第十一話 状況は最悪?
手を取り僕らはその不思議な空間へと足を踏み入れた。
誰かと一緒に真っ白な空間に行くのは初めてだったからか。少しばかり違和感が感じる。わん公は僕の手を離すと驚いた反応を見せる。
「ここは?俺らはさっきまで城の廊下にいたはず…」
「ここは僕もしっかり説明できるほど知っている場所ではないが強いて言うなら廊下みたいなものだ他の部屋に移動する時に通るだけのただの空間だ。」
白い空間では等間隔に扉や窓などが置かれている。僕らが出てきた場所はそれとは違う穴。穴の中から僕らがさっきまでいた廊下が広がっている。
「お前がお姫様を助けたいと思うならこの話をよ〜くきくんだな。お姫様は何回も死んで過去に戻っての繰り返しをしてるんだ。」
「なにをいってるんだ。お前の言うことを信じれるわけ…」
「この不思議な状況をみてもか?」
「…………」
「一応今から助ける方法がある。わん公。お姫様の死の輪廻をぶっ壊す覚悟があるのなら…」
「エーデル様を助けられるのならなんでもやってやる!俺が死んでもあの人を助ける。」
驚いた表情から覚悟が決まった表情へと変わると腰についてる剣をしっかりと握る。まあ、一人で行くよりかはマシだから連れていっとくか。僕は廊下の映る穴の方を指をさす。時間を遡るタイプは初めましてだから確証はないが穴の中の空間をしっかりとみる。
「よくみるんだな。」
わん公にも穴の中をみるように急かすとみるみる穴の形状と情景が変わっていく。視点は変わらないが四季が過ぎ去っていることだけは見て取れる。
「これはなにが起こってるんだ。時間が過ぎてく?」
「違う。時間が遡ってるんだ。この穴の中だけだけどな。」
遡ってゆく中でピッタリと四季の移り変わりが止まる。どうやらお姫様が死ぬ前の二カ月前にきたようだ。
「遡ったと言うならこのまま俺が入ってエーデル様に事情を説明すれば…」
「たぶんそれは無理だな。時間が遡った先にはこの時間時空のわん公が存在する。今ここにいるわん公と遡ったわん公が同じ世界線に存在するとどちらかが消されるかもしれん。」
「消されるって死ぬってことか?じゃあ、俺はなにをすればいいんだよ。ここに入れなきゃ何にもできないじゃないか。」
「そんなんここから僕に指示すればいいじゃないか。僕からお姫様に説明して僕は怪しいやつをお前と協力して殺す。いい案だとは思わないか?僕お城の中のことよく知らないし。」
「なるほど……ってどこかにいってる時お城の中見てないのか。」
バレたか。まあいい。二度目の二カ月をこいつと協力して怪しい奴を殺してさっさとスマホを取り返さなければ。
「いいか。確認するぞ。僕がいってくる。わん公はここで僕に指示だし。わかったか」
「わかった。でも、この穴、廊下以外見えないのか?」
「それは僕が新しい穴を作る。僕の目を通して見えるようにしといてやるよ。」
わん公に手を振りながらお姫様が一人で廊下を歩いている瞬間を見計らって穴の中に飛び込む。
「さっきぶりじゃないか。お姫様。」