~黎明の息吹き?
★本話の作業用BGM……
『ワイワイワールド』(水森亜土・こおろぎ73’)です……。
鳥山明氏に合掌(水森さんはご存命のハズ)。
アニメ『Dr. スランプ』のOPであります。
ピーピピッピプペポ……(涙)
続いて、
『CHA-LA HEAD-CHA-LA』(影山 ヒロノブ)。
言わずと知れた、アニメ『ドラゴンボールZ』のOPでございます。
影山さん、私の中では『レイジー』のVOなんです。永遠に……。
ミ●シェルぅーーー! 赤頭巾ちゃん……
〆めは、
『おどるポンポコリン』(B.B.クィーンズ)。
再登場です……。
都民がサクラの開花にやきもきする、ある日のお昼どき。
TVをボンヤリ眺めつつ、綾女がぽそり呟きました。
「神幸ちゃんさあ、支部長に会ったことあんの?」
「支部長?」
「『旧会』の」
ミケさんのことかな?
まるで、自分は会ったことない風に……ああ、まだ正体を明かしてないのですね。
綾女には未だ、擬態で接している、と。
「あるのかな?……あるのかも……それ、どなたが仰ってました? 主水?(あ。呼び捨て)」
綾女は、強烈なニンニク臭の香るカップ麺をずずと啜ると、
「いんにゃ。主水さんは、あれで中々×××が固くてさ」
「『口』ね」
「肝心なコトは教えてくれないんよ。二言目には『守秘義務』って」
ふわっふわした「お兄様」のイメージ……嘗て「思い浮かべたコトがまんま漏れてしまう」と自戒していた記憶がございますが。
ちよと成長されたのでしょうか(上から)。
「美冬さん情報さ」
「へ?」
「あの人、割りとチョロ・インなんだよね」
「意外……」
「『あれ? また胸、大っきくなりました?』とか、『~って主水さんが褒めてましたよ!』なんて言っとけばガードがズレるから、その隙間に拳を縦に滑り込ませて――」※
「燕返し叩き込んでやりましたぜ!」ばり、得意気にデコを照らす綾女を眺めつつ、美冬さんの身を(少し)案じてしまいました。
と同時、綾女のしたたかさに内心瞠目です。
……どこまで、かの「秘密結社」について情報を得ているのでしょう。
綾女はカップ麺をそっとテーブルに置くと、ふぅーっと長い息を吐きました。
ニンニク臭っ。
鼻を摘まんであさってを向いた私に、
「……あのさ」
「はい?」
横目でちらと見やると。
綾女は、もやっとした視線を虚空へ投げ放して、
「御苑の上(の階)って……空いてんのかな」
誰に、という風でもなく……独り言のように呟きました。
……僅かな沈黙に耐えかねた私は、思わず――
「アンアン!」
「え……チワワ?」
残念、チベットスナギツネです(大嘘)――脳内で囁き、先を促すべく、我が邪眼で訴えたのですよ、お母さま……。
☆☆
その日の夕刻――。
主水さんが、ミケさんを背負って御苑にやって来ました。トメさんの姿はありません。
噂の支部長、本日は「素」のようです。
猫耳付きニット帽に、半袖・短パン……イエローで統一されております。
「ミケハ●ス」……でしょうか(確かそんなブランドがあったような)。
少しだけクルんとはみ出た金色の前髪、不覚にも「可愛い」と思ってしまいました。
なんでか、いつもお負われているイメージ……張り切って歩いている姿を見た記憶がございません。
足がお悪いのかな(高齢で)……要・グルコサミンとコンドロイチンかも。
二人仲良くソファに腰を下ろすと、幼女に肘で小突かれた主水氏が500円硬貨を受け取り、じっと名残惜しそうに見詰めます。穴が空いて別の硬貨になりそう。
ミケさんは身を乗り出してボタン群を眺め回すと、主水氏の耳にぶふっと息を吹き掛けました。
身震いした主水氏が青ざめた顔で硬貨を投入すると、ミケさんすかさずボタンを押下。
→『実に面白い』
(ああ、ガリクソン?)
(ガリ●オじゃ)
テレパシー? で突っ込まないでくださいますか?
