表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/148

「アレよアレ!」 喉ち●こまで 出てるのに! (とある主婦の一句)

☆本話の作業用BGM、スタートは『「フラッシュ」のテーマ』(クイーン)でした。

 映画『フラッシュ・ゴードン』の主題歌であります。

 自分(のイメージでは)、クイーン=「フラッシュ」になってしまいます。

 PVのラストで、フレディさんのお茶目な姿がちょこっと♥

 歌詞がよう分からんので、「フラッシュ!」しかハモれません。


 で、締めは唐突に『アイ・ライク・ショパン』(ガゼボ)でした。

 やはり歌詞がよう分からんので、大概、ラストの「……マイウェイ」しかハモれません。

★★★



 とうとう師走も半ばです、お母さま。

 今まさに、年賀状の「宛名書き」で使役されております(ハゲに)。

 まあ季節モノですから。

 宛名だけは手書きに拘る兄様のせいで……それは素晴らしい……ような気もいたしますので、文句を漏らさずシコ●コ(※禁句)筆ペンを走らせております。

 今年は「小筆」を免除していただいたのです(ほっ)。


 暇を持て余している綾女も動員されております。

 ただ、彼女、そんなに「字が綺麗」なワケでもないのです。なんだか丸っこい字を(あらわ)します。

 偉いもので、兄様はそれについては文句を言いません。

 綺麗云々より、「丁寧であること」が大事なのだとか。

 綾女は、電マでもあてたような小刻みに波打つ丸っこい字を、額に嫌な汗を掻きながら一所懸命……。

 淡い桃色に染まるその顔を見やり、私はなんとなく「ほっこり」してしまうのです。



☆☆☆



 街全体が年末年始のお休みに入ったような塩梅です。

 交通量も人通りもぐっと減り、歩行者や自転車が、そこかしこで堂々と信号無視を繰り返しております。

 この辺も無法地帯でございます。



【いつもより町が静かで、なんか余計薄ら寒い感じするよね】


 久し振りに来店した茂森(仮)さんが、両腕を擦りながら零しました。


「枯れた寒さ、て感じですよね」


 相槌を打つ私の声は、茂森(仮)さんが選択した『アトランティスから来●男』の主人公です。※1

 結局、池田(秀一)さんの声になるわけで。

 余程お好きなのでしょうねえ。


【パート仲間とお茶した帰りさ】

「お疲れ様でございます」

【最近さあ、皆で集まると「クイズ大会」みたいになっちゃって】

「クイズ大会ですか」


 何か思い出したように、腕組みして難しい顔になりました。


【ちょっとした事がすぐ出て来ないんだよ。ド忘れっていうのか。パート仲間は大概あたしより年上でさ、「そんなのアルアルでしょ」って言うんだけど】

「茂森(仮)さん、まだ二十代半ばですよね」

【そう! そこはハッキリさせとくよ。けど……出て来ねンだあ】


 ぽっと溜息をつきながら、橙色の蓋をしたミニペットボトルをキリキリ開けると、


【ダンナがさ、「そりゃ、『デジタル記憶喪失』だよきっと」って言うわけ】

「デジタル記憶喪失?」

【別名『デジタル性健忘症』なんだと。ひどくね?!】

「ち、ちょっとお待ちください。すぐ検索いたしますので」

【それそれ! その「すぐ検索」がよくないんだって!】



 ――デジタル性健忘症。

 現代は便利なもので、ちょっとした事でも「すぐ検索」する癖がついて、脳が自分で覚えようとしない現象——なんですと。

 エネルギー消費を節約しようと、脳が横着(?)しているのでは、とも考えられているそうです。

「横着は負け」(敵)ということですかね。


【——だ・か・ら。パート仲間が集まると、すぐ「アレなんだっけ?」とか「それ何ていうんだっけ?」ってカミングアウト大会(?)になっちまうんだよ】


 ひとしきり皆で頭をめぐらせるらしいです。


【さっきもさあ――あっ、思い出した! 第一問! キエェェェーイッ!】

「え?」

【あなた割と古い事良く知ってるじゃん】

「まあ、そうですね」

【Jリーグ草創期、鹿●の助っ人選手で、大人気になったブラジル人の名はなんでしょう!】

「……アル●ンド?」


 茂森(仮)さん、「最後列の席から黒板を睨み付ける目が悪い生徒」のようなお顔になりました。

 殺し屋か?


【…………………………正解】

「なぜ。そんな。テンション?」

【第二問!】

「さあ~()え~ッ」


 野球部のノリで受けて立ちましょう。


【くっ……天気予報でさ、台風が近づいた時よく耳にする言葉で、気圧の単位『ミリバール』って昔あったじゃん?】

「……………………………………ええ」

【あれ、今は何と言うでしょーか!】

「逆、逆ですよ茂森(仮)さん。普通は「ミリバール」をクイズにするでしょう?」

【?】

「ヘクトパスカルは皆知ってますよ。「ミリバール」はちょっと出て来ないです、私も」

【…………】


 静止画像になる彼女。

 瞬きもありません。


 やがて、表通りにゆっくり顔を向けると、遠い目で何処かをぼんやり眺め出します。

 ここ、窓は無いのですが。



「終わりですか、クイズ」

【第三問……】

「無理しなくていいですよ?」

【昔、『花●ゆめ』って少女漫画雑誌で連載してた大好きな漫画があってさ……】

「……忘れちゃったんですか、大好きだったのに」

【…………】

「ごめんなさい。続きを」

【……タイトル……どう?】

「どう? ってアンタ。雑にブン投げないでください。何のヒントも無しじゃ分かりませんよ」


 ぼんやり天井を見上げると、


【すごい線が綺麗でさ。Gペンって、あたしらじゃサラッとした線が中々引けないもんなのよ】

「でしょうね」

【その人の線はとっても滑らかで】

「ヒントにならんですばい」

【主人公は自分が異星人になった夢をよく見るんだけど、それは夢じゃなくて、自分の「前世」の記憶だったわけ――】


 あ、なんか分かった気がする。


「ズバリ! 『ぼくの地球●守って』ですねッ! 通称『ぼく地球(たま)』!」※2


【……ほんと、ナンデそんな古い漫画知ってるんだよお……】


 顔をくしゃくしゃにした茂森(仮)さんは、小さく震える声で呟いたのでした。



☆☆☆



【あんたは健忘症とは無縁かもね】

「偶々ですよ、そんな」

【ふうん……よく言うぜ】

「ちょい忘れした事を必死に思い出そうとすることは、脳にとって大層な栄養になるそうです。自称・脳科学者のナントカってヤツが言ってました」

【それじゃ誰か分からん】

「その『ナントカさん』が思い出せないんですよねえ……」


 同時にゲラゲラ笑ってしまいました。

 まあいいかな、思い出さんでも。




「ゴッド・ブレス・ユ―。よいお年を、茂森(仮)さん」

【おう。よいお年を! また来るよ!】



 元気良く片手を振りながら、笑みを浮かべて日の暮れた外界へと消えて行ったのでございます。



☆☆☆



 もうすぐ年が明けます。

 綾女の成人式どうしましょう、お母さま。


 そうそう、これはオフレコですが。

 兄様。自身の成人式は不参加だったそうです。

 上野あたりのテレ●ラに籠っていたのですって。ふふふ。


---------------------------------------------------------------------------------------


※1 『アトランティスから来た男』。

 某国営放送の海外ドラマ。アトランティス最後の生き残りである超人の主人公が、バサロみたいなフォームで泳ぎますよ! 手と足に水掻きあり。


※2『ぼくの地球を守って』(日渡早紀 白泉社刊)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