平凡な夫婦の少し非日常な日常
自分の名前は田中たろう。
名前からして平凡。
普通の平凡な家庭で育ち、ごく平凡な高校卒業した後、よくありがちなどこにでもあるブラック企業と言われるような企業に就職。
残業なんて当たり前。もちろん奉仕残業。定時退社なんか最初の一ヶ月研修以降、一度もした事なんてない。
上司からの理由という理由の無い、ストレスの捌け口としか思えない、ねっとりとした説教は日常茶飯事。
救いは毎月のお給料だけは平均よりは断然多い。
仕事内容と比例しているかと言われれば疑問しか無い。
ゆり子という名前の女性と20代前半で結婚した。
普通に恋愛をした。
ただお互いが原因で子供が居ない。
唯一の癒し、憩いは妻と共に始めたどこにでもあるオンラインRPG。
ゲームくらいしか、妻も自分も趣味と言えるようなものがなく。
最初に毎月、月初にプレイチケットを購入しなければいけない。
いくつも種類があったが、とりあえず毎月かかるプレイチケットくらい贅沢をしようという事で最も費用のかかるドリームチケットというチケットを選んだ。
他の種類のチケットが一万円を超えないのに、このドリームチケットは五万円近くした。
妻の分と二人で10万円。
おそらく他に類を見ない程の高級さ。
もちろん、特典はある。
取得経験値が他のチケットに比べると対倍率最低で3倍。
体力回復薬、魔力回復薬の使用回数が常に無制限。
あとは通常受けられるクエストを全種類達成すると特別ボーナスがあるらしい。
おそらくその特別ボーナスとやらが他のゲームの類を見ない程にチケットの価格に見合うボーナスなのだろう。
最初はそれを目標に妻と二人で、ゲームを黙々と進めていた。
中々の難易度で、苦労しながら、休みの前日には徹夜をしながらゲームを進めてきた。
プレイし始めて10ヶ月ほ経った土曜日の深夜、通常受けられるクエストを全てクリアする事が出来た。
が、自分に特にこのゲームの運営から特別ボーナスのお知らせも、プレゼントボックスやアイテムボックスにそれらしいボーナスアイテムは無かった。
もちろん妻の方にも無かった。
10ヶ月間。
プレイする際にかかった費用が100万円。
もう失意しか無かった。
ただ自分達がこのチケットを選んだ訳で、様々な恩恵を受けていたからクレームを入れる気にもならず、まだ月初でチケットを購入したばかり、とりあえずあと一ヶ月プレイしようと妻と話し、妻と共に徹夜をしたので今日はこのまま寝ようという事にして、ベッドに入りそのまま寝た。
おそらく日々の疲れ、徹夜の疲れ、特別ボーナスが見当たらなかったという失意からの疲れ、色んな疲れが気を緩めた瞬間に襲ってきた。
泥のように寝てしまった。
そして自分は翌朝、驚愕の光景を目にする事になる。