日本本土防衛戦 第6章 空中戦 ラプター対スーパーフォートレス
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
破軍集団航空自衛隊航空総隊第1高射群第4高射隊は、埼玉県某地域の駐屯ポイントに展開していた。
第4高射隊指揮所では、同隊隊長の3等空佐が灰色の作業服を着て、各隊員からの報告を聞いた。
「菊水総隊海上自衛隊第5護衛隊群のイージス艦[みょうこう]と、新世界連合軍連合海軍艦隊総軍に所属する[ハリー・ネイサン]がSM-2を連続発射して、B-29の編隊を3割撃墜したが、150機以上の戦略爆撃機が東京に接近中だ!」
3佐が各隊員たちに、状況を伝えた。
「群司令より、命令が届きました。防衛計画A号を発動し、計画通りに撃墜せよ。です」
通信担当の3等空尉が報告した。
「各地域の、住民の避難状況は?」
3佐が問うと、別の通信員が報告した。
「防衛行動地区並びに防衛行動範囲内の住民は、防空壕に避難したそうです」
その報告に3佐は、うなずいた。
「PAC2発射準備。次弾装填の準備もすぐにできるよう整えろ!」
「「「はい!」」」
大日本帝国本土防衛を任されている陸海空自衛隊は、どこに配備されていても完璧な防衛態勢ができるように通信態勢は、完璧に整えられている。
通信系統は3つ用意されて、たとえ、1つが駄目になっても2つが通信可能の態勢をとっている。
大日本帝国帝都防衛は、破軍集団の陸海空自衛隊、大日本帝国航空予備軍帝都防空軍が担当する。
「さて、帝都防空軍の初陣だな・・・しかし、彼らの出番があるのか?」
3佐は首を傾げた。
破軍集団航空自衛隊の主要航空基地である入間航空基地には、第1航空総隊第1航空団に所属する第5世代ジェット戦闘機が2個飛行隊(40機)と領空侵犯や首都圏全域の空の安全を守る1個飛行隊がある。
迎撃に出撃するのは第5世代ジェット戦闘機を保有する2個飛行隊だが、それだけでは無い。
新世界連合軍の軍事介入で決定されたため、新世界連合軍連合空軍の航空基地として、さらに整備と基地の拡大工事が行われた、厚木航空基地からも迎撃の戦闘機が出撃する。
つまり、航空予備軍帝都防空軍の新型戦闘機の出番があるかについては、疑問視である。
彼らからすれば、出番を用意しろと抗議するだろうが、残念ながら現代防空戦術が物量戦を主力とする戦略爆撃機にどのくらいの効果があるのか、実戦で知りたいのは、未来の軍隊ならどこも同じだ。
そして、戦後創設された航空自衛隊に、戦略爆撃機の撃墜方法を教授したのは、他の誰でもない。
ルメイ少将である。
その恩返しと言うには乱暴かもしれないが、古代ローマの名将スキピオがカルタゴの名将ハンニバルの生み出した戦術を、駆使して勝利を収めた第2次ポエニ戦争のザマの会戦のように、弟子は師の優秀さを後世に伝える義務がある。
師の生み出した戦術が、いかに凄いかを実証するには、戦闘で結果を出す事だ。
3佐は、夜の空を見上げながら、そう思った。
それをルメイ本人は、知る由もなかったが。
大日本帝国陸軍と航空予備軍の飛行場である立川飛行場では、新型噴進式戦闘機は全機出撃待機命令が出ている。
噴進式戦闘機は、おなじみの未来の日本、アメリカ等からの技術提供で開発されたジェット戦闘機である。
ベースにしたのは航空自衛隊が1958年から運用を開始した、F-86D[セイバー]である。
オリジナルとは異なり、さまざまな改良が行われている。
まず、操縦者の負担を可能な限り減らすため、レーダーシステムは搭載せず、レーダーによる索敵は、別の機が担当する事にした。
電子機器はあくまでも操縦者が操縦時に負担軽減を目的とした機器を搭載し、後は通信設備の向上を図った。
しかし、この時代の大日本帝国の航空産業の技術力には限界があり、いくら、未来からの援助があっても不可能なものは不可能だった。
