日本本土防衛戦 第8章 激戦につぐ激戦
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
ソ連軍による北海道への大規模強襲上陸が発生してから2日後。
南東諸島では、大日本帝国海軍の哨戒網をくぐり抜けたイギリス軍、オランダ軍、インド帝国軍等の連合軍は空母、戦艦、巡洋艦、駆逐艦等の戦闘艦隊と20万人の正規陸軍部隊とイギリスとオランダの植民地内の東南アジア人で編成した非正規軍(義勇軍扱い)が、南西諸島に属する諸島で先島諸島と沖ノ鳥島の中間海域に位置する南東諸島幸島(現代の日本地図には存在しない諸島)に強襲上陸した。
幸島は対馬を一回り大きくした島で島の地形もあまり変わらない、幸島は上幸島、中幸島、下幸島で幸島と呼称し、大きさは対馬よりも一回り大きい。
イギリス空軍とアメリカ陸軍航空軍による日本本土空襲、ソ連軍の陸上部隊、海上部隊、航空部隊による北海道への強襲上陸、イギリス軍、オランダ軍、インド帝国軍等の連合軍による南東諸島幸島への強襲上陸。
この3つは、アメリカ、ソ連、イギリス、オランダが連携した同時多発的軍事侵攻だった。
大日本帝国陸海軍と航空予備軍は、その他の準軍事組織と合同軍事会議を開き、この事態にどのように対応するか協議した。
舞鶴軍港でSM-2の補給を完了したイージス護衛艦[みょうこう]と、ミサイル駆逐艦[ハリー・ネイサン]は補給終了後、ただちに戦艦[武蔵]、フリゲート艦[クレセント]、[吹雪]型汎用駆逐艦3隻と、新たに編成に組み込まれた[緋桜]型防空駆逐艦1隻と[疾風]型艦隊哨戒型駆逐艦1隻の、計9隻の艦隊で舞鶴を緊急出港した。
目的は、ソビエト社会主義共和国連邦ウラジオストクの軍事施設への、戦艦[武蔵]による艦砲射撃と[ハリー・ネイサン]のVLSに搭載されているRGM-109E[タクティカル・トマホーク]によるピンポイント攻撃である。
その後はただちに針路を変更し、北海道侵攻軍の増援部隊3万人を乗せた輸送船団と大量の補給物資を満載した輸送船団の撃滅も任務である。
[みょうこう]が戦艦[武蔵]の先導に位置した状態で、戦艦[武蔵]を基幹とする艦隊の前衛に艦隊哨戒型駆逐艦が艦隊の哨戒活動を行う。
[みょうこう]艦長の箕田は、[ハリー・ネイサン]から差し向けられた統合多用途艦載ヘリコプターMH-60Rに乗り込み、戦艦[武蔵]の後部甲板に着艦した(この時代では自衛隊や新世界連合軍のヘリコプターが発着艦できるように再設計が行われた)。
ただし、着艦後はただちに発艦する事になっている。
箕田が随行員と共に戦艦[武蔵]の甲板に足をつけると、少尉候補生1名が出迎えた。
戦艦[武蔵]の司令長官室に案内されると[ハリー・ネイサン]の艦長であるロニー・エイミス中佐や[クレセント]の艦長もいた。
司令長官室の主は戦艦[武蔵]を基幹とする混成艦隊の第1遊撃部隊司令官の栗山有元少将だ。
戦艦[武蔵]艦長の有馬も同席している。
「かけてくれたまえ」
栗山は口髭を蓄え、50代後半なのに、とてもそんな感じを感じさせない風貌だ。
「失礼します」
箕田は10度の敬礼をした。
ちなみに彼らの服装は制服では無く、いつ戦闘になってもいいように紺色の作業服、デジタル迷彩服、戦闘服姿だ。
箕田と随行員である航海長の品森が席に腰掛けた。
その時、司令官室のドアがノックされ、水兵たちが入ってきた。
「夜食の時間帯だから、貴官たちもどうぞ。[みょうこう]の艦長と航海長は知っているだろうが、[武蔵]の主計要員たちが腕を振るって作った汁粉だ」
水兵たちは、汁粉が入ったお椀を箕田たちの前に置く。
大日本帝国海軍の艦艇の食事は1日4食であった。
特に海軍の夜食は、1日の疲れを取るためと消化がいいものが出された。
汁粉は、その代表的なものだ。
特に海軍の艦艇要員では、汁粉はかなりの人気があった。
「いただきます」
箕田がそう言って、汁粉に手をつける。
新世界連合軍連合海軍艦隊総軍から派遣された駆逐艦とフリゲート艦の艦長と随行員も汁粉に手をつける。
