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006 楽器を作ろう!

 翌朝。


「サラス! 聞いてくれ! 素晴らしいことを思いついたぞ!」

「やっと起きたと思ったら急に何? もう昼近くよ? 立ったまま寝る方法とか思いついた? もしくは目を開けたまま寝る方法とか?」


 急に喋り出した俺に、やかましいのか知らないが不満そうな顔を向けてくる。


「違う。……寝てばっかりと侮るなかれ。素晴らしいことというのは、楽器を作ることだ!」


 サラス曰く、グレッグの時に吹いた口笛は、音量が小さすぎて届いて来なかったらしい。

 楽器を作れば音の聞こえも良くなる。加えて、音楽という存在を分かりやすく表せると思う。

 そういう訳で、俺は楽器を作るという考えに至ったのだ。


「へー。いいんじゃない? だけど、楽器の作り方なんてしってるの?」

「いいや、全然。でも材料なら知っている。一応、高校の時の部活で、習ったことがあるからな」


 そう言うと、サラスは興味無さげに聞き返す。


「ふ~ん。してその材料ってのは?」

真鍮(しんちゅう)て言って、銅と亜鉛の合金のことだな」

「材料わかるだけで、楽器は作れなくない?」

「俺はそこまで無策じゃない。これを見たまえ!」


 俺は手に持っていた身分証を、突きつけるようにサラスに見せる。


「んーっと。『製造』?」

「そう。このスキルは、構造などがわかるものなら、材料さえあればどんなものでも作ることができるらしい。自分の吹いていたトランペットなら構造くらいわかる。この『製造』を駆使して、楽器を製造ってわけだ! スキルポイントが余ってたから、さっき習得してみた」

「分かったわ。分かったのだけれど、銅と亜鉛はどこで手に入れるの?」

「それは、適当に鉱山に行けばいいかと……」

「バカね。そんな都合よく、街の近くに鉱山なんてあると思う?」


 その言葉に俺はフリーズした。


 た、たしかに。

 あったとしても、こんな街の近くなのだから掘り尽くされているに決まっているのか。


 そんな俺を見てサラスは、


「はぁ~。あのね、そう言うのを無策って言うのよ? あたしの期待を返してちょーだい」


 呆れ顔で追い討ちの一言を発した。


「な、なんだよ。そういうお前は何かあんのかよ?」

「……クロキさん。泣く寸前の小学生みたいな喋り方になってるわよ」

「う、うるせぇな」

「はいはい。……えーっとね。あたしクロキさんが寝てる時ね、街の中を散歩してたのよ。んでね、その時スキルの『宝探知』を使ったら『鉱石店バーベル』っていう店を見つけたのよ……ほらここ」


 ……と言って、サラスは机に置いていた地図を取り、店の場所を指す。

 それは、街の正門の近くに位置していた。


「いや、なんでスキルを街の中で使おうと思った?」

「隠された宝があるかもなーなんて」

「まぁ、RPGのお決まりだもんな。……兎に角。鉱石店っていうくらいなら銅や亜鉛くらいはありそうだし、後でそこに行くとして……気になった事があるから聞いてもいいか?」

「なーに?」


 俺はサラスの方へビシっと人差し指を向ける。


「……その服はなんだ? 同じ白色で気付かなかったが、よく見たら、違う服じゃないか?」


 そう。サラスは昨日まで、神聖っぽそうな白色の衣服を身に纏っていたのだ。

 だが今着衣しているのは、少し質素な布地の服だ。

 癪だが結構似合っている。


「え、普通に買ったのよ?」


 サラスは(とぼ)け顔で答える。

 やがて、ハッと何かに気付いた様に手をポンと叩いた。


「あぁ、そっか! 安心して。ちゃんとクロキさんの服も買っているわよ!」

「そういう、問題じゃねぇよ。……いや、服に関しては必需品だし、俺も買おうと思ってたから別に咎めはしないんだけどさ」


「……ちなみにいくら使った?」


 俺が問うと、サラスは肩がビクンと跳ねる。

 ……この様子だと結構使ったらしい。

 そして、逃げる様に話題転換をした。


「……そ、それよりも、クロキさんにも良い服買ったから……ね!」


 サラスは焦りながら、いつの間にか部屋の隅にあった包みから紺碧(こんぺき)色のシャツを取り出し、バッと広げ俺に見せた。

 ほぼ一色でシンプルではあるが、現代日本とまではいかないが丁寧な作りをされている。

 異世界の服なんて、あまり期待していなかったが……中々に良いな。


「ほら? どう? 結構いいでしょ?」

「そ、そうだな。思ったよりも──」


 俺が感想を述べようとすると、サラスが食い気味に割り込む。


「でしょ⁉︎ ほら。じゃあ、早速この服を着て『鉱石店バーベル』ってとこに行くわよ」

「あぁ、そうするか。……で、この服の値段は?」

「…………一万五千ルピア」

「てんめぇ! この堕天使! やっぱお前はここで処す!」


 俺はそう呻きながら、仕事を見つけようと心に誓った。

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