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策動の太平洋 第11章 反攻作戦の序曲 4 対空戦闘 戦艦大和出撃

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 第1空母機動群空母[あまぎ]の自室で、首席幕僚の上条嗣(かみじょうつぐ)(あき)1等海佐は統幕本部から送られて来る報告書に目を通していた。


 新世界連合軍から、アメリカ海軍とオーストラリア海軍、ニュージーランド海軍がニューブリテン島近海に集結しつつあるとの情報を受け、大日本帝国海軍第1艦隊とは別ルートで、ソロモン海方面に向っていた。


 アメリカ等の輸送船団がニューブリテン島攻略を開始したとの情報から、日本共和区統合省は、アシハラ協定に則って、大日本帝国軍の支援のための防衛出動を発令した。


 第1空母機動群の任務は、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド連合艦隊を迎撃することだ。


「まったく、特務作戦チームのあの坊やはどう思って、日本本土空爆はないと言い切るのかね」


 上条を始め、村主、久賀等各護衛隊群の首席幕僚は全員が日本本土に対し、アメリカが何もしないという事はないと考えている。


 事実、総隊幕僚の秋山(あきやま)(さとる)海将補は日米開戦前に、石垣(いしがき)達也(たつや)2等海尉に直接会って、彼の考えを確認しているが、親しい者に「彼の意見は聞くべきところはあるが、参考にはできない」と、漏らしたそうだ。


 上条に言わせれば、「甘やかし過ぎだ」としか思えない意見だ。


「多分、一番現実的なのは村主だろうね」


 統幕本部に村主が送った、アメリカ軍の今後の作戦予測で、大日本帝国の兵力の分散を図るために、中規模から大規模の部隊を展開させるだろう。というのがあったが、統幕本部もほぼ同じ予測を立てている。


「村主の唯一の欠点は、先読みをし過ぎる所だ・・・二歩どころか十歩先は読むが、肝心の一歩先の石ころに気付かない・・・防大時代からの悪い癖だ」


 そうつぶやいて、氷室から送られてきた報告書に目を通す。


「自分の一歩前で、蛇のように身を潜めている従弟殿に気がついていないのだからな・・・」


 報告書をシュレッダーにかけながら皮肉な微笑を浮かべた。


「・・・さて、これが俺たちにとっての本当の意味での初陣だが・・・」


 正直、上条でも予測できないのだが、演習によって練度は上がっているものの、いざ実戦になれば、どうなるか・・・





 戦艦[大和]を旗艦とする第1艦隊はニューブリテン島にアメリカ海軍、オーストラリア海軍、ニュージーランド海軍の空母や戦艦を基幹とした連合艦隊への迎撃のためにトラック泊地に入港せず、洋上で補給を受けた後、そのまま、艦隊速力16ノットでニューブリテン島に針路を向けた。


 トラック泊地では三川軍一(みかわぐんいち)中将指揮の第8艦隊と牟田(むろた)(のぶ)(やす)海将補指揮の第1空母機動群が出港した。


 戦艦[大和]は第1艦隊の旗艦でもあるが、聯合艦隊の旗艦でもある。


 第1艦隊は史実の編成とは大きく変わり、戦艦[大和]を直轄艦として第1戦隊、第6戦隊、第1水雷戦隊(2個の駆逐隊)、第3水雷戦隊(2個の駆逐隊)、第1防空戦隊(対空戦闘と対潜戦闘に特化させた4隻の駆逐艦で編成された1個駆逐隊)、第1哨戒戦隊(2隻の艦隊哨戒型駆逐艦と2隻の攻撃型高速潜水艦の1個駆逐哨戒隊と1個潜水哨戒隊)の2個戦隊、2個水雷戦隊、1個防空戦隊、1個哨戒戦隊が第1艦隊の編成である。


 さらに戦艦[大和]には聯合艦隊司令部に直轄する対空、対潜を担当する駆逐艦が4隻随行している。


 戦艦[大和]の第1艦橋では、聯合艦隊司令長官である山本五十六(やまもといそろく)大将が長官席に腰掛けている。


 ちなみに彼の軍装は、詰襟の純白の制服姿だ。


 他の[大和]乗組員は全員が戦闘服姿である。


 山本の傍らには、菊水総隊司令官付特務作戦チームの御堂(みどう)(らん)1等陸佐、石垣、側瀬そくせ美雪みゆき3等海尉、新世界連合軍連合陸軍所属のメリッサ・ケッツアーヘル少尉がいる。


