プロローグ
風が涼しくなってきた九月のある日、新作VRMMORPG《World》が正式にサービス開始となった。
《World》とは、従来のRPGとは異なる行動ありきのオンラインゲームである。プレイヤーはゲーム中の行動によってスキルや称号を得て、クラス(職業)に就く。
そんな一風変わったシステムが話題になり、今秋の目玉ともいえるゲームになっている。それが《World》だ。
正式サービス開始の日、私はいそいそとヘッドギアタイプのVR機器を頭に装着し、ベッドに横になっていた。
「あー、なんだか緊張するな。皆、元気かなあ」
サービス開始の時間まで、あと数分。私は自然と緩む頬を手で押さえながら、数ヶ月前の事を思い出す。
私、神月理央は、人見知りが酷くてゲームは好きだけどオンラインはプレイした事がなかった。そんな私が《World》のβテスターに選ばれて、一ヶ月半の間ゲームをプレイしたのが、今年の夏休みの話である。
普段はアクションゲームばっかりやっている私は、どう動けばいいかもよくわからず、右往左往しながらゲームを進めた。手探りしながらのプレイで失敗もしたけど、楽しかった。
それはきっと、一人じゃなかったからだ。
《World》で知り合った友人達がいてくれたから、死に戻りしても笑っていられた。最後まで楽しくプレイ出来た。
人見知りの私が、こうしてもう一度オンラインゲームをプレイしようとしているのも、皆のおかげだと思う。
そんな皆と久し振りに会えるのだから、緊張したりにまついたり忙しくても仕方ないよね。
――それに、と私は視線を横の壁に向ける。隣は私の二つ下の妹、奈緒の部屋だ。
奈緒も今頃は私と同じようにスタンバイしている筈だ。
「今回は奈緒も一緒だしね」
きっと、また楽しく遊べる。
そう考えた時、セットしておいたアラームが鳴りだした。サービス開始の時間だ。
私は時計のアラームを止めて、VR機器の電源を入れた。
さあ、正式版《World》のゲームスタートだ。
とうとう初めてのオンラインの続編をスタートしてしまいました(汗
見切り発車なので更新は超のんびりになるかと思います。
気長に楽しんでいただけると幸いです。