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ノットヒズデイ

 何をやっても裏目に出る日、というものがある。PKのキッカーをいつもと変えたら失敗するとか選手交代使い切ったらGKが負傷退場するとか。

 今日はそんな日に違いなかった。「蛇の目」を警戒して急いでレイさんを引き上げさせたらそれで激怒させた。交渉を先走ったら一人では上手く説得できなかった。後にステフの魔法で探しやすい様、翻訳の眼鏡を親父さんへ渡したが為にスタジアムの案内表示が読めなくなった。

 それで俺は現在、絶賛迷子中である。しかも落ち込みながら。この世界へ来て以来、あんな塩対応に遭遇した事は無かった。俺をサッカー関係者として――というのも誤解だが――リスペクトしてくれるエルフさんたちや基本的にフレンドリーな他の種族さんたちの暖かい反応に慣れ過ぎていた。

たるんだ(鈍った)なー」

 レイさんの冷たい態度よりも、それにショックを受け上手く交渉を運べなかった自分に失望している。俺はクレーム処理の専門家ではなかったのか?

『ぴーぴーぴーよー! 日本からお越しのショーキチ様、お連れの方がお待ちです。お近くの迷子センターまでご足労下さい』

 スワッグの場内アナウンスが流れた。

「その迷子センターが分からへん、ちゅーねん!」

 誰も聞いていないが思わず関西弁で突っ込む。そう言えばレイさん一家も関西弁っぽかったな? 翻訳アミュレットの都合かもしれないが、ナイトエルフさんは全体的にこう……言葉が独特だ。

「翻訳アミュレット……そうだ!」

 俺はふと思いつき、首から下げたそれを服の外へ出し軽く振ってみる。スマホがGPSを検知し直す時のアレだ。

「おー! ショーキチ! 探したぞ?」

 ひょっこり、通路の角からステフが顔を出した。

「助かった! ステフ、もしかしてこれで?」

「ああ。そのアミュレットの魔法のオーラを辿ってな。眼鏡の方のオーラが無いんで別人かと思ってしばらく悩んじまったわ」

 やはり思惑通り、ステフは魔法の物品を感じる事ができるんだな。これは不運の中の僥倖だ。

「すまん。なんか色々あってさ。とりあえず部屋まで連れて行ってくれるか?」

 俺の声色に何かを感じたのか、ステフは軽口一つ叩かずに歩き出した。俺はその背を見ながら、やるべき事を脳内で整理していった。


 イベントも後片づけも終わって、俺たちは昨日と同じスタジアム内の宿泊施設にいた。今日は旅の仲間に加えてリストさんとクエンさんもいる。全員が適当な場所に腰を落ち着けた所で、俺は作戦会議を開始する事にした。

「皆さんお疲れさまでした。皆さんの協力で大変、有意義なイベントになったと思います」

 そう言いつつ俺は選手リストを配る。リストさんにもだ。リストさんにリストを配る……今更ながら面倒くさい名前だな!

「イベントでの確認を経て作成したのが、ご覧頂いている表です。アローズに迎えたい選手のトップ2は……見ての通りリストさんとクエンさんです。お二方の意思としてはどうですか?」

 全員の視線がナイトエルフ二名に注がれる。リストさんとクエンさんはそれを受けて互いの肩を組み、親指を立てた(サムズアップ)

「望む所でござる!」

「行きたいっす! めっちゃ楽しみっすねー!」

 両者はイベントの疲れも見せず元気な声を上げた。今はこの先輩後輩コンビの脳天気さがありがたい。

「ありがとうございます。地上での暮らしやチームへの参加については俺もナリンさん始めコーチ陣も全力でサポートさせて頂きますので、気軽に何でも頼って下さい」

 ナリンさんと共にリストさんクエンさんに頭をさげつつ、ふと嫌な予感がして付け足す。

「ただナリスとショー(BL演技)はもうやりませんけどね」

 それを聞いてリストさんはがっくりと肩を落とした。クエンさんがよしよしと頭を撫でて慰める。

「次にリストの三番目を見て欲しいのですが」

 多分に演技を含むだろうと思うので大げさに落ち込むリストさんを無視して続ける。

「『レイ』という名前の選手らしいのですが……これです」

 俺はイベントの模様を録画した画像を魔法の手鏡に呼び出して見せる。

「分かりますか? クエンさんを抜いて子供たちを飛び越した……」

「ああーっ!」

 案の定、リストさんが素に戻って叫んだ。

「このお嬢さんでござるか~!」

「いや、これは自分も油断してたっすから~」

 興味津々で映像に食い入るリストさんと恥ずかしそうに弁解するクエンさんであったが、ふと先輩が後輩の肩をつついた。

「クエン氏、このお嬢さんってあの……」

「え? あ、マジっすか!?」

 二名は何度か映像の巻き戻しを俺に指示し、確認した後で続けた。

「あの子で間違いないでござるな」

「そっすね」

「ご存じなんですか? もしかして有名?」

 俺が尋ねると二人は目を合わせて頷き、リストさんに促されたクエンさんが語り始めた。

「このお嬢さんもなんですがお母さんの方が……」

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