アイビー
三年生になった。
私は…人生で初めて…恋というものをしていた。
ただ、一緒にいたい。
ただ、それだけだけど。
それが本当に恋なのかは分からないけど。
恋をしたの。
そう思えてくると、彼の行動、仕草、表情。
その全てが尊いものに思えてきたの。
彼と過ごせる時間はもう一年も残されてない。
私が彼と同じ大学になんていけるはずないんだから。
刻が過ぎるのは早かった。
夏は過ぎて、秋が顔をのぞかせた。
私は何もしなかった。
しようとも思わなかった。
彼が私のことを見てくれているはずがない。
私なんかが告白でもしたら、彼に嫌がられるかもしれない。
それは嫌だ。
だから私は彼をただ、ただ眺めていた。
長い事行動しなかった私に対する、罰だろうか。
彼に彼女ができた。
メールで告白されたのだ。
なんて現代的なんだろう。
それだけならどれほど良かっただろう。
彼のいつもの姿を見れるなら私は良かった。
でも、それは叶わなかった。
彼女は彼と人前であろうと構う事なくイチャつき、唇を重ねた。
痛い。
神聖なものが、関係のないものに汚されたような気分だった。
この半年の間、私は彼だけを見続けていた。
その全てが音を立てて崩壊したの。
彼は誰にも汚されちゃいけないのに。
彼は美しいものであるべきなのに。
寒さが肌を撫で、冬が来た。
神様は見てくれていたの。
彼は永遠に私が見ていてあげなくちゃならないの。
彼には少し不純なものが混ざってしまったようだけど、構わない。
ネズミはいなくなった。
汚染された部分も切り取ってしまえば大丈夫。
あぁ、あのネズミが触れたところは切り取らなきゃ。
唇を重ねたのなら口をも無くしてしまいましょう。
唾液を飲んだのなら食道を抜き取ってしまいましょう。
あぁ、これであなたは元の綺麗な姿に。
永遠に一緒にいましょうね。