ぼくたちは成功\(^_^)/
★本話の作業用BGMは、『Young Bloods』(佐野元春)でした。
静かな冬のブル●スに眠る……ほーん。
もっと売れて、ザ●ベ●トテンで見たかった(観た記憶が無い)。
まあ、TVには出なかったかもですが。
「国際青少年」年(年がクドイですけど)のテーマソング。
PVの舞台は代々木公園だそうです(※by ニコ動)。
イイ感じでーす。
〆めは『走れ正直者』(西城秀樹)。
ハムジャナイ……。
南岸低気圧の影響で、未明からお見事な雨が降り続いております。
都心でも積雪の恐れがあったりなかったり、とか。
所詮、TVの天気予報です。
そ●じろーもツッコみませんし。一言も喋りませんし。
し●じろーの方が、ビジュアルもエンタメ性も優秀だと思うのですが。
おまけに喋るし。
どう思います、お母さま。
☆☆
雨が上がり、町中に寒気が置き去りにされております。
ぷりぷりしながらリモコンを掴み、室温を数度弄って心中が落ち着くのを待ってみます。
ついでに脈拍も測ってみたり。
……20秒で26回。さて、1分で幾つになるでしょう…………か。
寒さ故か恐れからか(←正解が導けないという)、右手が動きません。
こんな歯痒い心持ちになるなら、初めから1分で測るべきでした。
悶々とするなか来店されたのは、文字通りピチピチ(死語?)の若い女性でした。
臙脂色のジャージを羽織り、限界まで上げられたファスナーが顎先をそっと隠しております。
お胸の辺りが窮屈そうに腫れ上がってらっしゃる。
なんぞ、重い(物理)病でも患って……慢性爆乳症?
下も同色の短パン。
黒タイツかレギンスか知りませんが、時折キラつくおみ足は、起伏に富んだ美しい曲線を描いて――艶かしさが淡い熱を伴って匂い立つようです。
真っ白なスニーカーが、そこだけしくじったように清楚な光を弱く放っております。
ド忘れいたしましたが、リアルなんとか――なんてファジーなフレーズが浮かびます。
知らぬまにつと流れた鼻血をもそもそ拭っていると、女性が椅子に腰を下ろしました。
ジャージのポケットに両手を忍ばせ、ボタン群を覗くと、鮮やかな短めの金髪がサララと流れました。
押下したボタンは、『走る疾る俺たソ』。
また誤植でしょうか。
一応仕事なのですから、少しはプロ意識を――。
【こんにちは】
「赤貧のツイてない御苑へようこそ。お寒くないですか」
【はい。暖かいです。27.5度くらいですね】
それこそ走ってらしたのでしょうか。
「このボタンは、ひょっとして中●くん?」
【多分、●野くんです】
珍しくも正解。
「たい●きやいた……」
【その人です】
ふと思い付いて引き出しを開けてみましたが、サングラスは見当たりませんでした。
☆
袖から指だけ覗かせ、その白い両手指で口元を覆うと、目を瞑ってハァ♥とやってみせます。
あざとい……あったかいって仰ってましたのに。
またポタリと鼻の血が滴りました。んむぅ。
今日は無事におうち帰れるでしょうか。
【高三男子の家庭教師をしてまして】
「字面だけで噎せそうです。というと、大学生ですか?」
【ええ。JDです】
『J』はいらん。見りゃ分かる。
【じゃDで】
「あ、聞こえました? でも『D』だけじゃ」
【あおがくです】
「ああ、駅伝で有名な」
【え。駅伝のどこ?】
「どこ? といはれましても」
【青山様学園大学です。私立の女子大】
「申し訳ございません。全っっっ然耳にしたことが……」
【八丁堀の青山様が名誉理事長で――】※1
失礼ながら、在籍する大学やビジュアルからすると……よくぞ家庭教師として請われたものじゃ――新入りの脳内評議員(自称・仙人)が呟きました。
激しく同意です。
【彼の学力からして、志望校は少し難儀な感じなんだねぃ】
「江戸弁?」
【あ、ごめんなさい。青山様に心酔している生徒は、時折江戸弁が】
「……そうですかぃ……」
落胆した下っ引き(岡っ引きでも可)みたいになってしまいました。
【やがて彼が――「合格したらご褒美をください」って言い出して……】
「言っちゃったか」
【言ったんだねぃ】
「…………で?」
