2391 二ゲル
森の中。
狼の様な獣に追われていた。
黒い体毛に覆われたその巨体は、目が合ったその刹那、殺気を向けてきたのだ。
胸が痛い。
苦しい。
「サラス! まだ走れるか?」
「はぁ……はぁ。もう……そろそろげん……かい……」
前方でゼェゼェと苦しそうな声を出すサラス。
今にもこけそうな走り方をしている。
振り返れないが、後ろの獣に捕まったら死ぬというのが何となく察せる。
しかし、俺は異世界に来た日本人。
きっと隠れた力が俺にはあるはずだ。
どうにかなる。
焦っていたが、心のどこかでそう感じていた。
「……そうだ! 妙案だ! 『テレポート』! 『テレポート』だ!」
「そ……そっか。……うん。これで……死ぬよりかは……!」
サラスは何かを決心したように、走っていた方向へ踵を向ける。
疲れ切った顔で俺を見て、近づいた俺の手を掴み。
獣に追いつかれるか追いつかれないかの所で、
「『テレポート』」
よし!
間に合った。
これで助かる!
※※※※※※
──え。
え、え?
暗い。苦しい。冷たい。
心臓が締め付けられる。潰される。
何かに全身をくまなく、冷たい何かに締め付けられているような。
ただひたすらに痛い。
大丈夫だ。
俺は……異世界に来た日本人なのだから。
きっと。ここから──
────。
まただ。
また酷い夢だ。
もう嫌だ。
こんな夢、もう見たくない。




