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日本本土防衛戦 第1章 反撃のシナリオ

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 1942年3月1日。


 アメリカ合衆国陸軍航空軍某航空基地では、数100機の長距離爆撃機がエプロンに並び、整備、点検、爆撃演習又は飛行演習等を行っている。


 航空基地司令部の司令官室で、2人の士官が陸軍航空軍総監であるヘンリー・アーノルド少将の前で立っていた。


「楽にしてくれたまえ」


 アーノルドの言葉で、2人の士官が休めの姿勢をとる。


 2人の士官は、ハワイ諸島奪還作戦を行う前哨戦にあたる、日本本土攻撃作戦の爆撃部隊の2つの爆撃機編隊を指揮する指揮官クラスだ。


 ジミー・ドーリットル中佐とカーチス・ルメイ大佐である。


 史実で、ルメイはヨーロッパ作戦に参加するのだが、この時代でのアメリカはドイツとは戦争をしておらず、本来ヨーロッパに派兵されるはずだった軍はそのまま日本に投入できる事になる。


 そのため、彼も日本本土空襲作戦に加えられた。


 もっとも、この時代のアメリカ人で、この事を知っているのは、極一部の者ではあるが。


「ルメイ大佐。新しく届いた新型の戦略爆撃機はどうかね?大統領命令でいきなり大量生産といくつかの改良を加えたから、少しでも心配な事があれば教えてくれないか?」


 アーノルドの言葉にルメイは答えた。


「はっ、いくつかの不具合はございますが、高々度を飛行しますので、その当たりはパイロットの腕でなんとかできます。しかし・・・」


「しかし?」


「小官が気になるのは、日本空軍が保有する迎撃戦闘機です。ドイツ空軍にもジェットエンジンを搭載した迎撃戦闘機がありますが、日本空軍が保有するジェット戦闘機はこれをはるかに上回ります。いくら大統領命令でも、ハワイ諸島奪還のために日本の目をハワイ防衛から占領下全域に向けさせるために日本本土空襲を行うと言うのは・・・」


「気が進まないか?」


 アーノルドが目を閉じて、聞いた。


「正直に申し上げて、そうです」


 アーノルドは、「ふむ」と顎を撫でた。


「ドーリットル中佐。貴官はどう思う?」


 アーノルドが、ドーリットルに視線を向けて聞く。


「自分は軍人です。命令であるのなら、どんな防空態勢があろうが、爆撃部隊を突入させます。しかし、成功の見込みが無い作戦に自分はともかく、部下たちを送るのは・・・死にに行けというような、命令を唯々諾々と受けては、部下たちに申し訳がたちません」


 ドーリットルも気が進まないような表情で言った。


「それはわかっている。主戦論を主張する政治家や議員どもは日本軍がアメリカ本土の空襲が成功したのだ。ならば、我々もできるとほざいている。まったく、それができる軍隊が簡単に本土空襲を許してくれる訳が無い」


 アーノルドが言った後、彼は2人の顔を交互に見た。


「それで、私に面会を求めた理由を聞こうか?」


 ルメイが代表して言った。


「日本本土空襲作戦ですが、25歳以下のパイロットを含む搭乗員を外してほしいのです」


「それは、経験が無いからか?」


「いえ、25歳以下のパイロットや搭乗員たちはこれからの作戦に是非とも必要なのです。こんなところで死なせてはいけません。それに、ここは年長者として手本を見せるのも必要です」


 ドーリットルが主張した。


 アーノルドはうなずいた。


「わかった。確かに作戦命令は受けたが、部下の選抜等の現場レベルの決定権は我々にある。ならばどのような事をしようとも文句を言われる筋合いは無い」


 大日本帝国本土空襲の準備が着々と進められる。


 皮肉な事だが、菊水総隊航空自衛隊戦略爆撃機であるB-52によるアメリカ本土空襲は逆に戦略爆撃機による本土空襲がいかに心理的ダメージを与えるかを実証してしまい、そのため、戦略爆撃機の開発、研究、改良が急ピッチで行われた。


 よく勘違いされるが、想像絶する新兵器を投入して圧倒的な力の差を敵に見せつけたとしても、それで屈服させる事は、必ずしもできない。


 むしろ逆に、敵をより一層凶暴化させる可能性が高い。





 アメリカ合衆国ワシントンDCホワイトハウス。


 大統領執務室で、フランクリン・ルーズベルト大統領は、閣僚から上がってきた報告書と現在のアメリカ合衆国内の情勢についての報告書に目を通す作業に忙殺されていた。


 フィリピンの陥落と独立宣言、日本陸海空軍による東南アジア侵攻の準備は政府、軍部だけではなく、アメリカ世論にも流れていた。


 ハワイ諸島奪還作戦の前哨戦とも言える準備作戦の1つであったニューブリテン島への武力偵察と言う名の強襲上陸もアメリカ世論を喜ばせるために成功したと報道したが、やがて撤退した事も、反攻作戦ではなく、単なる偵察だった事も世間に漏れる。


