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君こそスター 構想編(1/4)

☆本話の作業用BGMは、『新・ラーメン大好き小池さんの唄』(シャ乱Q)でした。『小泉さん』ではありません。藤●不二雄ワールドで頻繁に登場する「あの人」です、念の為。

 この曲は2000年バージョンとのこと(故に「新」)。N●Kのなんたらバトルで歌っていたオリジナルもイイです。映像で観ると、つんくさん(※当時)は魅せるセンスがおありだったんだなと実感します。

 はたけさん、イイですね。いつも楽しそう。

 ちなみに小池さん、正しくは「小池さんの家に居候していた鈴木さん」だそうです。

 で、締めは『上・京・物・語』(同)。

 大好きだったバラエティ番組のエンディング曲。ブレイク前でしたね。

 正直、ビジュアル的には好みではなかったですが、耳に残っちゃったんですよね、「ビョンビョンビョン」てのが……。

 

 拝啓 神幸ちゃん……てのも変だよね。毎日会ってるんだし。

 神幸ちゃんが(たま)に『前略お●くろさん』調で語っているから、真似っ子してみました。

 

 暖かくなってきたよね~(多分)。今日は雲ひとつ無いよ。花粉は凄いことになっているみたいだけど。

 もう少しで桜も開花して、そうそう、来月は花祭り(※灌仏会)だね。

 神幸ちゃんがほぼ毎日連れ出してくれるから、季節の移り変わりもリアルに分かります。

 匂いも味もサッパリだけど、十分楽しいの……ほんと、ありがとう。



☆☆☆



 七ツ――午後四時。


 開店一時間前。偉い偉い、ちゃんと掃き掃除して……。

 メイド服気に入っちゃったの? 最近ソレだね毎日。凄くカワイイぞ♥

 制服姿とスウェットしか覚えがないから、ちょっと感動。

 もっと見せてほしかったよ、「女の子女の子」した格好。


 あ、掃除もう終わり? 結構丸く掃くのね。

 ああほら、埃が……壁に引っ掛かってるあたしの目の前まで漂ってる。こんな所まで飛ぶんだよね。天井に届きそうだもの。

 でも、ここ窓が無いし……あ! 蜘蛛の巣発見。


 おやつなの? 埃が舞う中で? で、またどら焼き。好きだねえ、あたしも大好きだったけど。

 でも、どら焼き食べながらエロ漫画(タブレット?)読むのはどうかと思うよ?

 行儀悪いとかじゃなくてえ、乙女の所作としてさあ。

 ……と言いつつ。一緒に見ちゃったりして。

 まあ! しゅ、しゅごいね……(ゴクリ)。



☆☆☆



 五ツ――午後八時。


 今日もお客さん来たねえ、二人も。

 週に一人、二人だった頃を思うと感慨深いわ。

 それでも確かに、こんな調子じゃ儲けなんて無いでしょうけど、お兄ちゃん(光生)は元々商売の積りはないのよね。ありがたいことだわ。


 あら、またカランて鳴ったわよ? お客さんかしら。三人目? ひょおおお。

 凄いじゃーん、ほらほら、お仕事よ神幸ちゃん。お尻掻いてる場合じゃないのよ?



 紺碧のチャイナドレスに、妙なハーフコートを羽織った長身の女性。

 年齢が――よく分からないけど、多分結構いってるんじゃないかなあ。白髪染めしたような色合いの髪、後ろですっきり一本に編み込んで……。

 何処かでお会いしたことある?


 どのボタンを押すのかしら。いつもこの瞬間は楽しみ。


『小池さーん小池さーん好き好きぃぃぃ~』


 だって。誰の歌だったかしら?