 彼らの服装は、御堂は迷彩服3型、石垣と側瀬は青を基調したデジタル迷彩服姿で、メリッサはアメリカ陸軍では姿を消しつつあるUCPと呼ばれるデジタル迷彩服だ。


早朝。


「長官。第1哨戒戦隊第1哨戒潜水隊[早潮]より、緊急電です!ニューブリテン島攻略軍の連合軍の艦隊通信を傍受しました。『戦艦[大和]以下30隻以上の山本五十六大将率いる聯合艦隊の主力艦隊がトラックを通過、空母[ワスプ]、[ヨークタウン]、[キアサージ]の3空母から第1次攻撃隊を出撃させよ』です!」


 通信兵が通信文を持って報告した。


「さすがはアメリカの情報網だ。我々の暗号はすでに解読されていたか・・・」


 山本は腕を組み、つぶやいた。


「しかし、我々が使用する暗号は、すべてハワイ諸島占領とフィリピン上陸後に違う暗号システムに変更しました。ここまで早く解読されるとは」


 聯合艦隊参謀部の通信参謀がつぶやいた。


「暗号システムに完璧な物はありません。暗号は例えるなら生き物の特性と似ています。どんな生き物も天敵に襲われたら逃げます。しかし、その逃げ方にはパターンがあります。それを把握してしまえば後は発想と知識で暗号は解読できます」


 メリッサが海上を眺めながら、解説した。


「その通りだ、通信参謀。暗号通信は基本的に行ったら、これはすでに敵に解読されている事を想定する。情報戦の常識だ。そして、新世界連合軍の軍事通信戦と電子偵察の教育で教官が教えただろう。敵が我々の暗号通信を解読したら、それは戦争に勝利する好機だと」


 山本が、メリッサの後に口を開いた。


 確かに、その考えは正しい。


 莫大な予算と大勢の専門家たちの汗水を流した努力によって、敵軍の暗号を解読したのだ。


 つまり、解読した科学者たちや暗号解読員たちは、その結果に自信を持って主張する。


 しかし、敵軍側が解読される事を前提にしていたら、どうだろう。


 この海域に聯合艦隊の主力艦隊の規模、位置等の正確な情報を把握し、攻撃隊を出撃させる。


 だが、主力艦隊側は最初からそれが狙いだから、完璧な防御態勢で迎撃し、この隙に別働隊が敵の本隊を攻撃する事も可能だ。


 もっとも、本当はどっちが本隊なのか、別働隊なのか、それは当事者たちにしかわからない。


 つまり、暗号解読は極めて危険な情報戦なのだ。


 解読しすぎれば、敵に解読能力を逆に利用され、足をすくわれる。


 暗号は解読も大事だが、解読しすぎるのも問題なのだ。もともと情報戦は決して誇れる戦果では無い。


 1秒遅れれば数1000人の命が消え、1秒早ければ数1000人の命を救う。しかし、情報収集官も情報分析官も、その結果は単に数1000人の味方を殺したのか、敵を殺したのかの違いだけだ。


「電子参謀。敵の艦載機群がここに到着するのにどのくらいかかる?」


 山本は長官席から立ち上がり、電子参謀という新しい参謀職の中佐に聞いた。


「はっ!約40分です!」


「ふむ。艦長、通信参謀」


 山本は顎を撫でながら、少し考えた。


「全艦に戦闘配食を配れ」


「「はっ!」」


 戦艦[大和]艦長の有賀(あるが)幸作(こうさく)大佐と通信参謀が挙手の敬礼をした。


 史実では戦艦[大和]の最後の艦長であったが、この時代では新技術と旧技術が融合した極めて問題のある戦艦であり、新型電子機器搭載により、それらのノウハウの取得と新しい戦艦の運用方法研究のため[大和]型戦艦2隻の艦長たちは、全員が新世界連合軍連合海軍に赴き、唯一の戦艦であり、第2次世界大戦から50年以上も戦場で戦ったミサイル戦艦[ミズーリ]でその技術を学んだ。


[大和]型戦艦は、2番艦までは戦艦として建造し、3番艦は聯合艦隊旗艦としての艦隊指揮艦として新たなる艦種として再設計された。


 4番艦の建造は中止され、[大和]型戦艦と[アイオワ]級戦艦のデータを元に新しく大口径の主砲(3連装四一糎砲を要求)3門を装備した状態で最大速力33ノット、巡航速度25ノットというとんでもない高速戦艦を大日本帝国の造船技術と未来の日本、アメリカの造船技術を駆使して建造するように海軍は要求した。


