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日本本土防衛戦 第2章 新世界連合決議 テロ国家連合認定

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 マリアナ諸島グアム島。


 ニューワールド連合軍の上位組織であり、参加国の文民たちが集まった多国籍連合組織であるニューワールド連合の本部庁舎では、朝から厳戒態勢が敷かれていた。


 本部敷地内では、ニューワールド連合の下部組織である連合警察機構警備警察局に所属する警察官たちが警備服に身を包み、自動小銃から機関短銃又は機関拳銃を装備し、警備している。


 同時に警備犬の姿も見られる。


 本部敷地外では、加盟国の制服警察官たちが巡回、検問を行っている。


 これだけの警戒態勢を敷いているのは本日の午前10時から、ニューワールド連合最高評議会が開かれるからだ。


 ニューワールド連合最高評議会は、ニューワールド連合の主要機関の1つでもっとも大きな権限を保有し、最高意思決定機関でもある。


 評議会議長は、ニューワールド連合事務総長兼ニューワールド連合軍最高司令官であるグレン・フォード・ハンプソンである。


 評議会会議の席には拒否権並びに決定権を有するアメリカ、イギリス、フランス、カナダ、ドイツ、イタリア、シンガポールから派遣された代表(文民)と、日本共和区統合大臣の加藤(かとう)(しげる)が出席している。


 ちなみに加藤のここでの身分は、ニューワールド連合事務次長兼最高評議会副議長でもあり、最高評議会での決定に異議を唱えるだけでは無く、決定を白紙に戻せる強い権利が与えられている。


 基本的には強い決定権と拒否権を有する8ヶ国のうち、日本、カナダ、シンガポールの3ヶ国は他の加盟国よりもさらに上の強い拒否権を有すると規定されている。


 この3ヶ国が拒否又は賛成した場合はたとえ、多数決で決定された議決も白紙に戻せる。


 実際にはニューワールド連合には8ヶ国以外にも複数の参加国が存在するが、あくまでも議決に対して承認するか、又は助言するレベルの権利しか与えられていない。


「諸君等も知っての通り、アメリカ合衆国を含むイギリス、オランダ等の連合国は対日戦に対し、ソビエト連邦を加えて、徹底的に大日本帝国包囲網を築き上げた。しかも、そのやり方はアメリカを含む連合国の大義を真っ向から否定し、新たなる火種と混沌の時代を築くものだ」


 ハンプソンは咳払いしてから、出席者たちに言った。


「これはすべての民族が平等であるべきという民主主義の理念に反し、連合国は自ら自分たちの栄光と権威を汚した。よって、連合国の行為を恒久的世界平和を脅かす、反平和維持活動と見なし、連合国をテロ国家連合と認定する議決を行う」


 ハンプソンはニューワールド連合の最高指導者として、強力な軍隊を預かる最高司令官として臆する事も無く、躊躇う事も無く、発言した。


 ニューワールド連合とニューワールド連合軍は、日本とアメリカとの開戦初期は予め決められていた連合国との戦争には介入しない方針であったが、史実と異なる事態が発生し、世界がどのように動くか、常に傍観の姿勢をとっていた。