【あたしに出来ることならいいぜぃ、って】
「言っちゃったか」
【言ったんだねぃ】
そろそろ本試験だそうです。
なかなかご褒美について口を割らなかったそうですが、ついに。
【「ぼ、ぼくが(受験に)せ、成功したら」】
「性●(聞き間違いか)?」
【…………】
「あれれ? だぜぃ」
【正解はCMのあとに言うもんだぜぃ】
「………………マジですかぃ?」
漫画のようなお話、あるのですね、現実に。
【安請け合いを……ちよと後悔してる……ぜぃ】
気のせいか火照ったお顔。
鼻から下を、やはり指先だけで覆ってらっしゃいます。
「彼にはアレですが、お断りされては?」
【…………】
「断んなぃ、姐さん」
あーあれですか。
「順番が違うだろ? ってことですかぃ、旦那」
記念でイタすことでもないとは思います、毛ど。
【……単純に、青臭い男子高生の、肉欲への渇望「ダケ」が言わせたモノなのか、それとも……あたしを好きになったから付き合いたい、って気持ちから出たモノなのか……ふ、複雑な心持ちになっちゃって】
イソギンチャクの如く、指先が賑やかに踊ります。
「お付き合いされたご経験は?」
【……いえ。恋人いない歴21年……】
ほう……このビジュアルで。
いや。そこじゃないか。
「大人の恋愛は、『付き合おうぜぃ』から始まらないと言いますが」
【う、嘘でぃ!】
「そう言われるとねぃ……」
何れにしろ、処●にはキツいお話でございます。
「身体の相性は\(^_^)/だね→付き合おうか! もアリかなあ、とは個人的に思ったり思わなかったり。まあ、受け売りですが」
【…………】
JDは下を向いたままです。
頭頂部から儚げに煙が漂い……。
故障かもしれません。
JDが。
故障。
じっと見詰めていると、時折、微かに、二の腕や太股をモジモジ擦り合わせます。
あ、摩擦熱?
私もまた一滴、血を溢してしまいました。
堪えて。私。
彼女が小さく、熱を持った吐息を洩らしました。
――堕ちた…………か?
すりゃイカンですばい。
「妄想捗る中、甚だ恐縮ではございますが……熱いモノを全部吐き出して、冷静になってください。勢いでノっちゃうのはよろしくないと思います」
赤い顔のJDが、ぼんやり視線を寄越します。
【でも、約束……】
「元々、公序良俗に反する契約です。取り消しましょう」
【……】
JDが目を潤ませつつ、数度、深呼吸を繰り返しました。
「貴女が衷心から欲しているなら吝かではありませんが」
【欲してません! そんな、まだ早いもん……】
ん? 成人……?
「では、常識的な範疇にハードルを下げていただいて――」
【「じゃあ、お●ぱい揉ませて」って言われたら!】
食い気味。ふう。
【お●ぱい揉ませてって言われたらっ?!】
「落ち着いて&泣かな~いでぇえ~↗(by 舘ひ●し)。肉欲絡みは却下しましょうか」※2
この人、ご自身が発しているモノを解ってらっしゃらないようですね。
そこがこの問題のややこしさ(?)のようにも思うのですが。
かの高校生。
血を吐く思いで我慢しているのかしら。
願わくは――
『じゃあ、合格したらボクと付き合って』
彼女が一番欲している(may be)言葉を、彼が口にせんことを。
順に進んだ方がこの人の為……のような気がいたします。
「顛末を是非、お教えくだされぃ(後学の為に)。ゴッド・ブレス・ユー」
白桃のようなお顔……少しだけ熱も引いたようで。
愛らしい紅い唇には、キリッと力が宿って見えます。
お陰様でようやく、私の鼻血も止まりました。
折角止まったところでナンですが。
もし――近い将来、同じような状況で、爽太くんにこんなアレをねだられたら私も……。
はい~喜んで! って言っちゃいそうな気もいたしますね。
……心配ご無用です、お母さま。
爽太くんは、こんなこと口にいたしませんよ。
※1 『八丁堀の七人』第7シリーズまで制作されたテレビ朝日系の時代劇。
主人公の上司が、与力の青山様(村上弘明さん♥)。江戸弁が渋い。
※2 『泣かないで』(1984年)。同名曲が多いらしいですが、ここでは舘さんのお歌をイメージしております。