前夜
次の日、俺はノアよりもはやく、目覚めることが出来た。部屋の時計は、六時半を指している。
俺は、ノアを起こさないように布団から起き、服に着替える。昨日、ノアに俺たちが替えの服を持っていないことを伝えたら、2人分用意してくれた。
下の階に降りると、村長が起きていた。
「おぉ、起きたのかい。」
「はい。洗面所をお借りしますね。」
そう声をかけて、洗面所で顔を洗う。さっぱりした。
リビングに戻ると、村長がそとにいこうとしていた。
「村長さん、どちらに行くんですか?」
「村の見回りじゃよ。わしの日課でな。」
「俺も着いて行っていいですか?」
俺は、まだこの村の中をちゃんと見た事がない。これから数日居させてもらうからには、見ておきたい。
「あぁ、もちろんじゃよ。」
俺は村長に続いて、家を出る。この家は村の入口近くにあるから、余計に中を見た事がない。
早い時間だからだろうか。村の中には、人があまりいない。
村長は無言で、村の奥の方に入っていく。
ここはきっと、ごく普通の村なのだろう。しかし、俺は今まで住宅地区しか見た事がなかった。村というところ自体が、初めてだ。
俺にとってはとても、新鮮な光景だ。そして、アルカナにこんな場所があることが、驚きだ。
こんな村は、他国の光景だと思っていた。
「ここは平和なところですね。」
村長に話しかけるが、返事はない。そのまま歩みを進めていく。
俺は、ここに連れてこられたことを怒っている。でも、同時に、ここに来て多くのことを知れてよかった、とも思っている。
しばらく歩いていると、村を1周したようだ。15分ほどで周れただろうか。
家の前に戻ってきたところで、急に村長が話し出した。
「この村は、今は平和なところじゃ。だが、かつては多くの争いもあった。そしていつまでこの平和が、続くかも分からない。」
独り言のように話し出した。さっきの俺の言葉に対する、返事だろうか。
「それでもわしは、この村が大好きじゃ。わしはこれからも、この村を守っていきたい。」
それだけ言うと、村長は家の中に戻っていった。
俺もそれに続こうとして、ふと立ち止まり、後ろを見る。
「本当に、平和な村だな。」
俺も続いて、家の中に戻った。
家に戻ると、ノアが朝ごはんの用意をしていた。ちょうど、出来上がるところだそうだ。他のみんなは、食卓に着いていた。
俺が席に座ると、朝ごはんが運ばれてきた。
メニューは、プレーンオムレツとパン、それにサラダだ。
しかし、先程村を見た時に、野菜を作るスペースはあったが、鳥を育てている様子はなかった。
「この卵はどうしたんだ?」
「その卵はな、市で買ってきたもんだ。」
なるほど。この村に無いものを、市で他の村にもらう。確かにいい仕組みだろう。
「パンなんかも、買ってきた小麦粉で作ってんぞー。」
外側では、支え合って生きているのだろうか。
「いっただきまーす!」
話を聞いていたソフィーが、待ちかねたのか、食べ始めた。俺達も各々、食べ出す。
シンプルなメニューだが、みんなで食べるご飯はやは
り美味いな。
そんなこんなで、みんなで朝食につき、花畑でノアと昼ごはんを食べ、夜にはまた、みんなで食卓を囲む。
そんなことを繰り返しているうちに、市での前日を迎えた。
「ルーク、起きろー!!」
ノアに起こされる。デジャブだ。
「なんだ?まだ6時にもなってないだろ。早過ぎないか。」
出来ることなら、もう少し寝たい。
「何言ってんだよ!明日は市だぜ。今日は雪見草の、借入時だ!」
明日は市。あぁ、そうだ!市の前日に、まとめて雪見草を抜くと言っていたな。
「さぁ、ルーク。今日は1日働き詰めだ!」
そう言って、俺の慌ただしい1日は始まった。
まず、下の階に降りると、もう朝食が並んでいた。ノアはいつも早起きしていてすごいな。
そして朝食の横には、お昼の弁当も用意されている。
俺たちは、朝食を食べ、流れるように昼飯を持ち、外へと出ていった。出ていった。
いつもは、ノアが大きなカバンを持っている。しかし、今日は外にリアカーがあった。リアカーの中には、2つのシャベルが入れてある。
「おっしゃ、いくぞ!」
そう言って、ノアはリアカーを引いてくれる。
「ルーク、後ろ乗るか?」
「いいのか?」
いくらノアとはいえ、俺を乗せたら重いだろう。
しかし、ノアが乗れと言うから、お言葉に甘えて乗せてもらう。
ノアは軽々と俺を運んでくれる。そういえば、ソフィーも俺を持ち上げられたな。
ノアが乗せてくれたから、俺は楽に着くことが出来た。
「今日はこのスコップで、雪見草を掘るぞ!」
と言って、ノアがスコップを渡してくれる。
「1株ずつ分けて掘るんだぞー。まぁ、根っことかはあまり気にしなくていいからな。掘ったのは、リアカーに乗せてってくれ。」
掘り方を教えてもらう。割と、乱雑に扱っていいようだ。驚異の生命力、ということだろう。
俺たちは、黙々と掘り進めていく。こういう自然に触れるのも、いいな、と思った。今まで俺は、家の庭の整備くらいでしか、土を触ったことがなかった。
掘って、お昼を食べ、また掘って。あっという間に、夕方が近づいてきた。リアカーはもう、パンパンだ。もちろん、俺が乗ることもできない。
「あぁー、つかれたーー!」
そんな会話をしながら、2人で歩いて家へと帰った。
晩御飯を食べ、寝る支度をし、布団に入ろうとした時だ。ノアが声をかけてきた。
「お前らさ、ずっとここにいるわけじゃ、ないだろ?」
「あぁ、そうだな。」
俺的には、ずっとここの村にいたい。ここで知れること、体験できることは、とても刺激的で面白い。しかし、このままずっといては迷惑となるだろう。それに俺は、マナミを家に帰さなければならない。
「やっぱそうだよな。」
ノアが少し悲しそうな顔をする。俺も、ノアとは気が合うし、もっと一緒にいたい。
「お前たちは、これからどこにいくんだ?」
「それが、まだ決まっていないんだよ。」
「そうだったな。」
ノアが苦笑する。俺も、早く行く場所を決めなければと思っているんだが、見当もつかない。
「とりあえず、市で何か探してみるよ。見当もつかないけどな。」
「何を目的に動いてるんだ?」
俺は、ノアに話していいか悩んだ。でも、いいだろう。こいつは信用できる。
「俺はな、マナミを家に帰したいんだ。詳しくは言えないが、マナミは、ここから遠くのところからきたんだ。」
異世界ということは、伏せて伝える。
「そうなんだ。」
ノアが一瞬、迷ったようなそぶりを見せた。
「どうしたんだ?」
「なんでもない!さぁ、明日も早いから、もう寝るぞ!」
どうしたのだろうか。しかし、もう一度質問する前に、電気は消されてしまった。
俺は布団に入って考える。明日は市だ。なにか、手掛かりになるものが、見つかるといいんだが。
また来てください!




