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あるいたずら娘の願望

「ふんふん、ふーん♪」

 台所から彼女の鼻歌が聴こえる。朝の光と風に乗って。薄い上衣の上にエプロンをまとって朝食を用意する彼女に忍び寄り、俺はそっと後ろから抱き締めた。

「きゃ! もう、どうしたのショーちゃん?」

「シャマー、マイラブ! おはよう、今日も可愛いね」

 俺は振り返るシャマーの首筋にキスの雨を降らせながら、彼女が手にした木べらをそっと奪い取り流しに置く。

「やん、ショーちゃん! 朝ご飯の料理させて~」

「いや、先にお前を食べたいんだ」

 シャマーの抵抗は弱い。本気であらがっているのではなく、あくまでも俺を興奮させる為のポーズだ。それが分かって俺はなおいっそう彼女が欲しくなった。

「もう、エッチね! こんな朝から駄目よ~」

「美味しそうなお前が悪いんだよ。今すぐ愛し合おうぜ」

 そう言いながら小鳥のように軽い彼女をキッチンテーブルの上に抱き上げ、太股の内側から這い上がるように指を……

「はい、カット~!」

「ちょっとダイレクト過ぎるぴい」

 間の抜けた声がして、俺はふと正気に戻った。すると周りの風景が溶けた絵の具のように歪み、殺風景な正方形の部屋に変わる。

 ここはキッチンではないし、俺とシャマーさんは朝からイチャイチャする恋人同士でもない。ここは……どこだ?

「もう、二人とも毎回、早過ぎ~。ここからが本番(いいところ)だったのに~」

 普段の衣服へ戻ったシャマーさんが腕を組んで怒りの声を投げかける。その方向にはディレクターズチェアに座りメガホンを持ったステフと、腰に養生テープをぶら下げカチンコを持ったスワッグの姿があった。

「いやどう見てもジノリちゃんには刺激、強過ぎだろ? あの子、割とおぼこいぞ?」

「ナリンちゃんも真っ赤ぴよ」

 スワッグの羽根が指刺す方向にはナリンさんまでいた。豪華な観客席に座り俯きながらポップコーンの入ったボウルを無意味にひたすらグルグルと回している。

「いや、その、ショーキチ殿の演技はなかなか良かったと思います……」 

 演技? ああ、そうだ! 途端に色々なモノの輪郭が明確になってきた。

「ここは俺の夢の中で……俺は演技の練習をしていたんだ!」

「何を当たり前の事を言っているぴよ?」

「あ、さてはシャマー、お前! ショーキチにかけた魔法だけちょっと細工をしたな?」

 ステフに追及されたシャマーさんはぷい、とそっぽを向く。その姿を見て更に意識がはっきりしてきた。

「思い出したぞ! 俺たちはジノリさんヘッドハンティングの為に、彼女の夢の中に現れて好印象を植え付け現実でも『だけど気になる昨日よりもずっと。アイツの夢見たせいよ、と思わせて交渉を有利に働かせよう! 作戦』の練習を俺の夢の中でしてたんだ!」

「なんでそんなに説明口調ぴよ?」

「ああ、それでシャマーさんに魔法をかけて貰って眠って……みんなは『これは夢だ』としっかり意識してたのに、俺だけ操られていたんだな!」

 スワッグには突っ込まれたが口に出す事で確信を得た。彼女たちは今、俺の夢の中に乱入している。

「しかしまあ、シーンその1はボツだな。シーンその2を試すぞ!」

 ステフが台本をめくりながら元の位置へ戻る。不承不承、シャマーさんがナリンさんのいた観客席の位置へ移動すると、代わりに真面目なコーチの方が俺の近くに立った。

「ショーキチ殿、ふつつか者ですが宜しくお願いします」

「え、演技の話ですよね?」

 俺は混乱しながらも、スワッグに差し出された台本を開いた。

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