閑話:その頃、奈緒たちは。
ーーロゼルト皇国、西の草原。
「そっち行ったよ!」
露草の言葉に奈緒、いや《キサラ》は杖を構えた。
「ピューネ! 風を起こして!」
キサラの言葉に、ふわふわと宙に浮いていた風の精霊が力を発動する。
襲いかかろうとしていた草原狼は突風にあおられ、たたらを踏んだ。
そこへ、トオルのハンマーが重い一撃を与え。
「行きますよ! 【ファイヤーボール】!」
ユノがとどめとばかりに魔法を放った。
戦闘が無事に終了し、キサラ達は休憩をとっていた。
キサラは嬉しそうに自分の精霊、ピューネを見る。
「ピューネ、よくいうことをきいてくれたね、えらい!」
小さな丸い球の形をした精霊は、話を聞いているのかどうか、ただふよふよと宙を漂っている。
その姿を眺め、トオルは炭酸を飲みながら言った。
「最近はけっこう命令を聞くようになってきたな」
「そうなんですよ! 最初の頃は全然いうこときいてくれなかったのに、今はきいてくれるんです!」
嬉しい、とキサラは笑顔を浮かべる。
エレメンタラー《精霊使い》を目指すキサラがゲットした、初めての精霊ピューネ。
当初は全く命令を聞かず苦労したものである。
「やっぱり友好度が関係してるんじゃないかなと思うんですよね。一緒に戦闘したり、話しかけたりとか。なので、まだ皆さんには迷惑かけちゃうかも知れないですけど、これからも一緒させてくださいね」
キサラの言葉に露草がうなずく。
「そんなの当たり前だよー。ね、ユノ」
「はい、もちろん。……ですが」
ユノは頰を膨らませてキサラを見た。
「やっぱり敬語はやめにしませんか? わたしとキャラが被りますー」
「えー。それはちょっと、って言ってるじゃないですか。皆さんはお姉ちゃんがお世話になった方達なんだし、リアルではあたしが一番年下なんですから!」
キサラは笑って手を振ると、トオルへと目を向けた。
「そういえばトオルさんは高三なんですよね? 受験は大丈夫なんですか?」
「ん? ああ、エスカレーター式だからな。問題ない」
「そうなんですか。いいなあー」
「まあ、成績が悪いと外部受験を薦められるけどな」
「へえー」
他愛ない会話をしながら、のんびりと過ごし。
ふと、ユノが呟いた。
「リンちゃん、今頃どうしてるかなー」
とたんに、皆心配そうな顔になる。
「……あいつのことだから、また妙なことしてるかもな」
「ああー、わかる気がしますー」
「あはは。そうですね」
トオルやユノの言葉に頷き、だがキサラは笑って言った。
「でも、意外と楽しそうですよ。この間なんて、妖精に会ったって嬉しそうに言ってました」
「へえ、妖精に? さすがリンちゃん!」
「はい、後ですねー」
ここにはいない大切な仲間。
彼女のことを思って皆は会話を弾ませる。
再会までは、まだ遠い。