もちろん、これと同時に搭載機数100機以上を搭載できる大型航空母艦の建造も要求した。





 戦艦[大和]の烹炊所では主計科100人の乗組員たちが総動員で戦闘配食の準備を行っていた。


[大和]型戦艦は未来の技術援助により、かなりの改良が行われた。


 ただし、戦艦[大和]と戦艦[武蔵]ではそれぞれ異なる改良が行われている。


 これは未来の日本から派遣された先遣隊が到着した時には、すでに戦艦[大和]は進水していたからだ。


 そのため、まだ、進水していなかった戦艦[武蔵]より、スムーズな改修が行えなかったが、それでも史実の戦艦[大和]よりも性能は向上している(しかし、その分、代償も支払う羽目になったが)。


 烹炊所では通常の調理設備と未来からの援助された設備が存在する。


 その1つが戦闘配食用の保存食を、すぐに出来たて状態で提供できる設備だ。


 保存食はいくつものの種類が存在するが、戦闘寸前の場合に提供されるのは握飯である。


 握飯にはいくつかの種類があり、基本的に兵、下士官、士官を問わず、3個の握飯(わかめお握り、鶏お握り、塩お握り)と漬け物が付けられて、渡される。


 この調理設備を使用した場合、わずか10分程度で2000人の戦艦[大和]乗組員に提供可能である。


 戦艦[大和]の乗組員は大規模改修により、2000人まで減らす事ができた(史実では就役時2500人、最後の出撃時3300人以上)。


 烹炊所では次々と出来たてに温められた戦闘配食が主計科員に運ばれて、各分隊の各班から派遣された兵卒たちが受け取り、持ち場に届ける。


 2連装一二.七糎速射砲右舷2番砲要員たちは出来たてのような握飯を口に運んだ。


「今日の漬け物は梅干しか!これは元気が出る!」


 2番砲の班長である二等兵曹が、お握りに手を付ける前に梅干しを口に入れた。


 戦艦[大和]の兵装改修点での大きな特徴はこれまで装備された高角砲はすべて撤去され、左右10門の一二.七糎速射砲が搭載された事だ。


 これは速射砲そのものに対空射撃電探と対空射撃電算機が搭載され、海上自衛隊や新世界連合軍連合海軍の護衛艦、駆逐艦等の戦闘艦の足下には及ばないが、この時代では最新鋭の対空速射砲だ。


 もちろん、対水上射撃も可能である。


 砲塔要員は射撃員1名、砲整備員1名、班長1名の3人である。


 砲弾はすべて自動装填であり、1門に付き22発の即応弾が搭載できる。その後は、ただちに再装填が必要だ。


 ただし、彼らが砲の操作をするのは艦長から「各対空砲自由射撃」の命令が出た時だ。それまでは右舷と左舷にある射撃管制指揮所ですべて行われる。





 敵艦載機群が襲来まで15分前を切り、艦隊哨戒型駆逐艦の対空索敵電探が第1次攻撃隊を補足した事を戦艦[大和]に報告した。


 有賀が艦長席から立ち上がり、山本の近くまで近づいた。


「戦闘指揮所に上がります」


「[大和]を頼む」


 山本が短くそう言うと、有賀は挙手の敬礼をした。


 彼も答礼し、さらに艦橋要員と参謀たちが挙手の敬礼をした。





 戦艦[大和]の戦闘指揮所は第2艦橋に設置され、対空、対水上戦闘すべての戦闘指揮を行う。


 史実では第2艦橋は夜戦指揮所だったが、この[大和]は違う。


 わかりやすく言えば、各種電探と各種電算機等を装備した大日本帝国海軍版のCIC(海軍ではそのまま戦闘指揮所と呼称する)である。


 ここで艦長と砲術要員、電探要員、電算要員たちが対空戦と対水上戦に必要な情報を各射撃指揮所に伝達し、射撃指揮所がその情報と指示の下で攻撃する(これは[大和]のみで[武蔵]はもっと緩和されている)。


