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第4話 聖女と孤児たちの家

――私達は成り行きで助けた孤児の少年タムの案内で彼らの家……街のはずれにある廃墟に案内された。



「ここがオイラたちの家さ」


「ただの廃墟じゃない? 誰も……」


そう言いかけると、タムと同じくらいの歳の少年と少女が出てきた。よく見るとその後ろに物陰から様子を伺う小さな子供たちが何人も居る。


「わあ!? びっくりしたぁ……」


ユイが物陰の子供たちに驚いて声を上げた。


「おいタム、そいつらはなんだよ? 大人を連れてくるなんて……」


「ガク! ケーナ! この姉ちゃんたちはオイラを助けてくれたんだよ、森の薬草のところが街のならず者たちに取られててさ、捕まりそうになった所を助けてくれたんだ」


「それじゃあ薬草はどうなったの?」


ケーナと呼ばれた少女が訊ねるとタムは気まずそうな顔をした。


「あいつらに見つかって、持って帰れなかった……ごめん」


「くそ……どうすんだ、ミイは熱が下がらないんだぞ……」


ガクと呼ばれた少年は自分の掌に拳を打ちつけて悔しがっている。


「熱を冷ます薬草が無いんじゃ……どうしよう」


タム、ガク、ケーナは肩を落としうな垂れていたので私は状況を把握しようと話しかけた。


「熱がどうのってひょっとして、誰か病気の子がいるの?」


「ミイってチビが熱を出して、もう何日も治らないから薬草を採りに行ったんだけど……そうだ姉ちゃん、治癒魔法使えるんだろ? さっきオイラのケガ治してくれたやつ! 病気も治せないかな?!」


タムはまっすぐに私の目を見て訴えていた。


「すぐに案内して」




――タム達の案内で廃墟「オイラたちの家」の中に入った。そこにはタムよりも小さい子供たちが何人も生活している様子があった、皆孤児だという。


天幕のようにボロボロのカーテンで仕切られた場所に小さな女の子が毛布にくるまって寝ていたけど、とても衛生状態は良いとは言えない。女の子に触れると確かに身体が熱く本人は寒気がするのか毛布の中で震えていた。


「この子がミイね? 確かに、これはあまり良くないね……わかったわ、やってみましょう」


子供たちが周りに集まってじっと見つめている。



(さて、とりあえず原因を調べてる時間が無いから、状態回復と治癒の高位でいいか……)



私はミイの手を握った。


「……健やかなる身体ニュートラライズヘルス……大いなる癒し(ラージヒール)


治癒魔法を唱えると私の手が赤く輝き、女の子は「うう……」と声をあげた。手の輝きが収まると安らかな顔になり呼吸も落ち着いた。


「……レリンお姉ちゃん?」


ミイはうっすら目を開けて私の顔を見てそう言うと目を瞑って寝息を立て始めた。


「レリンお姉ちゃんって――」


私は尋ねる様にタムを見るとその表情は曇っていた。


「あのね、レリン姉ちゃんは――」


ケーナが話そうとするとガクが「おい!」と言って制した。


「あんな……帰ってこないヤツの話なんかするな!」


ガクは怒りの表情を浮かべていた。


「レリン姉ちゃんは、前にここで俺たちの面倒を見てくれてた治癒魔術師(ヒーラー)なんだ……」


タムが話始めるとガクは舌打ちして部屋を出て行ってしまった。ケーナが止めようとしたがタムが「そっとしといてやろうよ」と諭していた。


「レリン姉ちゃんは慈愛の女神(アヴァロ=スヴァラ)聖堂から来たって言ってた。俺たちみたいな親がいない子供を助ける仕事をしているって」



(確かに慈愛の女神(アヴァロ=スヴァラ)聖堂は帝都の大聖堂の他にも各地方にあって、もちろんここにもある。聖堂はそれぞれ奉仕活動を行っている。孤児への施しも活動のひとつだわね)



この領では領主が病弱で健康管理している司祭長が幅を利かせてる、というセッテの事前情報を思い出した。


「で、そのレリンていう人は?」


「俺たちの為に治癒魔法でケガや病気を治してくれたり、簡単な数の数え方とか文字の読み書きとか教えてくれた。自分たちで暮らしていける様に簡単な薬草の調合も教えてくれて、森に生えてる薬草を採ってきて売ったりして自分たちでお金もちょっとだけど稼げるようになったんだ」


