ステータスアップ? そんな事よりイケメンにしてくれ!
「君はもう、地球で生まれ変わる事が出来なくなったからだよ」
「なっ、生まれかわれないのか俺は?」
「うん、そうだよ。白紙だったからね、地球での君の役目は終わったんだよ」
神様の言葉に俺は頭の中が真っ白になった。それじゃあ俺はこれから一体どうなるんだ?
「あっ、もしかしてここの住人になれるとか……」
「天界の住人? 君が? あははは、無い無い。だって君顔が怖いもん!」
「もう許さんぞ貴様ーー!!!」
「落ち着いて下さい隼人さん!」
我慢の限界が来て、神様に掴みかかろうとした俺は、隣にいた役員に止められてしまう。
「ふー、ふー、ふー」
「腹が立つのも、あの顔面に一発かましてやりたい気持ちも非常に分かりますが、どうぞ堪えて下さい」
「君、僕の部下なのに酷いこと言うね……」
ショックを受けた様な顔をしている神様に、役員がジトっとした目を向ける。
「神様が魂をおちょくるからでしょう。私はまだ仕事が控えていますので早急に隼人さんに今後の事を伝えて下さい」
役員の人に叱咤され、やれやれと言った神様はようやく話の本題を話し始めた。
「んんっ、分かったよ。 さて、隼人君! 僕は君に生まれ変わる事が出来ないと言ったがそれは地球ではと言う事だ。つまり、地球以外では生まれ変わる事が出来るんだよ」
「ちっ地球以外⁉︎ それは火星とか水星とか別の惑星でって事か?」
「違う違う、そんな所に行ってどうするの、苔にでもなりたいのかい? 君がこれから生まれ変わる場所は惑星トライアルト。 地球に良く似た惑星さ」
神様が指をパチンと鳴らすと、金色に輝く一枚の紙に透明のペンが空中に現れた。
「さて、実は君にはビックなチャンスが舞い踊って来たんだよ隼人君! 何と君の能力値をかなり上げた状態で転生させてあげる!」
神様は嬉しそうに言うが、俺の頭の中はそれどころでは無い。
「惑星トライアルト? 能力値を上昇? ちょっと待ってくれ理解が追い付かない」
「あー、そうだなぁ、分かりやすく言えば宝くじ当選の何万倍も凄い確率に君は当選したわけだ! どうだい嬉しいだろう?」
「えっ、あぁまぁ……嬉しいのか……」
「何だい、反応が鈍いねー」
そう言われても、いまいちピンと来ない。能力値を上げてくれると言う事は、腕力とか体力とかが上がるって事なのだろうか? ぶっちゃけ、どちらも人並み以上にある為そんなに凄い事に感じない。
「そうだ! なら大サービスで君の顔を爽やかなイケメンに変えて転生させてあげるよ! その高すぎる身長も調整してさ。その代わり年齢は17のままスタートになるけどどうする?」
「なっ⁉︎ イケメンになれるのか、この俺が⁉︎」
「おっ、食い付いたね〜♪ でもあんまり顔近付けないで、怖いから」
神様の提案に俺は目を輝かせた。この俺がイケメンになれる。
スーパーでバイトしていた頃は、どんなにレジが混んでても俺のレジには人が並ばず、挙げ句の果てには客から顔が常に怒ってて怖いと言う理由で、やんわりと自主的に辞めさせられ。
街を歩いていたら、取り立て屋に1000年に1人の逸材だ! とスカウトされる始末。
挙げ句の果てには、両親にすら整形を勧められてしまった俺が……イケメンになれる……
「で、どうする? 今の年齢での転生になるからちょっと人生短くなっちゃうけど、記憶は持ち越しさせてあげるし悪い話じゃな」
「是非お願いします!!!!!」
「わぉっ! 積極的〜〜」
俺は神様が話し終わる前に、深々と90度の礼をして、食い入る様にその提案を承諾した。
「さてと、それじゃあ能力値を決めるようかな、取り敢えず腕力や体力、防御力は英雄クラス位に上げといてあげよう。んで習得スキルはまず【攻撃魔法耐性大】に、【毒耐性大】、【自然治癒力大】に、あぁそうだ魔力量も賢者並みにしといてあげよう! それからえーと……」