 通信系統も改修され、伝声管をまったく使わずに交信する艦内通信設備がある。


 特に戦闘指揮所、各射撃指揮所、各砲の直通通信回線はかなり充実した艦内通信設備が構築されている。


 有賀が戦闘指揮所に入ってからすぐに対空見張所から緊急連絡が入った。


「左舷前方より、デヴァステイター雷撃機が突っ込んでくる!」


 対空見張所からの連絡に、有賀は対空索敵電探を担当する電探員に確認する。


「対空索敵電探、敵航空機編隊の状況は?」


「はっ!敵航空機編隊70機は3方向に別れて、艦隊に接近してきます!」


 電探員から報告に有賀はうなずいた。


「主砲三式弾弐型!砲撃始め!」


 有賀の指示で前部主砲の1番砲塔と2番砲塔を担当する射撃士官が電探と電算機からデータを入力し、そのまま主砲射撃指揮所に伝達される。


 戦艦[大和]の最大の特徴である四五口径四六糎3連装砲2門(前部)が旋回し、その砲口を20機以上の魚雷を搭載したTBD[デバスーター]に向けた。


 その砲口が恐ろしい咆吼を上げた。その射撃音と衝撃波は戦艦[大和]の艦体を揺るがした。


「う、うわぁぁ」


 石垣が第1艦橋でその砲撃を目にし、肌で感じた際にそのような声を小さく漏らした。


 発射された対空砲弾である三式弾弐型は砲弾の先端に取り付けられている近接信管が作動し、敵雷撃編隊の手前で自爆し、強力な破片をTBD[デバスーター]の機体に叩き付けた。


 一瞬のうちに数10機以上の雷撃機が撃墜した。


 戦艦[大和]が砲撃を終えると、第1艦隊に所属する2個戦隊の戦艦、重巡洋艦から同じく三式弾弐型が連続発射される。


 戦艦[大和]以下の戦艦、重巡洋艦からの三式弾弐型の対空砲撃で8割のTBD[デバスーター]が焼け焦げた木の葉のように次々と海に墜落していく。


「敵爆撃機編隊の状況は?」


 有賀がすぐに電探員に聞く。


「敵爆撃機第1集団が高度3000から急降下!本艦直上のコースです!」


「取舵20度!機関全速!各射撃指揮所の指揮下で対空射撃開始!」


 有賀の指示は、すぐに操舵室と右舷と左舷にある射撃指揮所に伝えられた。


 各射撃指揮所の砲術員、電探員、電算員たちが必要な諸元入力を行い。各対空砲の対空射撃を開始する。


 2連装一二.七糎速射砲がすぐに旋回し、砲撃を開始する。


 対空砲はこれだけでは無い。


 2連装35粍対空機関砲が左右に14門ある。


 これは供与された35ミリ2連装高射機関砲L-90を艦載型対空火器として大日本帝国海軍が独自に開発、製造した物であり、オリジナルとは別物である。


 この14門の対空砲火はかなり強力であり、電探と電算機と連動しているため、迎撃力は高い。


 それに戦艦[大和]だけでは無く、対空戦闘能力を高めた防空駆逐艦が4隻と対空戦、対潜戦、対水上戦をバランス良く行える汎用駆逐艦群の対空砲火である。


 急降下した爆撃機群も、次々と強力な対空砲火の前に火の塊にされている。


「まるでマリアナ沖海戦の日本とアメリカの立場が逆転したみたいだ・・・」


 石垣は双眼鏡で戦況を見ながら、つぶやいた。


「石垣2尉。ここは私たちの知る過去の歴史ではないわ。まったく異なる現代(いま)、この歴史に貴方の記憶にあるマリアナ沖海戦は発生しない。もし、発生しても、それはまったく異なる陸戦、海戦、空戦が繰り広げられるわ」


 先ほどから、太平洋戦争に詳しい者なら誰でも知っている史実の海戦と比べて、戦闘の感想を述べる石垣にいい加減呆れたメリッサが釘を刺す。


「ケッツアーヘル少尉の言う通りだ。ここは歴史の中では無い。現実だ」


 聯合艦隊参謀長の()(がき)(まとめ)少将が短く彼を窘める。


「え・・・」


 石垣が何か言おうとした時、見張所から第1艦橋に緊急連絡が入った。


「敵ドーントレス爆撃機2機!本艦の対空砲火をすり抜け、本艦直上!」


 この報告に山本たちが空を見上げる。


「取舵一杯!急げ!」


 有賀の回避指示を受けた航海長が叫ぶ。


 2機のSBD[ドーントレス]が搭載している爆弾を投下する。


 しかし、その状況は戦闘指揮所でも確認している事だ。


「爆弾4発!急速接近中!本艦への直撃コース!」


 電探員が報告する。


「対空戦闘!近接防空機関砲迎撃始め!」


 有賀が戦艦[大和]を急降下爆撃機の爆弾や戦艦等の大口径主砲弾から守る最後の防空火器を使う。


 この射撃管制等はすべてここで行う。


 同機関砲は新世界連合が大日本帝国海軍に提供した、C-RAMの輸出型を艦載搭載型にしたものだ。


 C-RAMはアメリカ陸軍が開発したロケット弾、迫撃砲弾、砲弾による攻撃の際に空中で迎撃する防衛火器だ。


 言わば海軍が使用するCIWSの地上車輌搭載型だ。


[大和]型戦艦に搭載されたC-RAMは近接防空機関砲という呼称で装備し、主に対空砲火をすり抜けた急降下爆撃機が投下した爆弾や戦艦等の大口径主砲弾が本艦の至近まで接近し、回避不可能な状況下でのみ使用する最後の防衛火器だ。