アメリカ人やカナダ人が箸を普通に器用に使いこなす光景を見て、水兵たちが驚いた顔をした。
彼らの一般的な知識として、西洋人は箸が使えないというイメージがあるからだ。
80年後の未来では、アメリカだろうがヨーロッパ諸国だろうが、日本料理や中華料理の専門店が多くあり、その店では基本、箸を使用する。
[ガトー]級潜水艦が潜望鏡深度まで浮上し、戦艦1隻を基幹とした10隻未満の小艦隊を発見した。
[ガトー]級潜水艦は、ただちにソ連の極東方面に基地を置くアメリカ陸海軍の航空基地に暗号通信を打電した。
『[大和]型戦艦1隻以下、8隻の小艦隊がウラジオストクに向かっている。艦隊速力18ノット、ゴースト・フリートの巡洋艦と駆逐艦らしき艦影も確認』
極東方面のソ連軍基地内で、アメリカ陸軍航空軍と海軍航空隊が間借りした航空基地から海軍航空隊の攻撃部隊が出撃した。
海軍航空隊の戦闘機、雷撃機、爆撃機はすべて陸上基地から出撃するのであれば、航続距離が通常の倍以上は飛行可能な機に急遽改造された機だ。
戦闘機60機、爆撃機80機、雷撃機140機の280機という攻撃隊が、戦艦[武蔵]を旗艦とする第1遊撃部隊に航空攻撃を開始する。
もちろん、戦闘状況の調査のために東京空襲に出撃したB-29の偵察仕様の大型偵察機が高々度から、偵察を行う。
海軍航空部隊の指揮官は、攻撃部隊の搭乗員たちに訓示を行った。
「全軍ただちに攻撃せよ。勝つために、ただ攻撃せよ。ゴースト・フリートの軍艦を必ず沈めよ。武運を祈る」
280機の大攻撃隊は、[みょうこう]の対空レーダーが当然ながら補足した。
「アメリカ海軍の攻撃機に、ここまでの航続距離がある機は無いはずだ」
[みょうこう]のCICで、砲術士がつぶやいた。
「アメリカはハワイが奪取され、さらに本土を空爆された。彼らも必死に知恵を絞り、我々を倒す術を考えてくる。いかなる手を使っても敵を倒す。彼らからすればどんな事実や真実があろうと、我々は、アメリカ合衆国の平和を脅かす外敵であり、侵略者でしか無い。それを変えるのは、すべて戦後だ」
CICでヘッドセットをつけた箕田が艦長席に座り、告げた。
「勝てば官軍、負ければ賊軍ですね」
副長兼船務長の植松武満2等海佐が言った。
植松は、箕田より10歳年上の56歳であり、自衛隊の規定では、定年退職しているが、タイムスリップ前に[みょうこう]の副長だった、2等海佐が辞退したため、箕田の希望と本人の意思で、[みょうこう]の副長に任命された。
彼は定年退職の年齢だが、自衛隊法の改正で定年後も勤務していた(ただし、艦艇勤務では無く、陸上勤務で、それも補給処の補給管理の事務という、彼の経歴や経験からすれば誰も自分の耳を疑うような部署だった)。
「ええ。それが戦争です」
箕田が、うなずいた。
基本的に、彼の植松への接し方は公私共に敬語であり、命令口調では絶対に話さない。
「いつの時代もどこの国も、その心理だけは変わらない。どんなに正義を唱えても、負ければその正義は悪にされる。そして、とんでもない悪行を行っていても勝てばそれが正義になる・・・」
植松は半世紀生きた人生のベテラン者として、哲学をつぶやいた。
「艦長。敵攻撃編隊の数は、およそ300機です。この状況下で300機を投入できると言う事はさらに300機・・・いえ、600機は予備攻撃隊として待機している可能性があります。戦艦[武蔵]の艦砲射撃によるウラジオストクへの軍事施設攻撃は中止し、本海域からの[ハリー・ネイサン]によるタクティカル・トマホーク攻撃を具申します」
砲雷長である3等海佐が、作戦の変更を具申した。
「ふむ」
箕田は腕を組み、第1遊撃部隊に接近する大攻撃編隊の光点を対空レーダーの画面を見ながら考えた。
砲雷長の言う通り、巡航ミサイルであるタクティカル・トマホークなら、すでに攻撃圏内であり、ウラジオストクの軍事施設破壊は十分に可能だ。だが、国民等への大衆に対するインパクトには欠ける。
想像を絶する超兵器を使用しても、軍隊や政府機関に対するインパクトはかなり強いが、民衆レベルで考えるとどうだろう。