 しかし、その後の行動はニューワールド連合最高評議会の決定により、行われる。


「連合国をテロ国家連合として、認定する事に反対する者はいるか?もし、いるのであれば立ち上がって発言せよ」


 ハンプソンの言葉に代表者たちは誰も立ち上がらない。


「全員がこの議決に賛成したと判断し、最高評議会は連合国を恒久的世界平和を脅かし、反国際平和維持活動を行う連合国家勢力としてテロ連合国家に認定する」


 事実上、ニューワールド連合が第2次世界大戦に本格的に軍事介入する事が決定された決議となった。


 これまで、この議決に関しては、何度も議論し、調査を行った。


 そして、かなりの時間をかけて決定された。





 小笠原諸島沖。


 ニューワールド連合軍連合海軍艦隊総軍第1艦隊第1空母打撃群は、破軍集団海上自衛隊第1統合任務隊群と合流するため、合流海域に到着していた。


 第1空母打撃群は、アメリカ海軍の空母と護衛艦等で編成された空母艦隊だ。


 空母はアメリカ海軍の最新鋭原子力航空母艦である[ジェラルド・R・フォード]級の[フロンティア]である。


[フロンティア]を中核に、[アーレイ・バーク]級ミサイル駆逐艦のフライトⅡAとⅢの2タイプが4隻と、[バージニア]級攻撃型原子力潜水艦1隻が護衛している。


さらに補給艦として[サプライ]級高速戦闘支援艦がいる。


[フロンティア]のCDCは、海上自衛隊第1空母機動群旗艦である多目的航空母艦[あまぎ]よりも、最新のデジタルシステムが揃っている。


「提督。まもなく合流海域です」


 長身で体格のいいまるで軍人というより、スポーツ選手を思わせるアフリカ系アメリカ人の中年男性が自分よりも背が少し低く、見た目よりも老け顔の白人男性に報告した。


 白髪が、余計に彼を老けさせている。


「いよいよ我々の出番だ」


 アメリカ海軍では不評が相次ぎ、元のアメリカ海軍ではその姿を消しつつある青を基調としたデジタル迷彩服を着た実年齢よりも10歳ぐらい上だろうと思われる風貌の白人男性が、第1空母打撃群司令のデビィット・スティッツ少将(2つ星)である。


 通常アメリカ海軍では、空母打撃群司令の階級は1つ星少将(下級少将)が任命されるが、ごく稀に2つ星少将(上級少将)が指揮を行う時もある。


 これは単に1つ星少将として空母打撃群の司令官として勤めている間に2つ星少将に昇進し、次の任務のポストに補職されるまでの期間中に勤めているだけだ。


 スティッツもそうであり、ニューワールド連合軍に志願した時に2つ星少将に昇進したが、ニューワールド連合軍や連合海軍の2つ星少将の職務はすべて埋まっており、その上部組織は元軍人である文民の席であり、彼の席が無い。


 そのため、そのまま第1空母打撃群司令官に任命されただけだ。


 つまり、昇進したが、その階級に適した席がなく、たらい回しにされて、その職務についただけである。


 これはニューワールド連合軍全体に言える事だ。


 志願者を募ったが、中には定員を超えている配置もあり、本来なら自分よりも下の階級が配置されるポジションに配置される高級士官や上級士官もいる。


 そのため、中には常備軍勤務なのにポストが無いから予備役という、かわいそうな佐官や将官もいる。


「はい、提督。破軍集団海上自衛隊第1統合任務隊群を水上レーダーが確認しました。まもなく、接触します」


 スティッツの腹心であり、彼の副官であるアフリカ系アメリカ人の中年男性も彼と同じくアメリカ海軍のデジタル迷彩服を着込んでいる。


 彼はドリー・ワシントン大佐である。


「提督。対潜哨戒中のヘリが本艦隊に接近中の潜水艦を発見しました。スクリュー音から大日本帝国海軍伊400型戦略型潜水艦の改良型である[海神(わだつみ)]型と確認しました。[海神]型がそのまま浮上していますが、この海域は旧アメリカ軍の存在は無いとは言え、秘匿兵器を昼間の海上に浮上させるのは危険と判断します。[海神]型戦略型潜水艦に夜まで待つように指示しますか?」


 ワシントンの背後から、もう1人のアフリカ系アメリカ人の中年男性が現れ告げた。


 彼は[フロンティア]艦長のリック・マッシュ・フォール大佐だ。


 ワシントンよりは少し若いが、アメリカ海軍が運用する原子力航空母艦の艦長の中で彼に敵う艦長は存在しない程の操艦技術を有する名艦長だ。


「いや、その必要は無い。大日本帝国も未来の日本とアメリカ等の潜水艦大国から技術提供を受け、最新技術を駆使して建造された戦略型潜水艦を我々に見せたいのだろう。彼らの考えを尊重しよう」


 スティッツは腕を組みながら、言った。





 破軍集団海上自衛隊第1統合任務隊群旗艦である多目的護衛艦[かいよう]は、一見するとスキージャンプ式の飛行甲板を有する軽空母だ。


[かいよう]は、ヘリ搭載護衛艦[いずも]型をベースに建造された[しょうない]型輸送艦をさらに発展させた、固定翼機を運用可能にした航空機搭載護衛艦と輸送艦としての2つの能力を持った新しい艦種の多目的護衛艦だ。


 ヘリ搭載護衛艦[いずも]型よりも大型化された全長255メートル、基準排水量2万4000トン。


 搭載機は基本運用では、V/STOL仕様に開発されたF-2Cを12機、対潜哨戒ヘリとしてSH-60Kを4機、捜索救難ヘリとしてUH-60Jが1機、輸送ヘリとしてMCH-101が1機(海上自衛隊が保有する航空機)。陸上自衛隊の航空機として戦闘ヘリが2機、観測ヘリが1機、輸送ヘリが3機(CH-47JAの場合、UH-60JAの場合は4機である)。