「その人すごいですねえ、ちゃんと子供たちだけで生きて行けるように教えてたんですね」


ユイは感心して頷いていた。


「でも、このミイが熱を出して倒れて……レリン姉ちゃんは色々治癒魔法を使ったり薬草を作ったりしてくれたけど、ひと時だけマシになるだけで全然治らなかったんだ……で、姉ちゃんはなんとかしてみるって言って出て行ったきり戻ってこなかった……もう半年だ」


「その間にミイの病気はどんどん悪くなって、なんとか薬草を採ってきて姉ちゃんに教わった薬を作って飲ませてたけどだんだん効きが悪くなってきて……」


ケーナはミイの頭を撫でながら不安そうな顔でそう言った。


「そしたら、薬草の生えてる場所まであんな奴らに……クソ!」


「ガクは一番熱心にレリン姉ちゃん色々教わってたから、多分一番心配して一番怒ってると思う。それでさっき怒って……」


タムは唇を噛みしめてうな垂れている。


「薬草が自生する場所を買い占めなんてひどい奴らですね、許せませんよヴェル様!」


ユイは自分の事の様に怒っている。でも薬草の生えてる場所を正規の手段で買い取っているのだとしたら、それ相応の理由が無い限りなんとも言いようがない。


「この子、ミイの病気に関しては私がさっきかけた治癒魔法でもう大丈夫よ、安静にしていれば元気になるはずだから」


タムとケーナは驚き、表情が明るくなった。


「本当? 今だけじゃなくて?!」


「ええ、治癒というか身体を元の状態に戻す魔法を使ったから。それと熱で奪われた体力を回復させる魔法をね」


「ヴェルさん、凄い……ありがとう!」


ケーナは涙を流して喜んでいる。まだ年端もいかないのに苦労したのね……。



「やっぱりヴェル姉ちゃんも治癒魔術師(ヒーラー)なんだね!」


離れて見ていた孤児たちも近寄ってきて目を輝かせて私を見ている……。


「あはは、まあちょっとかじってるだけよ。もし他にもケガや病気の子がいたら出ていらっしゃい」


私がそういうと、ケーナが促して何人かの子を連れてきた。


「はいはーい、じゃあ順番にならんで」


ユイが子供たちを順番に並ばせてどこにどんな異常があるかを聞き取っていた。子供相手だとユイのような性格が向いているようね。





――ひと通り子供たちを診終え、私は一息ついていた。ユイは子供たちと遊んでいる。



(さて、これからどうしようかしら? とりあえずセッテからの報告を待つしか……)



「ヴェル姉ちゃん、入り口にこんなものがあったぜ」


タムが細いナイフに紙が括りつけられている物を持ってきた。


「ありがとう、これは私宛の手紙だわ」


セッテが情報収集している時にこうして投げナイフに手紙を括りつけて報告を送ってくる。



(ふむふむ、この領の薬草や薬の類には高い税が掛けられていて、さらに高い登録料の要る許可状が無いと取り扱う事が出来ない……ね)



「ヴェル様ぁ、なんて書かれてるんですか?」


「このモンティア領では色々法律が変えられて、薬の類を扱える店が限られているそうよ」


「前はオイラたちが採った薬草を色んな店が買ってくれてたけど、法律がどうのこうのって変わって、道具屋とかはみんな薬草とか扱うの止めちまったんだよ」



(高い税掛けられてさらに高額の許可状がいるんじゃ街の雑貨屋じゃおいそれと取り扱わないわよね……)



「売れないなら自分たちの使う分でもって思って採りに行ったんだけど……」


「それであのならず者たちに絡まれたってわけね?」


タムは悔しそうに頷く。


「みんな薬とか高いしなかなか売ってないから聖女様のところに行くんだ」


「その聖女様は見た事あるの?」


「月に一度、街の大きな聖堂で聖女様がみんなに祝福をくれるの。そこで見られるけど、聖女様の立ってる場所は高いところだし、フードを被ってるからどんな人かは良く見えないわ」


ケーナが他の子どもたちに「ねえ?」と言うと皆「うんうん」と頷いていた。


「そういえば、もうすぐ聖女様のお目見えの日だよな?」


タムがそういうとケーナは指折りしながら「うん、そうね」と答えた。


「それではわたくしも是非聖女様のご尊顔を拝し奉りましょうかね?」


私が満面の笑みでそう答えたらユイの顔が明らかに不安そうな顔をしたのはきっと気のせいよね。

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