最高速度は、880キロで巡航速度620キロ。
航続距離は巡航速度で1600キロ(増槽搭載時)。
武装は、大型の戦略爆撃機を撃墜可能な30ミリ航空機関砲と無誘導空対空噴進弾16連装発射機を搭載している。
この同機は、あくまでも大型の戦略爆撃機を撃墜するために、開発された機であるからだ。
一番の問題は、1機の価格だ。
新型噴進式戦闘機[狩人]は大変高価であり、この予算があれば新型レシプロ戦闘機3機種分の研究ができるとも指摘され、[狩人]20機が製造されただけだ。
そのうちの6機は陸海軍と航空予備軍共同航空兵器研究本部に引き渡され、14機が帝都防空軍に引き渡された。
しかし、2機が飛行訓練中と迎撃訓練中に墜落事故を起こし、[狩人]2機と優秀な操縦士2名を失った。
破軍集団千代田駐屯地(海自と空自は千代田基地)の破軍集団司令部の中央指揮所に、迷彩服3型の襟に4つの桜を刺繍した男が、中央指揮所の司令官席に腰掛け、正面に設置されている大型の液晶モニターに視線を向けていた。
彼は、破軍集団司令官の國仙正春陸将(幕僚長たる陸将)である。
「司令官。航空総隊司令官の信田嘉邦空将より、迎撃出動の要請です」
國仙の腹心であり、時としては彼の耳であり目でもある存在、破軍集団司令官付高級副官兼特別監察監の石垣達彦1等陸佐が、隣の席で報告した。
國仙が座る席の右側が石垣の席で、左側が破軍集団幕僚長の席だ。
石垣1佐は、弟の石垣達也2等海尉よりも13歳年上の、かなり年の離れた兄だが、30代後半で1等陸佐1等という陸上自衛隊では、かなり珍しいスピード出世した幹部自衛官だ。
1等陸佐1等は、諸外国陸軍では准将に相当する階級だ。
「統合大臣からの、迎撃命令を確認しました」
破軍集団司令部通信隊の、幹部自衛官が報告した。
「石垣。出撃を許可する」
國仙の言葉に石垣1佐は受話器を耳に当て、「出撃を許可する」と言った。
「お花畑脳司令官のお気に入りの、お花畑脳2尉の思惑は、完全に外れたな」
國仙はメイン・モニターに表示されている日本地図と近海、近空には菊水総隊海上自衛隊第5護衛隊群と、新世界連合軍連合海軍艦隊総軍に所属するイージス艦からの迎撃をすり抜け、200機未満に減らされた、戦略爆撃機団の光点を見ながら、つぶやいた。
お花畑脳司令官とは、菊水総隊司令官の山縣幹也海将(幕僚長たる海将)の事だ。
有事にはあまり向かない将である事は、國仙に従う自衛官なら末端の士まで知っている事だ。
お花畑脳2尉は、石垣1佐の弟である石垣達也2等海尉の事だ。
「この知らせを受けた、馬鹿弟が驚く顔が浮かびます。まったく、何をどう思ったら、アメリカに打撃を与えて、日本本土空襲は無いと言い切れるのか、まったく理解できませんでした。アメリカの本当の底力は、やられたらそれを倍にして、そのまま返す。本当にアメリカに戦う力を失わせるには、アメリカの都市という都市、工場という工場をすべて焼き払っても、効果があるかどうかです」
簡単に説明すれば、山縣に従う自衛官は楽観主義者、國仙に従う自衛官は現実主義者であり、山縣派はアメリカ合衆国や、それ以外の連合国にも、ある程度の損害を与えれば、後は外交と対話でなんとかなると思っている。
一方の國仙派は、話し合いは、あくまでも敵を完膚なきまで叩き潰す大義名分を得る目的のために、話し合いを行い、その後は圧倒的な装備で圧倒する、と考えている。
しかし、最終目的はどちらも同じであり、単に過程が異なるだけだ。
破軍集団航空自衛隊入間航空基地のエプロンでは、並べられた第5世代ジェット戦闘機にパイロットたちが乗り込む。
航空総隊第1航空団第11戦闘飛行隊長の阿月剛実2等空佐は、第11戦闘飛行隊に配備されたアメリカから輸入された最新鋭ステルス戦闘機に乗り込んだ。
