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荒ぶる妖蝶 序章 悪霊の独語

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 第3部に突入です。

 1942年1月上旬。市ヶ谷の陸軍参謀本部。


 その会議室の一室を借り切って、菊水総隊の首脳部は会議を開いていた。





「・・・・・・」


 ハワイ占領後の統治態勢の状況説明、東南アジア方面で展開中の、オペレーション・ジャーヌスの進捗状況の説明後、今後の作戦の展開についての議論が、行われていた。


 オブザーバーとして、坂下(さかした)亜門(あもん)1等空佐、霧之(きりの)みくに3等陸佐と共に参加していた石垣(いしがき)達也(たつや)2等海尉は、その席上で一切の発言をせず会議に聞き入っている人物に気が付いた。


 自衛官たちは、陸軍ないし海軍の制服姿だが、その人物はこの時代にそぐわない濃紺色の制服姿だった。



 


 元警視庁副総監、現在は菊水総隊警察派遣団、[陽炎団(かげろうだん)]団長の本庄(ほんじょう)(しげみ)警視監だ。


 本庄は年齢を感じさせない秀麗とも言ってもいい、その顔立ちに似合わない冷たい双眸で自衛官たちの議論をする様子を眺めていた。


 噂は聞いた事がある。


 本庄は、自衛隊に対して批判的な発言が多い人物だと。


 そんな、人物がなぜこの派遣に参加したのかは、謎であった。


 石垣自身も昨年、陽炎団に出向した時に本庄と会っていたが、いい印象は受けなかった。


「一般的に見て、美形なのだけど・・・何だか嫌な感じの人だよね」


 石垣の様子に気が付いたのか、霧之が囁く。


「・・・美形云々は置いといて、半分は同感ですね」


「ゴホン!」


 2人の私語を、咳払いで制止した坂下だったが、渋い表情で本庄を眺めている所を見ると内心は同感らしい。


「・・・君たちは色々と動いていたから詳しい事は知らないだろうが、去年の2月に起こった三国同盟破棄と満州撤退、朝鮮、台湾の独立に反対する、陸軍将校の反乱未遂事件。それに前後して起こった主戦論派の暴動。それを、特高と警視庁特別警備隊と共同で検挙、鎮圧したのが、警察派遣団だ。その中心となって、指揮を執ったのが彼だ」


「・・・もう1つの226?・・・それとも日米の安全保障条約に反対する運動と冬山の山荘人質立て籠もり事件?」


「226はともかく、警察が介入した点ではその反対運動や人質立て籠もり事件に近いだろうが、内容はソレより酷かったそうだ・・・」


「・・・警察の制服より、SSかゲシュタポの制服が似合いそう・・・カッコいいかも・・・」


「・・・そっちですか・・・」


 霧之の言葉に、それを想像して吹き出しそうになるのを石垣は必死で抑えた。





「疑わしきは、罰せよ」


 それが、祖父、父から受け継いだ本庄の信念であった。


 勿論、その過激な思想を忌避する者は多かったが、彼はそれを意に介する事は無かった。


「本庄君」


 会議が終わり、最後に席を立った本庄に総隊司令官、山縣幹也(やまがたみきや)海将は声をかけた。


「何か?」


 本庄は、穏やかな表情で振り返った。


「・・・例の、反乱未遂事件の件で大日本帝国内務大臣より、謝意と共に控えめではあるが苦情が来ている。かなり乱暴なやり口に批判も出ているらしい」


「そうですか・・・それが何か?」


「・・・・・・」


「私は菊水総隊では警察部門での副司令官という地位ですが、権限については自衛隊の干渉は受けない。これは、原田首相と元の時代の警察庁長官の命令書にはっきりと記されています。貴方はそれを承諾したではありませんか、今さら異議を唱えるとおっしゃられるのですか?」


「それは違う!!」


「そうですか、それなら結構。では、私はこれで・・・」


「・・・・・・」


 会議室の扉の前まで来た、本庄は山縣に振り返った。


「そうそう、1つ誤解の無いように申し上げますが、我々は基本的人権、言論の自由、思想の自由、信教の自由。それを全面的に擁護します・・・ただし、それは法を順守する国民に対してのみです。私たちは、その法を守る善良な国民を守るために戦う・・・これは、貴方がたと変わらないと思いますがね」





 参謀本部の廊下を歩いていた本庄の行く手に3人の人影が立っていた。


「やあ、お揃いだね。みや・・・もとい、笹川(ささがわ)君、新谷(しんたに)君、花木(はなき)さん」


 柔らかな微笑を浮かべて本庄は3人の名を呼んだ。


「団長のご指示通り、反国家的思想組織の拠点の情報を全て特高と警視庁に渡しました」


「そう、それは結構」


「・・・団長、本当によろしいのですか?テロリストとはいえ同じ日本人ですよ」


 紅一点の花木が口を開いた。


「アメリカさんがよく言っているだろう。『テロリストとは交渉しない』と、自衛隊が後顧の憂い無く戦えるように、掃除をする・・・それだけの事だ。彼らの戦場が国外なら、我々警察の戦場は国内。それだけの事だ」


 4人は連れ立って、参謀本部の建物を出た。


 彼らの戦場に向かうために。





 菊水総隊の影、警察派遣団[陽炎団]。


 幽霊総隊とも呼ばれた自衛隊に対し彼らはこう呼ばれ、恐怖された。





 悪霊団と・・・

 荒ぶる妖蝶 序章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は12月21日を予定しています。

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