神様は1人で盛り上がりながら、俺の能力値やスキルと言うモノを決めている。
気になる単語やスキルって何? とかは思ったのだが、それよりも俺は、新しい自分の顔のパーツ選びを役員の人と決める事に夢中になった為、能力値方面は全て神様に丸投げした。
「これなんかどうだろうか! やっぱり爽やかな感じのイケメンの方が女子とお話し出来るだろうか?」
「それですと、目はもう少し優しい感じに……あっコレとか理想的じゃないですか?」
「確かに、よしじゃあ次はこのギザギザの歯を綺麗な歯並びの白い歯にして、身長は178位にするか」
時間にしておよそ一時間、お互い同時に作業が完了した。
「よーし、それじゃあ隼人君、この紙と君の理想の顔パネルを持って部屋の中央に立ってくれるかい? あっそうそう其処で良いよ!」
「隼人さん、こちらが服と靴そして下着なります。通気性も俊敏性も抜群ですし、あちらの世界でも通用するデザインとなっています」
俺は役員さんに黒が主体で、フードが着いたローブに、通気性抜群の白色の肌着、そしてポケットがいくつも着いたズボンと何も入ってはいないが頑丈な革でできたリュック、そして山登りに使いそうな頑丈な靴を貰った。
「何から何まですまないな」
「いえいえ、せめてもの餞別です……」
そう言うと、いつもニコニコ顔の役員さんの顔が少し暗くなった気がした。
「あっそうだ隼人君! もし転生した顔が気に入らなかったら一週間以内だったら、強く元の顔に戻りたいと念じれば戻る様にしておくから覚えておいてね!」
「えっ? あぁ分かった」
ふっ、神様も可笑しなことを言う。絶対に元の顔に戻りたいなんて思うわけ無いだろう! 厳選に厳選を重ねたこのイケメンフェイスになれる事が今から凄く楽しみなのだからな。
「いや〜わくわくするなぁ、あっそう言えば全然聞いてなかったんだが、俺がこれから行くトライアルトってどんな場所なのだろうか? 住む場所とかお金とかはどうすれば……」
「あっ説明してなかったね! トライアルトは魔物や規格外の獣が蔓延ってて、魔人や人間達がその魔物たちと昼夜問わずに戦ってる結構危険な所だよ! 住む所とかお金は自分で何とかしてくれたまえ! まぁ死なない様に頑張ると良い!」
「へっ?」
「それじゃ頑張ってね〜〜」
「ちょっと待っ」
神様がパチンと指を鳴らすと、俺の足下に魔法陣の様な物が現れて、俺を明るく照らす。そして俺は光の中に包まれて行った。
「んーー! さぁて終わった終わった! それじゃあ僕は昼寝するからまた何かあったら起こしてね〜」
「神様、本当に良かったのでしょうか……」
「ん〜何がだい?」
不安そうな顔をした役員に、くるりと神様が振り返る。
「彼の使命を伝えず送り出した事がです。彼は、彼女の力になれるのでしょうか。もし今回も失敗してしまうとあの彼女はもう……」
「固い固い、もっと気楽に構えてないと人生損するよ〜それにそれは僕たちが考える事じゃない。世界が彼を選んだんだから、それこそ運命の赴くままにって奴さ!」
「はい、そうですね……」
「ふふん、それじゃあお休み〜〜」
神様はそれだけ言い残すと、パッと姿を消した。部屋には役員が1人だけ。
「……頼みましたよ隼人さん」
そう呟いて、役員も姿を消した。
『グルルルルルルルル!!』
「うぉーーー! 来るなーーー! 俺なんか食っても美味くねーーーぞ!」
『ガァァァァァァ!!!』
「のぁーーー!!!」
俺が転生した場所は、青黒い毛並みの10メートルは優にありそうな猛獣の頭の上に落ちてしまい、俺は早速死にかけていた。
「畜生あの神の野郎覚えておけよーーー!!!」
やっとこさ主人公が異世界へと旅立ちました!