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ゆうかと僕

作者: 空暉

ゆうか「今日もあっついわね〜」


7月の終わり、夏休みに入ってまだ間もない時期に、僕は幼馴染のゆうかの買い物になぜか付き合わされていた。


ショッピングモールに向かう途中、ゆうかがとても暑そうに歩いている。胸元は少しはだけていて少しだらしないし、髪もセットしきれていない。今時の高校生ってこんな感じなのだろうか。因みにゆうかは高校2年生、僕の2つ年上である。


ゆうか「ん、どうしたの?元気ないわね。」


下を向いて歩く僕の顔を覗き込むようにしてゆうかはそう言った。その一つ一つの動作に少しドキッとしてしまうのがたまらなく心が苦しい。


誠司「なんでもないよ。ただちょっと、暑いなぁって、」


ゆうか「だからごめんって〜 彼氏になにプレゼントすればいいのかわかんなくてさぁ〜 私相談できる男って誠司しかいないからさぁ、」


そう、今日はゆうかの彼氏さんの誕生日プレゼントを買いに来たのだ。なにを買えばいいのか、男の意見を聞きたいのだと。因みに、僕と買い物行ってたら彼氏に怒られない? って聞いたら、誠司は弟みたいなもんだからいいのよって返された。やっぱり中学生は相手にされないのかな……


ゆうか「ほら、着いたよ。疲れたし、アイス食べない? 奢ってあげるからさ。」


誠司「あぁ、そうだね。ありがとう。」


ゆうか「いこっか! 」


それから2人でショッピングモールに付いているマクドナルドでアイスを購入し、しばらく休憩した後に買い物が開始された。


ゆうか「ねぇねぇ! これすっごい可愛くない⁉︎ 」


ゆうかが指をさしたのは、キラキラとしたネックレスだった。


ゆうかは、ネックレスを手に取り、自分の胸元に当てると、なんだかしょんぼりとした表情で元にあった場所にそっとネックレスを戻した。


ゆうか「ごめんごめん。それじゃあ、行こっか! 」


無理に元気を取り戻したかのような表情で、ゆうかは男性向けのアクセサリーコーナーに向かって歩き出した。さっき手に取ったネックレスの値札をこっそり見ると、58000円と書いてあった。そりゃ買えないよな。


俺がもし高校生だったらバイトとかして買えたのかな。プレゼントあげたらゆうか、喜ぶだろうなぁ……なんてね。


一通りの買い物を済ませたあと、家に帰ることになった。結局、ゆうかは彼氏に46000円のネックレスを買ってあげることにしたそうだ。高校生にしては大分高い買い物のように思えた。それが普通なのかどうかすら、中学生の僕には分からなかった。ただ、自分の買いたいものは買わずに彼氏に高いものを買ってあげるゆうかの気持ちは、なんとなく分かる気がする。




それから2ヶ月後、ゆうかは彼氏と別れた。




学校の帰り道、まだ何も知らない僕は公園の自販機でジュースを買ってベンチで少し休んでいた。……休むふりをして、ゆうかが来ないかなぁってちょっと期待していた。ゆうかの通学ルート、ここを毎回通って帰ることを幼馴染の僕はよく知っていた。


しばらく休んでいると、ゆうかが見えた。僕は嬉しくなって声をかけようとするが、いつもの元気そうなゆうかじゃないことは、すぐにわかった。


誠司「ゆうか……」


近くを通ったゆうかに声をかけるが、無視されてしまった。全く気づいている様子がない。


誠司「ゆうか! 」


ゆうか「わぁ! びっくりした〜 もぅ、脅かしてんじゃないわよ! 」


ちょっと嬉しそうな表情でゆうかはそう言った。


誠司「 どうしたの? 大丈夫? 」


ゆうか「ううん、全然大丈夫。 ちょっと、、ね。」


誠司「そっか……何かあったらすぐにいいなよ。」


ゆうか「うん。。」


珍しくゆうかは下を向きながらそう言った。


ゆうか「私さ、」


誠司「うん。」


ゆうか「重いんだって。」


誠司「なに、体重の話?」


ゆうか「違うわよ! 愛情の話! 彼氏に重いって言われちゃって、今日別れたの! 」


少し声を荒げながらゆうかはそう言って立ち止まった。僕はそんなゆうかを見ると、声を出すことができなかった。


ゆうか「前の彼氏にも重い重いって言われて、今回もまた重いって…… 大体、男は皆軽いのよ! メールしつこく送信したくらいで重いとか言わないでよ! 高いネックレスあげただけで重いとか……言わないでよ。。」


その後、ゆうかが泣き止むまでそばにいることしか出来なかった。



しばらくして、少しスッキリとした顔つきになったゆうかは、下を向きながらゆっくりと話し出した。


ゆうか「あのさ、誠司なら……重くても受け止めてくれんのかな、、なんてね。 さ、帰ろっか。」


ゆうかは1人で歩き出した。段々と遠くなってゆくゆうかの背中。ゆうかが公園を出る直前で、僕の勇気がやっと湧いてきた。


誠司「あのさっ! 」


ゆうか「えっ、? 」


ゆうかは意外そうな表情でこちらを振り返った。


誠司「俺ならゆうかの全部、受け止めれるよ。俺、めっちゃゆうかの事、好き……だからさ。。」


ゆうか「 ……ありがとう。でも、、」


誠司「分かってる! だからさ、僕が高校生になったらもう一回告白させて! 弟じゃなくて、ちゃんと男として見てもらえるくらいになるから……」


ゆうか「うん……待ってるね。」


僕には分かるんだ。ゆうかは僕の事を本当に弟のようにしか見ていない。前の彼氏のこともまだ引きずっている。だから今、ここで告白したのは間違いだったかもしれない。でも、告白をせずにはいられなかった。こうすることによって、ちょっとでも僕の事を意識して欲しかったんだ。


ゆうか「ごめん、今日は先帰るね。ちょっと、自分でもわけわかんない。」


誠司「あ、うんわかった。気を付けてね」


ゆうか「うん。」


少し悲しそうな背中に、僕の心が締め付けられた。。。やっぱり今告白はまずかったかなぁぁ……はぁ、まぁいいや、帰ろ。


僕も帰ることにした。



その日の夜、ゆうかからメールが来た。そこには、


あんたはもう、弟じゃなくなったんだね。


と、だけ書いてあった。


僕はにやけながら、お風呂に入り、勉強した。とにかくにやけた。やっと、やっと男として認められた、そう確信した。





そして僕は、高校生になった。高校に入ってすぐにバイトを始め、貯めたお金を例のショッピングモールで使う。買うものはもう、決まっていた。



僕は右手にプレゼントを持って、彼女の家に向かった。


今日はゆうかの誕生日だ。



僕はゆうかの部屋に入った。



誠司「誕生日おめでとう、ゆうか。」



僕はゆうかにプレゼントを渡した。



ゆうか「ありがとう。」



僕はゆうかにキスをした。



終わり。

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