 毎回大変ねえお兄ちゃん。ご苦労様――もとい、お疲れ様です。


 優雅に腰を下ろしたお客さん。

 スリットから覗く生足が艶々。ほんと、年齢が分かんない。

 ああ、どなただったっけ……。


【こんばんは。こんな時間に悪いね】

「とんでもない。ツイてない御苑へようこそ」


 今更だけど、このネーミングはちょっちゅねー。もう慣れたけどー。


 お客さんが懐から扇子を出して扇ぎつつ、油断なく室内を窺ってる。


 ふいにニッコリ微笑んで、


【私はね、普段カップ麺など食べないんだよ。ホントだよ? 食事は家政婦が用意してくれるのでね】


 いきなり言い訳がましいのね。


「左様でございますか」

【先般、夜中に目が覚めて……魔が差したんだね。「カップ焼きそば」なるものを、生まれて初めて――】

「生まれて初めて、ですか。それはまた貴重な」


 扇子で口許を隠しながら、


【ほほほ、そうだね、貴重だった。故に、作り方がよく分からんでね】

「ああ。でも、ほぼお湯入れるだけですから」

【私も噂ではそう承知していたのさ。一応、説明書きはさらっと読んで、かやくの袋開けてお湯を注いで――】

「液体とか粉末スープの袋は――」

【面倒くさいから、全部ブチまけてお湯をイン!】

「え? うん?」

【辛うじてフタは全部剥がさなかった。そこは自分を褒めてあげたい】


 全部入れちゃ駄目よねえ。お湯捨てるのに。


【腕組んで数えたよ、180秒。緊張した】

「数えたのが羊だったら寝ちゃいますね」

【お陰ですっかり目が覚めた】

「でしょうね」

【端にあるアレをペリッと剥がしてお湯を捨てた。ほうじ茶みたいな液体が流れて消えた。とても綺麗だった。シンクはベゴン! て鳴くんだな】

「哀し気に泣きますよね……で、ヘルシーで斬新なカップ焼きそば爆誕、と」


 血圧高めの人にはいいかも。


【麺をほぐしてたら、底から小ちゃい袋が顕現した】

「ふりかけの袋とか?」

【その通り。べろんべろんになってたな。指先がぬめって中々開けられなかったが、根性で道を切り拓いた。破天荒だろう】

「手順がクールでアレですが……やっと実食ですね」

【ああ。もうその時点で、空腹感は何処かへ旅立っていたがな】

「左様で」

【味は――ほんのり塩っけが。でも流石に薄い】

「でしょうね」

【かやくの野菜連中がちよと固くてな。総入れ歯には辛い塩梅であった】

「総入れ歯……」


 こういう時こそポ●デントよねえ。

 やっぱり、どこかでお会いしたような気がするなあ……。


【結局、少し醤油を垂らして食んだ。しかし、お湯で戻すのに「焼きそば」とはどうなんだ?】

「ナンだチミは? と言はれましても」

【ツイてないだろう。こんな感じで良いか?】

「私が判定するわけでは……まあ、ツイてなかった……のかな?」


 運・不運の話じゃないわよねえ。

  

 メインのお話はあっという間に終わっちゃったけど、何気に世間話に興じたりして……なんだか楽しそう。

 神幸ちゃんがこんなお喋りだなんて、✕✕さん知らなかったんだよ。

 もっと沢山お喋りしたかったな……。

 今更だよね。



☆☆☆



 あと少しで五ツ半(午後九時)。


「そろそろ閉店のお時間なのですが」

【おお、そうか。では、迎えを呼ぶとしよう】


 チャイナさんがスマホを取り出し、ススッと滑らかに指を滑らす、と――。


 五分もしないうちにお迎えが。

 紺の作務衣姿……お兄ちゃんじゃないの。


「(あれ? ハゲ?)」

【お疲れちゃーん!】

【早いな光生(みつお)


 軽く息を弾ませるお兄ちゃん。

 チャイナさんの背後に歩み寄ると、徐に両肩を揉みだした。


【よしよし、いい子だ】

「お知り合いですか?」


 お兄ちゃんが揉み手を止めずに、


【この方は「リリィさん」と言って、六区(ろっく)(※1)の興行界では「顔」なんだ】

【昔、ロ●ク座でストリッパーを生業(なりわい)にしていてな】

【当時凄まじい人気で、ファンクラブもあったんだとよ】

【左様、光生の親父はクラブの「副会長」だった。光生のことも小さい頃から存じておる。ああ……()が小さい頃、何度か会っているのだが……覚えておらんだろな】


 あ! リリィさん――知ってる! 

 レジェンドじゃないの……。


「え? ……申し訳ございません、記憶が……」

【だろうな】


 少女のように笑うリリィさんが愛らしい。

 あーなんか思い出してきた……。



 お兄ちゃんに促されて、姿を見せた神幸ちゃん。

 暫し眩しそうに見上げていたリリィさんは、

 

【ふむ、よかった……。ああ、仕様も中々面白かったぞ光生。やはり、「例の話」はこの()に任せたいと思うが――どうかな?】


 お兄ちゃんの揉み手が止まった。

 リリィさんサッと立ち上がり、


【一夜限りではあるが……ステージに立ってくれまいか。この通りだ】


 ゆっくりと長身を折り、深々と頭を垂れ――


「ステージ? えと……ゴッド・ブレス・ユー?」


 落ち着いて神幸ちゃん。

 それはそれで可愛いけど……なんか違くね?



 神幸ちゃんがステージ……まさかストリップじゃないよね。

 頑張れ――は嫌いだったっけ。めんごめんご。

 でも××さんは、いつも勝手に応援してるゾ♥ 

※1 浅草六区。嘗ての興行街。現在も「浅草ロック座」や映画館、寄席・演芸ホール、「花やしき」やウインズなど

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