第十話 運命は残酷
ついにこの時が来た。そうお姫様が死ぬ日である。この日になるまで暇だったからあとは待つだけで楽だな。
今の所怪しいやつは見当たらないし僕以上に変な行動をしている奴もいない。多分
部屋ででかいドレスに着替えているお姫様を見てみる。わざわざそんなのに着替えなきゃいけないとは大変なもんだ。お姫様は慣れた手つき化粧や髪を結いている。
「今回こそうまく行くかしら?」
「どうだか。僕は未来を見とうせるわけじゃない。」
「そうね。ワンダーランドしか使えないものね。」
「あー…そうそう。祝いの席だからいいものを見せてあげられるけどせっかくなら見せてやろうか。」
「いいものって何?気になるわ。いそべができるの?」
「まあ、そんなとこ。用意ができたのならわん公のとこに行くぞ。」
お姫様の手を取り僕は扉を開けた。
扉の近くにはわん公がいて普段の服とは違う着飾った感じの服装になっている。
「アルト。どうかしら。」
「エーデル様。……………素敵です。」
沈黙が続いた。普段二人の世界に入るほどうるさい時もあるのに今回ばかりはそんな雰囲気になれないらしい。お姫様は今日殺されるかもしれんからな。そりゃ当然か。
お姫様の後ろに立ちながら長い廊下を歩いていく。お姫様は金の装飾が施されている大きな扉の前まで来ると扉の前にいる2人のメイドに開けるように指示をした。扉が開けられるとそこには着飾った服を着た人々たちが大勢いた。あんな奴いたかと思うような奴ばかりだ。
お姫様は深呼吸をしてその空間へと足を運んだ。僕とわん公はそれに続いて入っていった。階段を降りていき皆がお姫様に注目していた。早速、知らん奴がお姫様に話しかけているみたいだけど、そんなもんは無視をしてしまえばいいのにわざわざ話にのってやってんのは大変そうだな。そんなものを横目に僕はこの空間の真ん中へと移動した。
サボってた分いいもの見せてやりますか。僕は和傘と鞠を取り出してその場で傘回しを見せた。周りの奴らは僕に注目し出した。
周りからは拍手喝采がおきている。お姫様たちは見てるかと思ったが他の扉に入っていったのが見えたので何か他の用があったのだろう。最後まで見ていけよ。まあ、見せるもん見せられて満足したので僕は早々に立ち去ろうとした。だが、誰かが僕の前に立ち塞がった。そいつはたぶん服装からして王子と呼ばれている奴だろう。
「素晴らしいパフォーマンスだった。この城の騎士にこんな芸ができる奴がいるとは思わな…」
「邪魔だ。どけよ。礼ならお姫様に言っとけ。」
僕は面倒だから後ろから何か言われまくっても無視をしてその場から立ち去った。
一応心配だからお姫様がいった扉の方に向かった。扉を開けて長い廊下の先にわん公とお姫様の姿が遠くで見える。なにやら様子がおかしい。お姫様は床に倒れ込んでいて、わん公はそれを眺めている。とりあえず歩いて近寄っていくとお姫様はピクリとも動かないよくよく顔に近づいてみると何かに蝕まれている。
「…………」
「わん公。なにがあった。説明をしろ。」
「……お前が何かしたんだろ!お前が来てからエーデル様はおかしいし急に苦しみ初めて……俺はなにもできなかった。騎士失格だ。守りたかったのに守れなかった。」
わん公の戯言を聞き流しつつ観察を続けてみるとどうやらどの異世界共通ので使える呪いにかかっているらしい。面倒だけど相当恨まれているみたいだからわん公や僕が助ける間もなく死んでしまったようだ。
「もう死んでいるな。」
「そんなこと見ればわかる!クソこんなことなら…」
震えた声が聞こえる。わん公は知らないだけだけど違う世界線では生き返ってまた同じ繰り返しをしているから別にどうってことないだろう。そんなことより重要なのはスマホだ。
「お前が殺したのか?エーデル様を。お前が殺したのか…」
「んなわけないだろ。それより、わん公。主人であるお姫様は死んだんだ。さっさと預かってるもん返せよ。もうできることなんてないんだからな。」
「返さない。敵を…エーデル様を殺したやつを俺が殺すまで絶対に返さない!俺を助けてくれたくれたこの人を殺したやつを殺すまで。この命に変えてそいつを見つけて殺してやる。」
声を荒げて僕を睨みつけている。わん公の殺意が今にでも僕の首に噛み付いてきそうなほどだ。少し悩んでいた案があるがお姫様みたいに何回も繰り返すよりはマシだから提案を試みる。
「いったな。この命に変えてもって。わん公が本当に命に変えてもいいと思っているなら、お姫様を助ける方法がある。ただし、その方法は一度きりしかチャンスがないぞ。」
「助けられるのか?本当に。」
少しばかり面倒ごとが増えるばかりだがことが進まないよりマシだからな。
「わん公。手を出せ。僕と一緒にこい!」