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第九話 忠犬でいたい


俺、アルト・ベンリィは主人の部屋の扉の前で悩んでいた。

主人であるエーデル様の部屋に入っていいのか。もちろん入っていけないのは当然だし、身元も知らない奴と一緒にいる時点で止めるべきだったのも理解をしている。いくら主人にお願いされたからだとしても。


「出てくるまで待った方いいか。にしてもあの子に色々教えておかないと。上手く教えられるだろうか。」


考えること多いばかりに独り言を呟いてしまった。誰もいないからよかった。

それにしてもエーデル様は昔から急なことを言い出す。あの子を城で介抱するだけでなく自身の騎士にしようとするなんて。騎士は俺一人で十分だと思うけど。とやかく言ってる場合じゃないか。2ヶ月後、エーデル様の婚約相手の誕生日がある。その前にやることをやらなくては。俺ができることを。



しばらくするとエーデル様とあの子が出てきた。どうやら着替えも終わらしていたようで、エーデル様はドレス、あの子は俺と同じ騎士の服を着ていた。

少しばかり不服そうなのは見ないフリでもしておこう。

あの子とは裏腹にニコニコで機嫌が良さそうなエーデル様は逃げないようにするためなのか、あの子の腕をがっちりと掴んでいる。


「さあ、行きましょう。まずは食事を食べるために長いテーブルのとこに行きましょう。」

「僕は食べれないのにいく意味あるのか。見せしめなんてひどいなー。お姫様。」

「騎士のお仕事はしてもらわないと、近くで私を守るのが第一の仕事なのよ。いそべには一番頑張ってもらうんだから。」

「タダ働きだ。しかも2ヶ月も。」

「エーデル様のお食事が終わったら俺たちも食えるから安心しろよ。衣食住あるって言ったろ。」

「そっちの話が重要じゃないんだよな。」


不満げな表情をしながらあの子は歩き出した。



エーデル様の食事を終えてようやく俺たちの食事の時間が来た。

その間、エーデル様は勉学に励んでいる。素晴らしい人だ。これ以上学ぶことの方がないに等しいと周りに言われているのにそれでも勉学を怠らない。

そんなこともつゆ知らず隣で口いっぱいにパンを詰め込んだこいつは呑気にパンをおかわりしている。


「そんな口いっぱいにしなくてもパンは逃げたりしないから大丈夫だぞ。」

「ンア。」

「この後エーデル様のところへ行くから早めにな。」


りすみたいになってる…

心許ないなこんな感じでエーデル様を守れるのか。

おかわりのパンも口に入れ終えたのか突如立ち上がりスタスタとどこかに行ってしまう。先にエーデル様のところに向かったんだろう。俺もパンを口に運びながら食堂を後にした。



廊下の途中で誰かに肩を叩かれた。


「あら、アルト。いそべと一緒じゃないの?」


そこにはエーデル様がいた。

てっきりエーデル様のところへ行ったのかと思っていたけどそんなことはなかった。入れ違いの可能性もあるけど。


「入れ違いかもしれません。俺より先に出て行ったので。」

「そう。部屋の話とか色々あったんだけど…見つけたら私に言ってね。いそべに相談事があるの。」

「わかりました。今から探しに行きましょうか?」

「そうね。どこかで合流するかもしれないから大丈夫よ。それより、少し街の方まで散歩に出かけない?」


手を合わせて上目遣いでお願いをしてくる。断れるはずもなく俺とエーデル様は街に行った。



夕方ごろ散歩から帰ってきて城の中を隈なく散策するがどこにもあの子はいなかった。

現れたのはエーデル様が夕飯を食べ終えて部屋に帰る時の廊下にいた。


「今までどこにいたの?いそべ。」

「暇だったから昼寝してた。」

「城のどこで昼寝をしてたんだよ。昼寝長すぎだろ。」

「んー」


あくびをしながら適当な返しを受け取る。やる気がなさそうで一緒にエーデル様を守ることができるのか心配になる。



その心配は的中しこいつは王子の誕生日の日まで全く仕事をしなかった。



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