 その時、重要なのは、どのくらい日本側に損害を与えたかである。


「ふむ。日本本土空襲とこの秘密計画を見たのだが、どう見てもアメリカは、単にソ連軍とイギリス軍の手伝いをしただけには思われないか?」


 国務長官であるコーデル・ハルは公務のためにワシントンDCを離れているし、副大統領のハリー・S・トルーマンも同じく公務でワシントンDCにはいない。


 そのため、国務省から派遣されて来た代理人に聞いた。


「ですが、これにより日本はアメリカだけではなく、ソ連、イギリス、オランダ等の国々とも戦わなくてはならなくなり、準備中のハワイ奪還作戦の際に日本は複数の本土防衛の防衛拠点やアメリカを含む連合国の海上航空輸送路を封鎖するために、拠点の確保と防衛部隊を配備しなくてはならず、その分、兵力を分散しなくてはなりません。いかに日本陸海空軍が精強でもハワイから日本本土までの海上航空輸送路は長く、守るに関しては極めて不利です」


 国務省の代理人からの説明に、ルーズベルトはうなずいた。


「陸海軍の両長官からも同じ事を報告された。幸か不幸か、日本が日独伊三国軍事同盟を破棄してくれたおかげで、陸海軍と海兵隊を日本のみに投入できる。さらに、ドイツ軍がかなり強いおかげで、イギリスやソ連等のヨーロッパを対日戦に簡単に誘導できた」


 中国、朝鮮等のアジア諸国の中には日本側の肩を持っている国家もあるが、それは日本の外務省が武器、兵器を無償又は格安で輸出しているからだ。


 それだけではなく、彼らに合わせた仕様の武器、兵器の開発、製造支援も行っているから、日本と友好関係を築いているに過ぎない。


 日本人を除きアジア人のほとんどは強い者に尻尾を振る癖がある。


 ならば、ハワイ奪還作戦で日本軍が装備する最新鋭兵器をアメリカ式の戦いで倒せば、世界経済はアメリカの物になる。


 ルーズベルトのスポンサーの1人がそう言った。


 もっとも、そのスポンサーの狙いはアメリカあっての経済にしたいだけだろうが・・・


 強い国は、その強さが最大の弱点である。


 強ければ強いほど、弱い。


「強さも勝利も絶対では無い。ましてやわずか半世紀程度で軍事大国に成り上がった日本がヨーロッパのように強者の座を維持できる訳が無い」


 ルーズベルトは執務用の椅子に深く腰掛け、つぶやいた。





 サンディエゴ海軍基地では、航空母艦[サラトガ]と[ワスプ]、護衛空母[ロング・アイランド]の3隻と戦艦[ワシントン]が出港準備を整えていた。


 3隻の正規空母と戦艦の護衛のため、巡洋艦(重巡、軽巡)、駆逐艦が12隻も出撃準備を整えている。


 艦隊防空と長距離偵察のために護衛空母[ロング・アイランド]には、艦上戦闘機と長距離偵察用に改良した艦上偵察機を搭載している。


「ハワイ奪還作戦の第1段階はすでに秒読みだ。明日の0900時には出港する。気を引き締めろ!」


 艦隊旗艦である空母[ワスプ]で艦隊司令官であり、数日前に戦時特例で少将に昇進したばかりのマーク・アンドリュー・ミッチャーが部下たちに喝を入れる。


 ミッチャー率いる航空艦隊の任務は、陸軍航空軍が配備した新型の戦略爆撃機群の日本本土空襲と同時に行われる東京への空襲だ。


 本作戦はルーズベルトがソ連、イギリス、オランダに公式、非公式を問わず、会談を行い、ハワイ奪還のためなら、あらゆる条件を呑む事を条件にこの3ヶ国に大日本帝国本土への強襲上陸と本土空襲を約束させた。


 陸軍航空軍の新型の戦略爆撃機群による本土空襲、ソ連軍による日本北部への強襲上陸、イギリスとオランダ軍による南部への強襲上陸を一度に行えば、大日本帝国は当然の事ながら混乱する。


 その隙をついて、ミッチャー率いる航空艦隊が日本近海まで近づき、[ワスプ]と[サラトガ]から発艦した100以上の艦載機が東京を空爆する。


 これは、開戦時に大日本帝国陸海空軍が行った戦法を、ルーズベルトが政府と軍部のそれぞれが持てる力を駆使して、研究し、立案された作戦だ。


 もちろん、この作戦を軍部の高級士官たちに納得させるのは大変だったが、軍部の反対意見にルーズベルトは、こう言い返したそうだ。


「確かに日本陸海空軍は開戦以来、我がアメリカを含む連合国の出鼻をへし折った。しかし、諸君。ここで少し考えてみたまえ。ここまでの攻撃を一度に行うという事はそれだけ日本は追い詰められているという事だ。いかに日本が世界最強でも所詮は一民族に過ぎない。神でもなければ悪魔でもない。強さは最大の弱点だ。そこを叩けば良いだけだ」


