それ行け! プリンセス
☆本年一発目(※2024年1月執筆)の作業用BGMは、
『おどるポンポコリン』(B.B.クイーンズ)でございます。
言わずと知れた(ので、説明は割愛)。
年末から毎日聴いてました。
〆めは、『人にやさしく』(THE BLUE HEARTS)。
……きーがーく(ドレミ●ァドン風)
祝日と重なった月曜。勿論出勤ですよ、お母さま。
何気に土日とお正月しかお休みがないワケです。年末もびっちり営業してましたし。
「労働よこんにちは」のHPによると、御苑は無糖の可能性がございます。
年間休日115日未満だと、かの定義に引っ掛かるようで。
まあ、実働4時間程度なのであまり文句も言えませんが。
――そんな祝日の夕方。
マジックミラー越しに楚々と座るのは、華やかな振袖姿の若い女性です。
ハタチ前後なのは間違いございません。
引き戸の外では、エージェントス●スみたいなスーツ姿の男性がひとり、微動もせずに仁王立ちしてらっしゃいます。
☆☆
少女漫画の背景もかくや、て感じの花を引き連れ来店したお嬢さん。
艶やかな黒髪を結い上げ、小さ目のペロペロキャンディみたいな簪をブスりと挿し込み。
スッキリとした細い眉(ここ重要)でニッコリ微笑む丸顔が眩しい。
黒目がちの大きな瞳が瞬く様を眺めていると、心中がザパーンと洗われるよな心持ちになります。
プリンセス――姫でもいいですけど。
恐らく同年代の綾女(庶民)とは別格の空気を纏ってらっしゃる。
ランボーの詩集を常に携行し、「り●ん」より「ぶ●け」(廃刊)を愛読するような。
可愛らしい見た目でも、しっとりとした落ち着きを感じさせる、そんな――そんな~夢を見~ました?(by 百恵ちゃん)※
説明書きをじっくりとご覧になった姫は、袖を押さえつつ、
『メ●ちゃんの黒い羊は良い羊』
という、テ●ラで拵えたシールが雑に貼られたボタンを押下します。
ふと。
自分の装い(冬用のメイド服)を眺め、
(……誤植?)
然もない危惧とは存じますが。
「執事」と間違えたのでは? どーでもいいアレがぽっと浮かびました。
【はじめまして。賀来来来子と申します】
「ツイてない御苑へようこそ。あの、名乗る必要は――」
――カキクケコ?
キラキラネームにしても可愛いらしくない……。
「クケコさん……」
【呼び辛いのか、親しいクラスメートには「かぎょう」と呼ばれておりました】
「カ行……」
はにかむプリンセス。
軽く俯いて、前髪をしきりに照れ照れ弄ります。
親しい……?
「因みに、このお声は――」
【水●ヒロさんです!】
確か、『KAG●ROU』の人ですね。
姫の笑顔がイタズラに輝き、勢いピンクの吐息が零れました。
☆
「どういう伝でこちらに?」
【よく訪れる神社で、ひとり愚痴を溢しておりましたら……】
「ふむふむ」
【ツイテナイギョエー! ツイテナイギョエー!】
突然両手で羽ばたき、荒ぶる姫。
ちよと引きました。
某か発症したのかと。
「……なんか、耳にしたことあるな。この感じ」
【話し相手のインコちゃんが教えてくれました】
ああ、左様で。
まさかの「♪イーンチキおじさん(ウ●コちゃん)登場!」かな?
「その子の名前、ご存知ですか?」
【はい! ウン――言えませんわっ!】
真っ赤になって首を振り回します。
新しい学●のリーダーズ?