 戦艦[大和]の前部と後部に合わせて4門搭載されている近接防空火器が起動し、担当区の近接防空火器が急速旋回し、砲口を向ける。


 20ミリ砲弾を発射する6砲身が高速回転し、火を噴いた。


 4発の爆弾は戦艦[大和]に直撃する事無く、空中で迎撃された。


 ここで第1艦隊に攻撃を仕掛けた70機の攻撃隊の7割が撃墜され、戦艦[大和]以下ほとんどの艦が無傷であった。

 しかし、軽巡洋艦と駆逐艦数隻が投下された爆弾で被弾し、さらに敵機の機銃掃射で、重巡洋艦と戦艦の見張員に戦死者を出した。





 アメリカ海軍、オーストラリア海軍、ニュージーランド海軍の連合艦隊は正規航空母艦[ワスプ]、[ヨークタウン]、[キアサージ]の3隻を基幹とした艦隊である。


フランク・ジャック・フレッチャー少将とレイモンド・エイムズ・スプルーアンス少将はそれぞれ[キアサージ]と[ワプス]に将旗を掲げ、乗艦していた。


 2人の任務はそれぞれ異なり、スプルーアンスが大日本帝国艦隊とゴースト・フリートへの航空攻撃を担当し、フレッチャーがニューブリテン島に上陸している特別偵察隊隊員全員と偵察用資材等を無事に艦に収容し、ニューブリテン島で日本帝国陸軍と共に戦った謎の兵器を使う陸軍部隊の戦闘情報等を必ずアメリカ本国に持ち帰るのが任務だ。


 もちろん、ゴースト・フリートの情報収集も同じように行う。


「提督!山本提督が直接指揮を行う戦艦[大和]以下第1艦隊に攻撃を開始しました第1次攻撃隊70機中帰還機は10数機だけです」


 副官からの報告に、スプルーアンスは不愉快な表情を浮かべた。


(まったく、戦場に1歩も出ない合衆国の政府とワシントン勤務の軍部め!ゴースト・フリートと大日本帝国艦隊の情報収集のためにこのような無謀な作戦を将兵たちに押しつけやがって!)


 スプルーアンスは、苦虫を嚙みつぶしたような思いだった。


「提督?」


 副官が声をかける。


「どうやら、大日本帝国海軍は、我々が彼らの暗号通信を解読している事を把握しているようです。第1艦隊から山本の名で解読不可能な、暗号文を送信しています。我々はまんまと敵の策略に乗せられたのです」


 情報参謀が告げる。


「提督!ワシントンより、緊急連絡が入りました!」


「なんだと!?」


「読め!」


 スプルーアンスと幕僚たちが驚く。


「はっ!海軍省情報部より、スプルーアンス提督指揮の空母機動部隊の作戦海域内にゴースト・フリートの航空母艦を基幹とする艦隊の存在を確認した。ゴースト・フリートのみが使用する謎の通信波を探知!ただちに、当初の作戦目的を遂行せよ、です」


 通信士官の報告にスプルーアンスと幕僚たちは顔を見合わせた。


「通信士官。通信文は確かなのか?」


 情報幕僚が聞く。


「はい、自分も何度も確認しましたが確かにワシントンの海軍機密通信所からの暗号通信です。間違いありません」


「ふむ」


 スプルーアンスは腕を組んで、悩んだ。


 どう考えてもおかし過ぎる。


 これまでの事を考えるとゴースト・フリートは完璧な秘匿性を保って、大日本帝国陸海軍と行動している。


 確かに彼らには独自の通信システムが存在するが、ようやく、基本的な単語がなんとか解読できるまでになっただけだ。


 それ以外は未知数の世界。


「だが、ワシントンの指示である以上は従わない訳にはいかない。ただちに第2次攻撃隊をゴースト・フリートの空母艦隊に向けて出撃させろ!」


「はっ!」


 スプルーアンスもたとえ気が進まなくても、大統領特別命令は軍人である以上は絶対に従わなくてはならない。


 無駄だとわかっている作戦でも最高司令官が、そうしろ、と言えばそれに従わなくてはならない。


 それが民主主義の軍人の勤めである。


 その行動が問題なのかどうかは、後で正規の手順を踏んで知った国民が判断をする事だ。


[ワスプ]と[ヨークタウン]からすべての艦載機が発艦する事になった。


 出撃数80機である。

 策動の太平洋 第11章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

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