 最大搭載機数は28機であり、第1空母機動群旗艦である多目的航空母艦[あまぎ]型の半数に満たないが、[あまぎ]と異なり、諸外国の空母のように攻撃に特化しておらず、どちらかと言うと、即応高速戦闘揚陸艦としての機能が主である。


 陸上部隊の輸送能力は搭載機基本運用状態で10式戦車4輌又は16式機動戦闘車8輌、装甲車、輸送車両等を20輌搭載し、完全装備の陸上自衛隊員400名を乗せる事ができる。


 ちなみに後部には、輸送艦[おおすみ]型や[しょうない]型と同じくウェルドックがある。


「さて、菊水総隊陸海空自衛隊が、ハワイやフィリピン等で大暴れしてくれたおかげで、我々の存在が忘れられていたが、ようやく出番が回ってきた」


 第1統合任務隊群司令の小笠原(おがさわら)一輝(かずき)海将補が[かいよう]の艦橋にある司令席から、つぶやいた。


 日本人の中では長身に入り、濃い顔つきであるため、外国人の受けはかなり良く、その攻撃的な思想と猪突猛進を基礎とした戦法は自衛隊内では、日本版ハルゼー提督と言わしめている。


 猛将ではあるが、ハルゼーと同じく、とても部下思いで、自分よりも上位の自衛官又は背広組には、無責任な発言や現場の事を考えない行動計画を立案すれば、怒鳴りつけるか、睨みつけ、即座に黙らす。


 自分よりも下位であれば、とても優しく接する。


 たとえ、無責任な発言をしても優しく笑いながら窘めるそうだ。


 そのため、部下からの信頼はとても厚く、個人的に忠誠を誓う隊員たちが書いたファンレターが毎日届けられ、彼の執務室のデスクの上に山のように積まれているらしい。


 諸外国軍の高級士官たちは、彼の事を聞くと「ハルゼー提督が転生した」と口を揃えて言う。


「第1空母打撃群と合流しだい、対空、対潜、対水上戦の合同演習を行う。もともと、我が艦隊は単独であらゆる作戦を遂行する機動艦隊では無い」


 小笠原は幕僚たちにそう言うと、司令席から立ち上がり、双眼鏡を覗いた。


「第1空母機動群編成計画と空母[あまぎ]の建造計画が正式に決定されてから、[かいよう]を含めた本艦隊の護衛艦は単に空母運用計画の試験艦隊に格下げされたが、本艦と護衛の僚艦の乗員の練度は第1空母打撃群よりもはるかに上回る。本物の艦隊航空行動を雛どもに見せてやる」


 小笠原は小声でつぶやいた。





 第1空母打撃群と第1統合任務隊群が合流するとその艦隊行動は元の時代でニュースに流される艦隊行動をそのままこの時代の海で再現している。


 第1空母打撃群は原子力空母、護衛の駆逐艦、補給艦、原子力潜水艦を合わせても7隻程度であり、この時代の空母機動部隊の艦数から考えれば半個艦隊にも満たない。


 しかし、航空攻撃力、艦隊防空力、対地攻撃力、対潜水艦戦力、対水上戦力は100倍以上だろう。


 これは、原子力空母に搭載される搭載機の戦闘攻撃機が、搭載する兵器はすべて高性能であり、100パーセントに近い正確無比の攻撃達成が可能だ。


 さらに護衛艦である[アーレイ・バーク]級ミサイル駆逐艦が装備する巡航ミサイルであるトマホーク・ミサイルの搭載数は、冷戦が終結してからは、さらに搭載数の増加、目標への正確無比の攻撃、撃破が可能である。


 実はアメリカでも、もしも現在の空母打撃群が第2次世界大戦の時代に行ったら、どうなるか、という仮定の話も存在する。


 基本的に、その時の空母打撃群は、湾岸戦争時代の空母戦闘群で予想された。


 結果は、湾岸戦争時代の空母打撃群1個が1940年代にタイムスリップすると、連合国と枢軸国の両方を敵にしても、その武力を最大限に使えば両勢力を屈服させる事ができる、と結論付けられた。


