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007 鉱石点バーベル

「ねぇ~。まだ、ヒリヒリするんですけど。あたしのこと叩いてときながら何? あたしが買ってきた服、着てるじゃない!」


 俺達は今、サラスの言っていた『鉱石店バーベル』という場所へ歩みを進めていた。

 サラスはと言うと、さっきから痛そうに頭を抑えながら俺に食って掛かっていた。


「あたしが買ってきた服? あたしの借金で買ってきた服だろ?」

「──! うるさいうるさい! じゃあ何なの? クロキさんが今から買うものも全部、借金で買うものじゃない!」

「…………」


 こいつ。

 ああ言えば、こう言う。

 こいつ本当に堕天使の才能あるよな。


「はい! 出ました無視! あたしの正論に言い負かされて何も言えないようね!」

「…………」

「また無視! 図星じゃん! ん? 何か言い返さ──」

「お! あの建物じゃねぇのか? サラスの言っていた建物って」


 そろそろ鬱陶しいため、強引に、見えてきた目的地を指差す。

 地図からしてあれが目的地な筈だ。


「よし! サラス。行ってみようぜ!」


 威圧的な笑顔をサラスに向け、冷たい視線を感じながら、足早に建物へ向かう。


「…………」


 黙り込んだサラスに『はい! 無視!』と言ってやりたかったが、また煽り返されるだけだろうと思い、口を紡いだ。


 それはさて置いて、目の前の建物だ。

 看板には、サラスの言った通り『鉱石店バーベル』と書かれた看板があった。

 異世界の建物ということで多少の胸の高鳴りを覚えながらドアを開ける。


 店内に入った瞬間、独特な金属臭が鼻を刺激した。

 羊羹色の穏やかな雰囲気の内装である。

 いくつもの棚の上には、鉱石のサンプルとその名前が書かれた札が置いてあった。

 どうやら客は俺たちだけらしい。


「いらっしゃーい」


 カウンターから、おばあちゃん店員が明るくそう呼びかけてくる。

 この人がバーベルさんなのだろうか。


 軽く会釈し、サラスの方へ向き直る。


「結構いろんな鉱石があるみたいだぞ。まぁちゃちゃっと目当てのものを──」

「見て見て! 宝石よ! ダイアにルビーにエメラルドに……! ねぇねぇ。ちゃんとお金稼ぎするから、これ買ってもいいかしら」


 サラスは美しい宝石のサンプルに、キラキラと目を輝かせながら言ってくる。

 さっきの不機嫌な態度は何処へやら。


「ダメだダメだ。これ買ったところで使い道ないだろ?」

「じゃ、また今度こっそり買うわ」

「はいはい。金は俺が保管しとくわ」


 キッと猫の様に睨み付けられる。

 そんなサラスを無視して、カウンターから微笑ましくこちらを見つめる店員の老婆に話しかける。


「あの。すみません。銅と亜鉛ってありますか?」


 老婆は穏やかな表情で頷く。


「えと。じゃあ、それを買いたいのでお願いできますか?」

「大丈夫じゃよ」

「……ちなみに値段は?」

「金属板だと、二つ合わせて3000ルピアじゃ。インゴットとなれば値段が跳ね上がるが……」

「あ、金属板でいいですよ」

「分かった。少し待っておれ」


 そう言うと、椅子から重々しく立ち上がり、中の方へと引っ込んでいった。

 恐る恐る金額を問うたが、思ったよりも安い数字でいい意味で期待を裏切られた。

 楽器を作る分には、大きさによるが金属板だけで十分だしな。


「サラス。3000ルピアだって。案外安いもんだな」


 そう言うと、サラスは渋い顔でこちらを見る。


「そ、そうね。……実を言うと、亜鉛と銅の値段が高価だったら、『クロキさんも金使ってるじゃん』とか言ってマウント取ろうと思っていたわ」

「お前はそろそろ反省しろ」

「はぁい」


 サラスがダルそうな返事をする。

 それと同時に老婆が戻ってきた。


「さぁ。亜鉛と銅じゃ」


 そう金属板が渡される。

 銀の光沢をテカテカと放っている亜鉛版は、一辺20cmほどだろうか。

 銅板は、それの二倍ほどの大きさである。

 どちらもサビ一つない、綺麗な金属板だ。

 これだったら楽器を作るのに足りそうだな。


「大きさが均一じゃないが、大丈夫かの?」


 老婆が申し訳なさそうにそう問うてくる。


「いえ、大丈夫ですよ」

「そうかい。良かったわ」

「こちらこそありがとうございます。では」


 ドアノブに手をかけながら、横目で老婆を見、店を後にした。

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