まず、政府も軍部も超兵器の存在は隠蔽し、公表しない。
単に、自分たちの想像を超える戦法で攻撃された、と言うだろう。
その際に、自分たちだけの被害状況を発表し、敵側の事については何も伝えない。
こうなれば、攻撃を受けた民衆側は、敵が虐殺行動に出たと考え、ますます主戦派が力を増す。
戦争で最後に勝敗をわけるのは軍人でも無く、兵器でも無い。
民衆の意思だ。
トマホーク・ミサイル等の長射程の対地対艦巡航ミサイルは、戦略兵器に該当するが、これは自分たちの時代の話。
この時代では単に超兵器でしか無く、それは戦術兵器でしか無い。
戦術兵器が戦略兵器として認識されるのは、民衆レベルにその兵器が広まってからだ。
巡航ミサイルの代表的存在であるトマホーク・ミサイルが、戦略兵器として民衆に広く知られたのは湾岸戦争時である。
あれは、新戦略としてトマホークの優位性を全世界に伝えるため報道機関を最大限に使用した。
この時、報道機関が反戦的主張やその兵器に対する否定的意見を言ってくれれば、さらにその兵器の優位性が証明される。
意外な事だが、反戦活動家や人権擁護家が、メディアを通じて否定的発言をすればするほど、その兵器の優位性を一般市民が認識するのは、なぜなのか・・・
「砲雷長。ここが我々の時代なら、それも可能だが、この時代ではトマホーク・ミサイルの威力は単に戦術レベルの威力しか発揮しない。戦争の勝敗を別けるのは戦術では無く、戦略だ。99回の戦術的勝利をしても1回の戦略的勝利の前にはまったくの無意味だ。1回でも敵に戦略的勝利を許してしまえばその時点で我々は敗北する。ここは作戦計画通り、戦艦[武蔵]の主砲射程圏内まで接近し、艦砲射撃でウラジオストクの軍事施設に攻撃する。その後、トマホーク・ミサイルを撃ち込む」
箕田は、砲雷長の具申を却下した。
「艦長。本艦と[ハリー・ネイサン]のスタンダード・ミサイルの弾数を考えましても、ここでの大量消費は避けるべきです。戦艦[大和]は対空戦において、護衛艦の護衛が無くても防空駆逐艦や汎用駆逐艦の対空兵器だけで100機の攻撃隊を撃破しました。戦艦[武蔵]は[大和]よりも遅く就役しました。その分[大和]よりも性能の高い防空兵装を搭載しています。ここは[武蔵]と護衛の汎用駆逐艦と防空駆逐艦を主力とした対空戦を行い。本艦と[ハリー・ネイサン]はその支援、[クレセント]は全艦の防空支援に特化させてはいかがでしょうか?」
植松が具申する。
「そうだな。しかし、戦場では何が起きるかわからない。念には念を入れるべきだ」
箕田は、通信士に顔を向けた。
「通信士。回線を繋げ」
「はっ!」
戦艦[武蔵]では、対空戦闘命令が出た。
対空戦闘命令が出ると、戦艦[武蔵]の側面に設置されている対空、対水上射撃可能な一二.七糎二連装速射砲10門が、第2艦橋の戦闘指揮所から射撃管制と射撃指示を直接受ける通信回線が繋がる。
各速射砲員は、砲塔内ですべてのシステムが起動しているか、不具合がないか、目で確認をする。
左右速射砲管制指揮所でも戦闘指揮所と各速射砲が確実に繋がっているかの確認を指揮所にいる管制要員が確認する。
同時に、戦艦[武蔵]の主力対空兵器である一式三五粍対空機関砲14門も、戦闘指揮所と砲塔内にいる操作要員たちがそれぞれ確認する。
戦闘指揮所から直接射撃操作等を行う、対砲弾対爆弾近接迎撃機関砲4門も起動する。
第1対空見張所では、対空見張員たちが固定双眼鏡を覗き、対空警戒を行う。
対空見張長の少佐は、随行員3人と共に空を警戒する。
第1対空見張所は戦闘指揮所と直通通信回線が設置され、双方がリアルタイムで報告できる。
戦艦[武蔵]の戦闘指揮所では、艦長の有馬が指揮所要員たちからの報告を聞いた。
「敵攻撃編隊が、主砲三式弾弐型の射程圏内に入りました!」
対空索敵電探要員が報告する。
「主砲三式弾弐型!砲撃始め!」
有馬の号令で、主砲操作を担当する1番主砲術士と2番主砲術士がそれぞれの操作要員たちの諸元入力を完了した事を確認し、発射ボタンを押す。