あらあら、御髪が――。
「素敵な簪が落ちそうですよ、姫」
【お、恐れ入ります。これは父が誕生日に……シリアスナンバー893の――】
「真面目になっちゃダメです。シリアルナンバーごときが」
【あ?! し、失礼いたしました】
「では、改めてインコの名を(しつこい)」
お時間まで弄って差し上げましょうか。うふ、ふふふ……。
☆
【――姉が家を出たので、自宅を改築することに】
プリンセスのお姉様か。
「マミムメ子」だったりして(苗字が違う……)。
「あ、嫁がれたのですね(続く妄想)」
【と申しますか……同じ大学だったフリーターの男性と、半ば駆け落ち気味に】
「あらま」
【ニューヨークへ……】
どっかで聞いた風な。
【この機会にと、私は離れで一人住まいを希望いたしました】
「それはそれは」
【改築案と予算を両親に陳情したのですが、許可が下りなくて】
「一人住まいはOK?」
【ええ。予算が若干オーバーして……】
お金持ちのオーラが溢れまくりですから、問題も無さそうですけど。
「税金じゃないならよろしいのでは?」
【そそ、そうですね……】
控え目に身を捩るクケコ姫。
絞り出すよに呻きました。
【予算オーバーの要因は……隠し通路なんです】
☆
隣家に幼馴染み(♂)がいるそうで。
長年、お互い憎からず想っていたところ、姉君が出奔(?)する直前に告白され、お付き合いすることになったそうです。
しかし――。
【姉のせいで、監視の目がチョー厳しくなってしまって……】
デートもままならぬ、という仕儀に。
で、いっそ――。
【彼と私の部屋を繋いじゃおう♥ って】
互いの部屋を、地下通路で……という大胆不敵な野望を抱いたのだそうです。
その辺の図面は適当に誤魔化してみたものの、
【やはり、工事費は隠しようがなく……】
ご両親に疑惑を抱かせる始末。
そもそも、諸々の権利関係はどうする気なのでしょう。
そこまで語り終えると。
一気に老け込んだ姫、背を丸めて打ち拉がれます。
ロンリーチャ●プリン…………いえ、なんとなく。
ごめんな、聖美(知り合いのように言ってみる)。
お話を伺うだけにしよう、と常々自身を戒めておりますが。
真情を感じ取ってしまったお客さんには、つい――。
「なーんだ、そんなコトで」
【そんなコトですかっ?!】
「ええ、そんなコトです、ウ●コです。はい、ご一緒に」
【ウン――言えませんわっ!】
「そんなコトでは立派な悪役令嬢になれませんよ!」
【あ、悪役令嬢?!】
悪役令嬢もタグに加えようかな。
常連になってくださるかもしれませんし。
「工事は理由を付けて最低限に。その分予算を圧縮しましょう。で……アッチとコッチから、当人同士が手作業で『穴』を掘るのです」
【て……手作業?】
「トンネルを掘るのです」
【……言い直した……】
「それくらいやらないと、国民の理解は得られません(?)」
【こ、国民……?】
「ああ、多少血を見るかもしれませんね」
【???】
「♪そ●なのージョおシキ~」
俯く姫は……夜道でストーカーと遭遇したような青白い顔で、下唇をきゅっと指で摘まみながら。
瞬きもせず、沈思黙考していました。
私も黙ってその姿を見詰め……。
あ。姫は一重(まぶた)なんですね。
私は二重です(ドヤァ)。
どーもありがとう、お母さま(と先代ハゲ)。
【私……やってみます! 愛の力で!】
「その意気です(え。やるの?)」
【二人で……】
言い差して、唇を引き結ぶと。
じわじわ、お顔が紅を差したように明るくなりました。
「愛の前には、大抵のモノはウ●コです。はい! リピート・アフタミー」
【大抵のモノはウン――やっぱり言えませんっっっ!】
「もおっっ!」
【えええっ?!】
「モ×××さんは言えますよ、多分」
【?】
「……ケイゴさんでしたっけ?」
【? あの、どなた――】
「××××さんかな?」
表情がストンと落ちた姫。
【××××さん…………トゥンク♥】
チッ。
なにが「トゥンク♥」か(イラッ)。
「トンネルのシリアスナンバーは11028349で」
【………………もう許してしてください……】
どのくらいで貫通すると思います? お母さま。
ああ、私なら多分、10分もあればツルッと(意味深)。
「ゴッド・ブレス・ユー」
……お二人揃って、両家を説得(交際の)した方が早いと思うんですけど。
エッチら穴掘るよりはさあ。
※ 『夢先案内人』より