あらためて、店内マイクをオンにするや否や、
【無沙汰じゃの】
【……こんちは】
軽く笑む幼女と、テンション低い従者。
「その節はどうも。お忍びですか」
【トメは体調がの】
ニコ顔に深刻な影はありません。
「まあ」
【春先はやたら眠くなるようだの】
「ははあ」
【春は「死のイメージ」だそうな】
隣の従者は、げんなりしたままです。
大方、タクシー代わりに呼び出されたのでしょう。
【トメのヤツ……ワシの後を継ぐのはイヤだと言い出してな。今からでも子を成せとうるさい】
「支部長の?」
【左様。相手もおらぬのに】
主水さんが、パーカーの毛玉を取り始めました。
まるで内職のよう。
無駄に真剣な指先。
「トメさん、恋バナがしたいだけだったり」
【三次元に興味はないのう】
「二次元で興味のある方は?」
【はあ?】
口元をモゴモゴさせつつ、短い腕を組んで中空に目を向けます。
【そうさのう……最近は……『あくまで僕の推測ですが――』ちゅうのが口癖のキャラにきゅんとなるのう】
微かに頬を染める幼女。
ゲームかアニメのアレでしょうか。
「支部長は出産のご経験が?」
【いや?】
「……と、いうことは、ひょっとして……」
途端、
【うふふふふ……アッハハハハハ! プークスクス】
「今日の一句?」
【む。今日のワ●コ?】
「季語は置き去りですか」
【いや川柳……でもないんだが……】
顔を赤らめて身を捩る幼女の図。
これはアカン。
無駄にカワイイ。
【ま、まあ、あと数年もすれば、「半妖Xの献身」もこの世から失くなるやもしれぬしー】
「研究は順調ですか」
【じゃの。さすれば4区の結界も撤収して、旧会も新会の傘下に……支部長は各区、普通の人間でもよろし】
従者の、毛玉を取る手が止まります。
「秘密結社も解散ですか」
【秘密結社じゃないが。……そうさな、主水。お前やるか?】
【プギャー(棒)】
【すりゃどういう意味じゃ?】
「『お兄様』がボスー?」
ひとしきり、楽屋落ちコントが繰り広げられました。
時折、主水さんが能面になります。
「支部長を引退されるとして、『元支部長』はその後、どうされるお積もりで?」
死ーん。
主水さんが無言でミケさんを窺います。
【うーん……いち「会員」でもよいが。考えた事もなかったのぅ】
「いち『行政書士』に?」
【退屈なのもしんどいからな】
幼女の隣から、小さなため息が聞こえました。
「新しく所員を加えたり、とか」
【む? 増員?】
両手を組むと、やや前のめりになります。
【ほう……なるほど】
「当の本人、覚悟を決めつつあるようで」
【うむ。左様か……】
(――最後の弟子……これは必然やもしれぬな)
ポツリ漏れた呟きに、隣に座る青年がびくりと揺れました。
やがてミケさん、パッと破顔するや、
【ウチのメイドは、小っちゃくて可愛い女子が好きでな】
「お噂はかねがね」
【……眠気も吹き飛ぶであろうよ】
愉快そうに、クスクス笑って見せたのでございます。
☆☆☆
ミケさんが小さなお手てで硬貨を投入すると、主水さんが居住まいを正しました。
徐に口を開くと、
【妻の性欲がオニ強くて難儀している件――】
「ストライーッッ!」
脇で楚々と茶を啜っていたミケさんが、ぶっと吹きました。
「ド直球ですね。ノーラン・ラ●アンもびっくりです」
【黒田のバック・ドアかも】
【真●中のドアでもトム・ク●ンシーでも構わんが、ここで語ってよいアレか?】
「ほんとほんと」
【……役所で用達してると、無言で――《×××で25時に♥》なんてメモ握らせてきたり】
【不倫中の同僚かえ】
【ドラッグストアいたら、《××××を2ダース。シクヨロ》ってメール来たり……】
「え。避妊してはるの?」
【……】
【なぜ黙るのじゃ】
……お母さま、急に眠くなってまいりましたよ。
「もう・ゴッド・ブレス・ユーで」
【お? 知ってるぞ。ぶぶ漬けどうどす? ってアレだろ?】
「よくご存じで(?)」
【延び延びの新婚旅行、京都にしようかと思ってリサーチしてるからな】
【ほう。すりゃ初耳じゃ】
「なるほっど・ブレス・ユー」
【なんて?】
「ですから。早くお帰りくだちぃ」
【ちょ?! なんだよもおおお!】
【もう終わりかえ……ワシの500円返せ、主水】
いつもの「お兄様」のようです。
またのお越しを。
※ 『燕返し』
ボクシング漫画『はじめの一歩』に登場する、真田一機のサンデーパンチ。
一発目のアッパーをガードさせ、その衝撃でほんの少しガードに隙間を空ける。そこに(拳を)縦にしたアッパーを繰り出し、ガードをすり抜け命中させる、という凝った技。