2門の3連装四六糎主砲が旋回し、装填された三式弾弐型が発射された。
すさまじい砲撃音と衝撃が艦内を揺らす。
戦艦[武蔵]右舷一式三五粍対空機関砲2番砲射撃員である神邑勝士上等水兵は射撃席に座り、速射砲管制指揮所から、各対空砲自由射撃の命令を待っていた。
各対空砲自由射撃命令が出ると、この対空砲の引き金を引くのは自分であるからだ。
それまでの自分の仕事は、戦闘指揮所又は速射砲管制指揮所からの射撃指示をこの対空砲がきちんと受けたかどうか、射撃は正常に作動しているか等の確認作業だ。
対空機関砲に配置される人員は、射撃指揮官であり班長でもある二等兵曹と、連絡士兼補給士である三等兵曹の2人の下士官の下に射撃電探員兼射撃操作員、射撃員、対空機関砲整備員、弾薬補給員(こちらは2名)の兵卒たちが行う。
1つの砲に7人が所属する。
艦首の方向から、主砲の砲撃音と衝撃波を感じた。
砲塔内は完璧な防音と防弾設備があり、まったく、外の音は聞こえないが、砲撃音はやはり聞こえる。
主砲の砲撃が終わると一二.七糎速射砲が戦闘指揮所から射撃管制下で対空射撃を開始した。
確実な電探連動と電算機による計算で、速射砲の対空砲弾は艦隊に接近するアメリカ海軍航空隊の大攻撃隊の雷撃機や爆撃機を撃墜していく。
「班長。対空機関砲の出番は無いのですか?」
神邑が尋ねた。
「まだ、出ていない。何たって、護衛の防空艦からの対空砲火と本艦の対空砲火は極めて正確だからな。ヤンキーどもも馬鹿では無い。固まって接近すれば、やられるぐらいはわかる。恐らく、俺たちの考えない事を考えて攻撃してくるぞ」
「予想もつかない攻撃ですか?」
「その通りだ。俺の同期が[大和]に乗艦して、アメリカ軍機100機の来襲を受けたが、かなりの激戦だったそうだ」
その時、戦闘指揮所から対空機関砲射撃開始、という指示が飛び込んだ。
戦闘指揮所からの指示の下で対空機関砲が旋回し、自動的に射撃が開始された。
同対空機関砲の射程距離は六〇〇〇メートルであり、速射砲の半分の射程距離だが、電探と連動しているから、六〇〇〇メートル先の敵機を撃墜できる。
神邑たちは各対空砲自由射撃の命令が出るまで、自分の目ですべての電子機器が正常に作動しているかを確認する。
アメリカ海軍航空隊ソビエト連邦社会主義共和国極東派遣航空団第112戦闘飛行隊に所属するブリーズ大尉は機乗のF4U[コルセア]から、雷撃部隊と爆撃部隊が次々と対空砲の攻撃で撃墜されていく光景を眺めていた。
司令部から伝えられた、どこまでも追撃してくる新型のロケット弾は、発射されていない。
ほとんど主砲と対空機銃の対空射撃で、次々と撃墜されている。
特に日本帝国海軍の駆逐艦の防空火器は恐ろしく、あれほどの防空火力なら新型ロケット弾を使う必要は無いだろう。
「くそっ!ジャップめ!このままでは、すまさんぞ!」
アメリカ陸軍航空軍は、多くの犠牲を払い日本の北海道と東北地方の軍事施設の爆撃を成功させているし、海兵隊も多くの犠牲を出しながら、必要な情報を収集した。
つまり、海軍はアメリカ合衆国正規軍の中で、まったく対日戦で手柄を立てていない。
これでは、海軍の面子が丸つぶれだ。
「全攻撃部隊へ!全機撤退せよ!繰り返す、全機撤退せよ!」
司令部からの撤退命令が、司令部から届く。
撤退命令が出てから、次々と残存する攻撃部隊が攻撃を中止し、撤退のコースをとる。
「リーダー。このままでは、我が海軍の面子が丸つぶれです!ここは我々だけで総攻撃をかけましょう!」
ブリーズが編隊長を務める5機編隊の3番機から無線が入った。
この機には追加の固定燃料と増槽で大量の燃料と100キロ爆弾が2つ搭載している。
最大速力で突撃すれば、ゴースト・フリートの巡洋艦に少しぐらいのダメージを与えられる。
「よし!編隊長より、各機へ、撤退する攻撃機の下をすり抜けながら、巡洋艦に突撃する!」
ブリーズが無線機に叫ぶと、そのまま操縦桿を押して高度を下げた。
[みょうこう]のCICでは、第1遊撃部隊から距離をとる敵航空攻撃部隊の光点を確認していた。