 これは、かなり大袈裟のような気もするが、湾岸戦争時の空母戦闘群の戦闘を考えれば疑う事もできない。


 それは湾岸戦争時、1個空母戦闘群の1日の攻撃目標は最大でも200回であった。


 ちなみに、イラク戦争時はこの4倍の600回で、時には1日で800回も航空攻撃、洋上艦又は潜水艦から対地攻撃を行ったという報道もある。


 当初、大日本帝国政府と軍部にニューワールド連合軍の事を話したら、彼らは当然ながら裏切られる可能性を危惧したが、1990年代から2020年代の30年間のアメリカ海軍空母打撃群の戦闘記録等を見た時、それがただの馬鹿馬鹿しい危惧だった事に気づいた。


 彼らの軍事力を見れば裏切る必要が無いぐらいの規模を保有している。


 それどころか、誰が見ても彼らが少しでもその気になれば、世界征服など欠伸をしながらでもできる規模だ。


 ニューワールド連合軍の全兵力(公開可能レベル)を見た大日本帝国軍部の、中将又は大将クラスは口を揃えてこう言った。


「彼らが裏切る等という、とてつもない阿保な考えをした事を、武人として恥じている。彼らはその軍事力で裏切る気はない事を証明した」であった。


 ニューワールド連合軍に志願したアメリカ軍、イギリス軍、フランス軍、ドイツ軍、イタリア軍、カナダ軍、シンガポール軍等の全将兵は、自分の祖国に戦略ミサイルを撃ち込む事も辞さない覚悟で志願している。


 すべては、核無き世界と恒久的世界平和のために、この世界のいかなる勢力、国家に従わず、屈せず、恐れず、目的完遂のために己の任務を遂行する。


 それが彼らの信念であり、その宣誓を神の名の下に誓っていた。





「私としては、どうしても疑問に思う事がある」


 春とは名ばかりの白一色の、北海道の大地を見渡しながら、北部方面軍副司令官の石原莞(いしわらかん)()中将は、視察に随行している新世界連合軍連合支援軍から派遣されてきた、観戦武官兼連絡将校の、将校に振り返った。


「菊水総隊陸軍の若い下士官は、『自分たちは、1人でも多くの日本人を救いたい。そのために戦う』と言っていた。しかし、貴官たちは場合によっては自分の祖国を敵にする事も辞さない覚悟を決めている。最悪、自分の祖父や曾祖父に当たるかも知れない兵士たちと銃火を交える事に、躊躇いはないのかね?差し支えがなければ、教えてほしい」


 石原自身の感想では、若い下士官の言葉は戦争の現実を知らない故の、甘さから出る言葉だろうと言うのが、正直な意見だが。


「私も、軍に入った頃は、その若者と同じ気持ちでした。祖国とそこに住む人々を守る。その気持ちに偽りはなかった筈でした・・・しかし・・・」


 東洋系の顔立ちの将校は、やや訛りのある日本語で語り、途中で目を伏せて口籠もった。


 40代後半と思われる、連合支援軍司令官付きの高級副官が肩書きの上級将校は、思い出すのも辛いといった表情を浮かべていた。


「・・・辛い経験があるのなら話さなくても良い。不躾な質問をして、すまなかった」


「・・・申し訳ありません。閣下のような方なら、いずれ自分の気持ちに整理が付いた時に、聞いて頂こうと思います。1つだけ答えるなら、私を含めてニューワールド連合軍や支援軍に所属する者は、個人差があっても自分の祖父や曾祖父かも知れない兵士たちを前に、引き金を引く事を躊躇わない者はいないでしょう。ですが、第2次大戦後の世界が歩んだ歴史を繰り返さないために必要なら、個人の感情をねじ伏せる覚悟は出来ているとだけ申し上げておきます」


「貴官たちは、重いものを背負っているのだな・・・」


 石原は、ここからは見る事のできないハワイの方角へ目を向けた。


 考えは、未熟で甘いと思っていても、石原はあの若者の純粋で真っ直ぐな目を気に入っていた。


(・・・神薙軍曹。恐らく貴官は遥か南の島で、この世の地獄を味わうだろう。しかし、必ず生きて帰ってこい・・・私が貴官に教えたい事は、まだ沢山あるのだから・・・)


 石原は心中で、自分を父親のように慕ってくれている青年に呼びかけた。


 日本本土防衛戦 第2章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投降は8月2日を予定しています。

 次話は第3章と第4章です。第4章は戦略爆撃機からの本土防空戦になります。

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