策動の太平洋 終章 第1特科団上陸
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
ニューブリテン島でアメリカ海兵隊を含む連合軍が強襲上陸を行い、大日本帝国陸海軍と菊水総隊陸海空自衛隊と激戦を繰り広げ、ついにアメリカ軍を基幹とする連合軍を撤退させてから、2日後。
ハワイ諸島オアフ島真珠湾基地の軍港に菊水総隊と共にこの時代に送られた国際大型フェリー群が統合省保安局海上保安本部海上保安集隊に所属するヘリ2機搭載巡視船1隻と大日本帝国海上警備隊護衛艦隊第1護衛集隊10隻(護衛警備艦9隻、護衛空母1隻)に護衛され、真珠湾軍港に入港した。
その国際大型フェリーから、次々と埠頭に陸上自衛隊の車輛が陸揚げされた。
陸揚げされた車輛は、第1特科団に所属する車輛だ。
「やっと、地面に足をつけられた」
顔立ちや口調から、もうすぐ定年退職を迎えそうな小柄の中年の男は、やれやれといった感じで、つぶやいた。
綺麗にアイロンがけされ、細かくプレスされた迷彩服3型を着用し、迷彩帽を被った彼はかなり細かそうな性格である事が一目瞭然だ。
彼の襟に縫われている階級章は陸将補である。
この小柄の男が、第1特科団団長の木川太介陸将補だ。
年齢は今週中に58歳になる。
陸上自衛隊に入官してから、ずっと特科一本の彼はこれまで他の勤務になるとある程度勤務年数を過ぎればすぐに特科に戻った。
そのため、陸上自衛隊の幹部、曹、士からは、大砲屋のおっさん、と呼称された。
この人に榴弾砲等の砲兵部隊が使用する装備の話をしてしまうと、どんなに短くても6時間の講義が始まる。
それだけ、特科が好きな人物だ。
「お待ちしていました。木川団長」
木川がようやく地面に足をつけられた事に喜んでいると、傍らから声をかけられた。
「ん?」
木川が声のした方に振り向くと、そこには中将の階級章をつけた大日本帝国陸軍軍人がいた。
その傍らにはオアフ島に先に到着していた第7機甲師団長の小里浦庄司陸将等の高級士官がいた。
「!?」
木川は慌てて、挙手の敬礼をした。
「菊水総隊陸上自衛隊第1特科団団長の木川太介陸将補です」
「栗林です」
オアフ島駐留陸軍司令官である栗林忠道中将が答礼する。
簡単な挨拶をした後、栗林は埠頭に降ろされる第1特科団の自走砲を眺める。
「これが203ミリ自走榴弾砲ですか?」
「そうです。特科が保有する最大の火力を持つ自走榴弾砲です」
木川がうなずくと、栗林たち陸軍の高級士官と佐官クラス士官たちが興味津々といった顔で、203ミリ自走榴弾砲を眺める。
「確かにあれだけの大口径の砲であれば、1個砲兵中隊が一斉射しただけでもかなりの破壊力を発揮します」
砲兵科出身の陸軍将官がつぶやいた。
陸軍にも、これ以上の口径を持つ榴弾砲はあるが、戦車のように自力で走行し自在に陣地展開できるというのに、興味が尽きないようだ。
何しろ、巡洋艦クラスの艦砲とほぼ同じと考えれば、戦術の幅が広がる。
砲兵科の士官たちは、203ミリ自走榴弾砲の周囲に群がって、動こうとしない。
203ミリ自走榴弾砲は、アメリカ陸軍が開発したM110A2をライセンス生産した自走砲だ。
主に陸上自衛隊の方面隊直轄の特科大隊に配備されていたが、アメリカ陸軍ではすでに退役し、陸上自衛隊も新たなる防衛戦略から、203ミリ自走榴弾砲の退役が開始された。
しかし、後継となる自走砲の調達が遅れたり、防衛政策の再度の見直しから、野砲の定数が変更された(増やされた)ので、203ミリ自走榴弾砲も74式戦車と同様にまだまだ現役のポジションを維持している。
しかし、特科部隊の編成が大きく変更され、203ミリ自走榴弾砲を装備しているのは第1特科団のみである。
第1特科団の編成を改変し、第1特科群には203ミリ自走榴弾砲のみで編成した特科群にし、第4特科群は多連装ロケットシステム自走発射器M270[MLRS]のみで編成した。
第1特科団麾下の第1から第3の地対艦ミサイル連隊はそのままで、同じくオアフ島に運ばれた。
大日本帝国と日本共和区でそれぞれ決定されたオアフ島防衛計画は完璧な船団護衛計画の下で、順調に進んでいる。
第1特科団の到着だけが、これで終わりでは無い。
すでに大規模輸送計画で随時海自の護衛艦と海上警備隊護衛艦隊に所属する各艦が輸送船やフェリー等を護衛して、オアフ島に向かっている。
菊水総隊陸上自衛隊は日本防衛の最低限の戦力だけを残し、他はオアフ島の防衛とマレー方面攻略のために投入されている。
オアフ島に送られるのは、第6師団と第14機動旅団である。
「それにしても木川少将。顔色がよくありませんな」
栗林が尋ねる。
「ええ。自分は船がとても嫌いなものでして、船酔いをしました」
「そうですか、それはいけませんな」
木川の言葉に栗林がつぶやく。
策動の太平洋 終章をお読みいただきありがとうございます。
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