戦艦[武蔵]以下全艦が25ノットの速力を出して、対空戦闘を行った。
この間、[みょうこう]、[ハリー・ネイサン]、[クレセント]は、主砲砲撃のみで対空戦闘を行った。
「敵雷撃部隊80機撃墜を確認。敵爆撃部隊30機を撃墜しました。残存機は退却する針路を取っています」
CICの対空レーダー員が報告する。
「ん?」
箕田は対空レーダーの画面で、おかしな光点を見つけた。
5機の航空機が、どさくさに紛れて本艦に接近している。
「どうやら、敵もこのままでは終わらせるつもりは無いようだ」
箕田がつぶやいた。
「対空戦闘!主砲射撃用意!」
砲雷長が叫ぶ。
「砲雷長。主砲対空砲弾の残弾がありません!現在、装填中です!」
砲術員が報告する。
「こんな時に!」
砲雷長が舌打ちをした。
イージスシステムを搭載した最新鋭の防空艦であるイージス護衛艦も、決して万能では無い。
艦載砲であるオート・メラーラ製の127ミリ砲は即応弾マガジン・ドラムに22発の砲弾を搭載できる。
これが3つあり、それぞれ異なる砲弾を装填できる。
今回の出動では対空戦闘が予想されているため、対空砲弾が即応弾マガジン・ドラム2つ合わせて44発の対空砲弾が搭載されていた。
しかし、あれだけの攻撃機が本艦に来襲するとは考えなかった。
狙うのは戦艦[武蔵]だろう、と予想していたからだ。
だが、敵も同じ人間だ。
どの艦を攻撃するか、それは敵以外には誰にもわからない。
「CIWS迎撃始め!敵機を撃墜しろ!」
箕田が叫ぶ。
[みょうこう]は、主砲や対空ミサイルだけを搭載している訳では無い。
前部と後部に、対艦ミサイルから自艦を守る、最後の防空近接火器である20ミリ高性能機関砲が搭載されている。
「CIWS。目標に向けて、撃ち方始め!」
射撃員が、発射ボタンを押す。
[みょうこう]の前部に装備されているCIWSが急速旋回し、砲口を本艦に接近する5機のF4Uに向ける。
機の速力と、位置等でCIWS自身が優先迎撃目標を査定し、迎撃を開始する。
CIWSの6砲身が高速回転し、20ミリ対空砲弾が発射される。
先導機を粉々に粉砕し、すぐに後続機に砲弾を撃ち込む。
3機目の撃墜にかかった時、4機目のF4Uが高度を上げて、12.7ミリ機銃による機銃掃射を行う。
3機目が火だるまになると同時に、機銃掃射したF4Uの機銃弾が前部CIWSに被弾した。
「ダメコン!」
箕田が、応急指揮所に緊急連絡する。
「前部CIWSが機銃弾の直撃により、故障!」
「敵2機が、本艦に急速接近!」
「艦長!回避行動を!」
CICから次々と、報告や具申が飛び交う。
「機関後進全速!」
箕田が命令すると、艦橋では品森がすぐに命令し、操舵手が前進から後進に切り替え、後進全速に操作した。
突然、[みょうこう]が急停止し、急停止の反動が乗員たちに襲う。
その後、艦が後退する。
恐らくF4Uのパイロットは、右か左のどちらかに舵を切ると思っていたのか、突然の後退に驚き、攻撃のチャンスを逃し、そのまま[みょうこう]を通り越した。
その後、[みょうこう]が死角になって、援護ができなかった[ハリー・ネイサン]が主砲を発射し、撃墜する。
ただし、5機目のパイロットは、こういう不測の事態に臨機応変に対応できるのか、F4Uを操縦し、[みょうこう]の艦首に体当たりした。
艦首の主砲より前の箇所で、炎が上がる。
F4Uには追加の固定燃料と増槽、100キロ爆弾が2発あるため、爆発はそれなりに大きかった。
「艦首に、火災発生!」
「消火班は、火災の消火を急げ!」
植松が、すぐに指示を出す。
「ダメコン!被害状況を報告せよ!」
「はっ!被害は極めて軽微で、今後の戦闘航海に支障はありません!」
箕田が、応急指揮所に被害状況を確認すると、応急指揮所からそう報告が返ってきた。
日本本土防衛戦 第8章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回の投稿は8月22日を予定しています。