 ミッチャーも最初にそんな話を聞いた時は、無謀過ぎると思ったが、陸海軍の上層部はこれまで記録されている日本の歴史を徹底的に研究し、さらにアメリカに住む日系人たちの生活態度等をあらゆる方面で研究したため、日本人の心理や弱点を見つけるのに時間はかからなかった。


「ふん。日本空軍の戦略爆撃機が行った、アメリカ本土空襲の際に日系人を丁重に扱えという通達が、ここまで我々を有利にしてくれるとは・・・まったく、世の中は何が起こるかわからない、とはよく言ったものだ」


 ミッチャーは鼻を鳴らしながら、つぶやいた。


 日本側が行った日系人を強制収容所に収容させないための対応策は日本側に悪い方向に傾いてしまった。


 もともと、アメリカのすごいところは自分たちの不利益を利益にする能力、臨機応変に対応する能力がどの国よりも極めて高い事だ。


「恨むなよ、ジャップ。お前たちが我々を育てたのだ。我々は純粋な子供だ。子供は大人のする事を見て、それを反面教師にして、自分の力に変える。それが自由の国であるアメリカだ」


 ミッチャーは太平洋に視線を向けて、つぶやいた。





 ソビエト連邦陸軍極東軍司令部では、ゲオルギー・コノスタンチーノヴィチ・ジェーコフ元帥は執務室でため息をついた。


 ドイツ第3帝国国防軍の侵攻でモスクワが陥落し、スターリンを含むソ連の最高権力者たちが行方不明になった。


 そのため、ソ連は事実上国家として機能しておらず、生き残ったソ連軍部の高級士官たちが国政を好きなように行っている始末だ。


 ただし、彼らの最終目的はモスクワの奪還である。


 幸いにも極東軍は健在で、スターリンからの最後の命令であった満州の占領と石油資源の確保は完了しており、大日本帝国が中国に満州を返還した際に満州に建設された軍事工場がすべて稼働可能であるため、武器、兵器、弾薬、予備部品の大量生産は可能だ。


 さらにモスクワが陥落したため、ドイツ軍と戦った経験豊富な将兵たちが極東軍に集まったため、かなり大規模な軍事力を保有している。


「・・・・・・」


 ジェーコフは、アメリカの国務省から届いた要請書とソ連国土回復軍最高司令部からの命令書を読んで、さらにため息をついた。


 命令は簡単だ。


 大日本帝国本土の北海道に強襲上陸を行え、である。


 すでに、その作戦準備は完了しており、後はアメリカ陸軍航空軍戦略爆撃団の到着を待つだけである。


「気に入らん・・・」


 ジェーコフは吐き捨てた。


 アメリカ政府はソ連が日ソ不可侵条約を破って、北海道に侵攻した場合、ソ連国土回復のためにあらゆる軍事支援を約束する、と約束したが、果たしてどこまで信用できるか、怪しいものだ。


 ウラジオストク軍港には日本とアメリカが開戦する前にアメリカから大量の輸送船を引き渡されたのと、24隻の水上戦闘艦がある。


 これは満州侵攻の際に、中国が日本に援軍要請をする事を危惧して、日本側への威嚇のために配備したものだ。


 アメリカ側の譲渡はかなり魅力的なものだが、明らかにアメリカはハワイ奪還と日本に強烈なパンチを打ち込むために、自分たちソ連を利用しているのはわかり切った事だ。


 だが、最高司令部の命令は絶対だ。


 いかに元帥であろうと命令には逆らえない。


「しかし、今の最高司令部では誰が指揮を行っているのか・・・?」


 ジェーコフは首を傾げた。


 その時、執務室のドアからノック音がして、幕僚の1人が入ってきた。


「同志元帥。ご命令通り、日本北部の土地に強襲上陸する上陸軍の編成が完了しました。上陸兵力15万6000人。戦車600輌、その他車両は8万輌等を輸送船に乗せております」


「わかった。準備を急げ」


「はっ!」


 いかに望まない役目でも命令は絶対服従であり、異議を唱える事は許されない。


 この国は共産主義だ。


 共産主義は1人の絶対権力者の元で国家が維持され、軍人、文人の区別なく絶対権力者と党のために命をかけなくてはならない。


 だが、共産主義の恐ろしいところは絶対権力者が後継者を残さず、死亡又は行方不明等になれば、すぐにとんでもない事が待っている。


 どうなるかはその国の情勢や体制等で変わるが、良い方向に向く事もあれば、悪い方向に傾く場合もある。





 同じく、シンガポール海軍基地では、イギリスとオランダ等の連合国がアメリカからの要請で日本本土の南東諸島への侵攻が計画され、その陽動作戦のためにイギリス海軍とオランダ海軍の戦艦部隊を基幹とした連合艦隊がフィリピン方面にいる日本艦隊と会戦をする準備をしていた。





 それだけでは無く、日本陸海軍をあらゆる方向に軍を派兵させるために誘導する策がアメリカを中心に行われていた。

 日本本土防衛戦 第1章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

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