第十一話
まばらに生えた木々。
林の手前側、都に近い場所で私達は狩りをしていた。
パーティーは四人。
私、リンとこの間の初心者講習で知り合った三人、アベルとカイ、そしてキャシーである。
「そっち回りこんで!」
「あと少し。油断せずにいこう」
ビッグラビットを相手に、私達は攻撃を仕掛ける。
ビッグラビット自体は問題なく倒せるのだけど、もし他のモンスターとリンクしたら大変なので、油断は出来ない。
「えいっ!」
私がラビットの喉笛を掻き切ると、それでHPバーがゼロになった。
皆が安堵と喜びの表情を浮かべる。
ちなみに、私のステータスは初期値に戻っていたけど、称号やクラスは引き継いでいた。
つまり、【首狩り暗殺者】のままである。
とほほ。
「よし、少し休憩しようか」
アベルの提案に賛成して、私達はモンスターのいない木陰に移動した。
思い思いにくつろぎ、狩りの手応えについて話し合う。
そこへ、ポケットからレヴィが頭を出した。
「ピィ!」
小さな羽を持った白蛇を見ても、三人は驚かない。
パーティーを組んで戦うことになった時に、紹介しておいたのだ。
何かを訴えるかのようなレヴィの姿に、キャシーが首をかしげる。
「レヴィちゃん、どうしたの?」
「お菓子が食べたいのかも。ほら、レヴィ。クッキーだよ」
「ピピィ!」
クッキーを一枚差し出すと、レヴィは嬉しそうに食べはじめた。
レヴィはけっこう甘党だ。
そういえば、レヴィの卵をくれたレーヴもクッキー食べてたっけ。
「ピ!」
ポリポリ、と美味しそうに食べていたレヴィが、突然クッキーごとポケットに隠れた。
おや? と思う間もなく、私達もそれに気づく。
都の方から、三人の冒険者がやってきた。
「ロクス。久しぶりだな」
知り合いらしく、アベルが片手を上げて笑みを浮かべる。
「ああ」
ロクス、と呼ばれたのは大剣を背負った剣士だった。
彼は素っ気なくうなずくと、そのまま仲間と共に林へと向かう。
おい、とアベルはその背に声をかけた。
「知ってるだろうが、林の向こうへは行くなよ?」
「わかってる」
心配しての言葉だっただろうけど、ロクスは振り向きもせず歩いていった。
「大丈夫かな」
「放っておけばいいじゃない。いっつもつんけんしてるんだから!」
キャシーは頬を膨らませ、私に片手を差し出した。
「わたしにも一枚ちょうだい!」
クッキーをあげると、怒りながら美味しそうに食べている。
器用だなあ。
「それにしても、林の向こう側に何があるのか、まだわからないのかな」
弓の手入れをしながらカイが疑問を口にすると、皆が考え込んだ。
あの初心者講習から数日が経っている。
そろそろギルドも本格的に調べると思うんだけど……。
話をすると影、というのか。
そこに現れたのは、なんと初心者講習で引率してくれていたガランドさんとポールさんだった。
他に二人の男性を連れている。
「あ! ガランドさん、お久しぶりです!」
アベルが立ち上がって挨拶をすると、彼等はこちらにやってきた。
「よう。頑張っているか? 林の向こうへは行ってねえだろうな?」
「はい。注意してます」
「ならいい。今から林の向こう側の調査を行う。何があるかわからんからな。お前たちはもう都に戻った方がいい」
「そうですか……。わかり」
ました、と続くはずだったアベルの言葉は、突然響いた悲鳴に掻き消された。
「なんだ!?」
「もしかしてーーロクスのやつ!?」
悲鳴は、林の向こう側から聞こえてきたようだった。
私達はとっさに駆け出していた。
「あ、おい!待て!」
私達を追うように、ガランドさん達も走り出す。
そうして林の向こう側にやってきた私達は、驚きに足を止めた。
林の向こう側は、岩がごろごろと転がっている開けた場所だ。
そこに、見慣れないモンスターがいた。
ロクス達三人が必死に戦っている相手、それは巨大なヤドカリのようなモンスターだった。
「やはり、岩石ヤドカリか……!」
その姿を目にしたガランドさんは、顔をしかめた。
「岩に擬態して姿を隠す、Bランクのモンスターだ。あいつらには荷が重い」
「助けないと……!」
ガランドさんの言葉にアベルが焦る。
それを制して、ガランドさんは私とポールさんに言った。
「リン、ポール。なんとかあいつの注意を引いてくれないか? その間にロクス達を救出する」
私はポールさんと顔を見合わせ、頷いた。
「やってみます!」
ーーさあ、回避盾の出番だ。頑張るぞ!