それはアメリカ空軍が200機程度で調達を終了した、F-22Aを性能や装備等をアメリカ空軍の軍事機密に触れないレベルに落とした輸出型である。
F-22は、アメリカ連邦議会の海外輸出禁止政策で、輸出型の開発は行われなかったが、すでにアメリカ空軍では、F-22[ラプター]の性能向上型であり、第5.5世代ジェット戦闘機に区分されるF-22D[スーパー・ラプター]が配備されている。
新世界連合軍連合空軍と連合防空軍は、偵察や防空のためにF-22Aを配備しているが、戦闘目的の場合はF-22Dである。
元の時代でアメリカ連邦議会は、輸出禁止政策を緩和し、条件付きで新航空戦術やステルス戦研究のために一部の同盟国に、F-22の輸出型を売却した。
その内の1つの国が、日本であった。
日本に輸出されたF-22は、アメリカの航空産業で日本仕様に改良された同機が生産された。
破軍集団航空自衛隊航空総隊第1航空団第11戦闘飛行隊の主力戦闘機として配備されたのが、F-22UJ[ラプター]である。
なぜ、F-22UJなのかというと、同機はアメリカと日本の戦闘機という象徴的存在にしたいからだ。
「エアー・ハンター1より、イルマ・コントロール。2番誘導路から3番滑走路に到着し、待機する」
阿月がフライトヘルメットのバイザーを下ろしながら、管制塔に言った。
「イルマ・コントロールより、エアー・ハンター1。離陸を許可する」
管制塔からの指示でエンジンの出力を上げて、F-22UJは滑走路を滑走し、短い滑走距離でF-22UJは空に浮き、そのまま上昇した。
F-22UJはオリジナルのF-22によりも性能、装備等で劣るが、F-35[ライトニングⅡ]Aタイプよりは、スペック上では上回っている。
[空の捕食者]の意味を持つエアー・ハンターが、その名の通りの活躍を見せるか、どうかは出撃したパイロットの腕にかかっている。
破軍集団航空自衛隊航空総隊司令部は、入間航空基地の敷地内にあり、基地司令部とは離れた場所に建てられている。
航空総隊司令部庁舎地下に航空指揮所があり、破軍集団陸海空自衛隊の、あらゆる情報や新世界連合軍から提供された情報がここに集中する。
航空指揮所では、破軍集団航空自衛隊の司令部要員だけでは無く、新世界連合軍連合空軍のスタッフもいる。
「首都東京に接近する戦略爆撃機団の情報は?」
航空指揮所防空指揮群要撃指揮隊司令の2等空佐が、巨大なモニターを見ながら、要撃管制を担当する幹部自衛官たちに聞いた。
「高度1万を飛行する大編隊は5機編成の小編隊に別れて、各編隊の間隔を空けています。高度6000を飛行する大編隊も4機編成の小編隊に別れて、同じく編隊間の間隔を空けています」
「護衛戦闘機は?」
「その周囲を固めるように展開しています」
要撃管制官からの報告に、2佐は顎を撫でる。
「護衛戦闘機は改良型のP-38[ライトニング]だ。こいつは燃料の増加により、航続距離を延ばした戦闘機だ」
「司令官。F-22UJ隊が作戦空域に到着しました」
幹部自衛官の報告に2佐は破軍集団航空総隊司令官である信田に振り向いた。
「司令官。迎撃命令を出してもいいですか?」
「許可する」
信田がうなずくと、2佐は命令を出した。
「第1航空団の全戦闘飛行隊へ、迎撃を許可する。武器使用は自由」
「全機攻撃許可が出た。AAM-4C(99式空対空誘導弾の改良型。Bタイプよりも性能と破壊力が向上した視界外射程誘導弾であり、射程距離もかなり延長された)、スタンバイ!」
飛行隊長の阿月は部下たちに指示すると、自身もディスプレイを操作した。
「一斉攻撃だ。ヤンキー野郎に一泡も二泡も吹かしてやるぞ!」
同飛行隊のムードメーカーであり、部隊の士気向上が極めてうまい阿月の腹心であり、彼のウィングマンを勤める仙澤孟1等空尉がいつもの軽い口調で通信機に呼びかける。
ピー!
