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005 借金

 何かが起こったと言う訳でも無く、不意に目が覚めた。

 覚醒しきっていない頭を回転させながら、柔らかいベッドの上で首だけを横に向ける。


「あ! クロキさん! やっと起きたわね」


 何かに驚き、そして嬉しそうなサラスの声が聞こえた。

 今にもまぶたが閉じそうな目を擦り少し見回すと、ここは宿の中であるということが理解できた。

 既に、窓の向こうは闇色に染まっている。


「……サラスか」


 そっか。

 俺、確かグレッグっていう奴にボコられたんだっけ。

 しかし、コンクリの壁に叩きつけられた筈の、背中や頭の痛みはほとんど感じないのだが。


「サラス。あの後何があった?」

「んーっとね。なんかね、クロキさんの身ぐるみ剥がされてたんだけど──」

「ちょっちょ。待て」


 サラスの口から飛び出した衝撃発言に、俺は無意識にストップをかける。


「でね。お金とか今あたしが持っているじゃない? だから、クロキさんのそのズボンに入っていた、スマホを「いいもん持ってんじゃねぇか」的な、悪役ティックな言葉を放ち奪っていったのよね」

「おい。無視するな。というか、スマホ取られたって。……俺、今後疲れたことがあったら、『きらきら星』とか聞いて癒されようと思っていたのに……」

「そしてね。あたしが、あなたの重い体を背負って病院に連れてったのね」

「再び無視されたのは心外だが、それはありがとう」

「どういたしまして。で、クロキさん、その時瀕死だったみたいでね。治療費がとってもかかるらしくてね」


 確か、今の残金は二万ほどであるが、高い治療費を出せたのだろうか。

 若干の戸惑いを表しながら、俺はサラスに聞き返す。


「お、おう。それで?」

「まぁ、120万ルピア?」


 そのあまりにも大きい数字に、思わず膠着する。

 そんな様子の俺をよそにサラスは続ける。


「その治療用のアイテムが100万近くかかるらしくて。そして治療が終わったクロキさんを宿まで運んで。……まぁ、そんな感じ!」

「運んでくれたんだな、ありがとうじゃなくて! その何百万もする治療費は? どうやって金を出した?」


「百五十万の借金をしました!」


 サラスはきっぱりと追い討ちの一言を放つ。


「……?」

「ちなみに、一ヶ月後に二百万ルピアにして返せってことらしいわよ」

「…………⁇」

「クロキさん? おーい。クロキさーん」


 サラスは小さな手を、俺の目の前で縦に大きく振り、様子を伺うように顔を覗かせる。

 そのおかげか、どこかへ飛んでいきかけていた意識が、頭の中へ引きずり戻される。


 よくよく考えれば、今回の件、サラスに非はないのか。

 俺が、グレッグにやられなければ良かっただけであって。

 自分の未熟さが引き起こしたことなのだ。


「いや、ごめん。サラス。その、色々迷惑かけたみたいだな」

「ほんと! クロキさんったら重くって。……ダイエットしたら?」

「いや、俺は一般男性と比べても軽い方だから! ……だけど、一ヶ月後に借金を返済だっけ? それはきついだろ」

「でしょうね。でも、あたしの宝探しのスキルを駆使して工面しましょ。……あ、あとねメープルのことだけどね。昨日また来るって言ってたじゃない? 結構待ったけど来なかったのよね」

「そっか。じゃあ明日も一応行ってみるか」

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