったの。私あなたのことが好きなの。』