コックピット内に目標をロックオンしたアラーム音が響く。
「行くぞ、FOX3!」
そう叫ぶと阿月は操縦桿にある誘導弾の、発射ボタンを押す。
下面兵器庫が解放され、中に収容されているAAM-4Cが発射される。下面兵器庫にはAAM―4Cなら4発搭載可能であり、それが18機から一斉に発射された。
18発のAAM-4Cがオレンジ色の閃光を発しながら、暗い夜空の中を飛翔する。
「全機周辺警戒を厳にしろ!上、下からのロケット弾に気をつけろ!少しでも白い尾を引く物体を見つけたら、知らせる前に機銃を撃ちまくれ!」
B-29群の指揮官であるダニー・ハミルトン准将は、日本海上空で正確無比のロケット弾攻撃を受けてかなりの損害を出した状況下でも冷静に指揮をとった。
「スペース・アグレッサーは3重の高度差でも正確に1万メートルを飛行する我々を攻撃した。どうやら、敵には強力なレーダーがあるのだな。頼むぞ。俺たちの死を無駄にしないでくれ」
ハミルトンはそう言って、スペース・アグレッサーの防空探知能力と迎撃能力を正確に把握したB-29を偵察機仕様に改造した偵察機に言った。
その偵察機のうちの半数はソ連に引き返し、その情報を元に、対スペース・アグレッサー対策の作戦を、軍上層部が考える。
残りの半数はさらに高く高度をとり、今度はスペース・アグレッサーの迎撃戦闘機の情報を可能な限り、収集する。
その時。
「准将閣下!前方にロケット弾の群れ!」
「何!」
「レーダー員!貴様は何をしていた!?」
「レーダーには、何も映っていません!」
ハミルトンの機内で、怒号が飛び交う。
イギリス海軍の戦艦部隊がスペース・アグレッサーの、ゴースト・フリートの巡洋艦と戦った時、その巡洋艦はイギリス海軍の最新鋭の水上レーダーでも、ほとんど探知できなかった。
つまり、戦闘機もロケットもレーダーに映らない物がある。
「まさにスペース・アグレッサーは、伊達では無い」
ハミルトンがつぶやくと、すべてのB-29が装備する機銃が火を噴いた。
弾幕を張って、ロケット弾を撃ち落とすために・・・
しかし、高速接近するロケット弾は弾幕をすり抜け、B-29の胴体に突撃する。
次々とB-29が火の塊にされる。
「ロケット弾だ!」
「撃ち落とせ!」
「うわあぁぁぁ!!」
悲鳴が飛び交い、1機また1機とB-29が火の塊にされる。
「通信士!B-17やP-38は、どうなっている!?」
ハミルトンが、通信士に叫ぶ。
「B-17もP-38も、スペース・アグレッサーの攻撃を受け、被害甚大です。その迎撃戦闘機は、とてつもなく速いだけでは無く、まったく、レーダーに映らないのです!」
B-17とP-38と戦っているのは、第1航空団第12飛行隊のF-35Jである。
「准将閣下!偵察機より、通信です!ここまで情報が収集できれば十分だ。後は、我々が無事に退却できるまで、ひたすら戦え!そして、その後はルメイ閣下の命令に従い、残存機は降伏せよ。です」
「言われなくてもわかっている!第一、この状況下でどうやって戦線を脱出しろと?残存機の8割が囮にならなくては、どうにもならないだろう!」
ハミルトンは、怒鳴った。
「閣下!」
副操縦席に座る大尉が叫んだ。
「む?」
大尉が指さす方向に、1機の戦闘機らしき物が見えた。
ハミルトンが今まで一度も見た事が無いジェット戦闘機だ。
恐ろしくでかく、恐ろしく旋回性能、運動性能は自分の常識を疑う物だった。
「ジャップはスペースマン(宇宙人)と手を組んだのでは無い。ゴット(神)を味方にした!」
ハミルトンは、大日本帝国陸海空軍の信じられない攻撃を受けて、日本の歴史や世界から見た日本について、研究した。
そして、日本は神に守られた国家であると思うようになった。
中国から圧倒的軍事力で侵略してきたモンゴル帝国軍を、日本は自然界の力を借りて撃退した(これは単に台風の時期に侵略軍が侵攻してきただけであるのだが)。
だから、彼は日本人は猿でも無く、人間でも無く、神の代理人では無いかと、とんでもない妄想をした。
そのジェット戦闘機の機首がこちらに向き、胴体の側面からロケット弾を発射した光景を見た。
そして、そのロケット弾が自分が操縦するB-29に、吸い込まれる様に着弾し、とてつもない衝撃が襲った。
それ以後のハミルトンの意識は、完全に消滅した。
日本本土防衛戦 第6章をお読みいただき、ありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。




