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10 病

佐々山が色々と説明してくれます。

 曽我は続けて佐々山に尋ねた。


「2回目の……父の義父と母親が亡くなったときはどうなんでしょう。」

「うーん。言い方は悪いけど、この時も嫁をいびるほど元気だった人たちが、急に亡くなられたってことだよねえ。僕は、1回目と同じ、何か外からの要因があって亡くなったのかなって思うけど。」


「そうなると、やっぱり熱中症とかの環境の可能性が強いか?」と、桐人。


「食べ物のことは分からないからね……。情報が少ないから、あくまで可能性だよ。」

「でも、熱中症だとすると、このときはどうして、父と母は助かったんでしょう?同じ家で寝ていたはずですし。」


 曽我が疑問を呈すると、朝葵がメモを見ながら確認する。


「その日の夜は、健一さんと陽子さんは2階、義父と健一さんのお母さんは1階で寝てたんだね。曽我くん、お父さんの実家って、古いお家だったの?」

「もう取り壊したらしいから直接見たことはないけど、古い民家だったってのは聞いたことがあるかな。」


「それなら、2階の方が暑そうだな。」と桐人が首をひねる。


 佐々山も同様に首をひねっていたが、


「確かに、普通は2階の方が暑いよねえ。ただ、1階の方は僕たちのおじいちゃんおばあちゃん世代だから、エアコン嫌いの人たちだったかもしれないねえ。健一さんは途中まで起きていたみたいだし、暑かったら何か対策はしてたんじゃないかなあ。」


 と言うのを聞き、朝葵は自分の母親が、祖母にエアコンをつけなさいと怒っていたのを思い出した。

 曽我は得心がいった様子で、ぶつぶつと独り言を言っていた。


「でも、確かにそうかも……。父が部屋を開けた時、「むっとした空気だった」って言ってたような気がします。父や母は必要なときは、さっさとエアコンをつけるタイプだったし……。」


 朝葵は、「両親が亡くなっているのを発見する」の隣に、『死因:熱中症?』と書き込んだ。

 佐々山は朝葵のメモをちらりと見て、優しい声で曽我に声をかけた。


「お母さんも、確か熱を出して亡くなられたんだよね。」

「はい。そうです……。そのときも、死因は熱中症と言われました。」


 朝葵が「陽子他界」の下に「死因:熱中症」と書き加える。


「お母さんは、解剖はしたの?」

「いえ、母は救急で病院に運ばれて、そのまま亡くなりましたので。病死の診断が出ましたから。」


 病院で亡くなった場合、特に不審な点がなければ死亡診断書がそのまま出される。家族が希望しなければ解剖になることはない。


「そうかあ。あと、……お父さんはどうだったの?」

「……父は亡くなったのが家でしたので、検視になりましたが……。父も「熱中症」と判断されました。」


 朝葵はメモの「健一他界」の下に「死因:熱中症」と書き込んだ。

 佐々山は曽我に質問を続ける。


「お盆の頃だよね。お父さんは、その日はエアコンは使っておられなかったの?」

「リビングにいたときは使ってましたけど……。僕と話した後、自分の部屋で睡眠薬を飲んだみたいです。そのままエアコンをつけずに寝てしまったみたいで……。」


 曽我の父親の実家は古い田舎の家だったようだが、曽我と父親の家は気密性の高いマンションである。

 真夏にエアコンをつけずに密室にしていれば、室内の温度はかなり高くなる可能性がある。


「普段からお薬を使われていたの?」

「そうですね。去年あたりから眠れないからって、心療内科に通っていたんです。残っていたお薬の数を見ると、処方通りには飲んでいたみたいでした。」

「ああ、そういうことかあ……。ごめんね、つらいこと色々聞いて。」

「いえ、大丈夫です。気になさらないでください。」


 桐人は曽我と佐々山の話を聞きながら、じっと黙っている。また、頭の中で情報を整理しているのだろう。

 朝葵もメモを何度も見返していた。


(この人たちの死因については、一応説明がつくっていうことかあ。)


 実際に人が亡くなっているのは間違いないが、食中毒や熱中症なら、いわゆる「病死」である。不幸な状況ではあるが、曽我の父親に責任はない。

 しかし……


「吉良ちゃんは、何が気になってるの?」


 朝葵の持っているメモをひょいと覗き込みながら、佐々山が言った。

 突然声をかけられ、びっくりして、朝葵はメモを取り落としそうになる。


「いや、結局この『ラジオの声』って何だったのかなと思ってたんです。」


 たまたま複数の人が亡くなった日に、たまたまラジオの誤作動があった。

 ……この一連の出来事は、そういう解釈でよいのだろうか?


「……そうなんですよね。少なくとも父は、『ラジオの声』と、人が亡くなったことには関係があると考えていたと思います。」


 曽我の話だと、父親である健一は真面目な人物で、普段から冗談を言うタイプではなかったらしい。

 ラジオの「声」がただ偶然に起きた誤作動であり、何の不思議もないものだと考えていたのならば、わざわざ曽我に話す理由はない。

 健一は『ラジオの声』という、()()()()()()()()が存在すると信じていたはずだ。


「『ラジオの声』ってのは、何者なんでしょうね……。」


 曽我や朝葵が腕を組んでうなっていると、不意に桐人が口を開いた。


「……まあ、一つの仮説はあるぞ。」

「えっ!」


「七人ミサキって知ってるか?」

お読みいただいてありがとうございました。次は桐人がよく喋ります。ぜひ続きもお楽しみください。

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