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閑話 

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 今回の話は、ある本を読んでいた時にふと思いついて、勢いで書いてみました。

 ちょっとだけ、寄り道しました。

 楽しんで頂ければ幸いです。

 ハワイ占領後、大日本帝国はホノルル市街を除く、オワフ島の租借を宣言。ハワイ諸島に残留した人々が立ち上げた暫定自治政府に向こう5年間の租借料を支払い、借り受けたのだった。


 もちろん、ホノルル市街及び他の島々の統治は完全に彼らの自治に委ねると確約しての事だった。


 ただ、アメリカの諜報機関の破壊工作等を警戒するために、各港湾施設に入港する船舶の立入検査だけは要求したのだった。


 ハワイ駐留陸軍司令官の任に就いた、栗林(くりばやし)忠道(ただみち)中将はオワフ島を要塞化すると共に、ホノルルと他の島々に対しては、無防備宣言を発令したのであった。





 オワフ島、陸海軍航空基地。


 B-52の離発着も可能な、広大な滑走路脇を、嘉村慶彦(きむらよしひこ)1等空尉と高居(たかい)(なお)()1等空尉は運動着姿でランニングしていた。


「だあぁぁぁ!!何でだぁぁぁぁ!!!」


 嘉村は絶叫しながら、早いペースで走っていた。


「ガキかよ・・・」


 呆れ半分にボヤキながら、高居は後ろを追いかける。


「慶彦、無理なペースで走ってると、バテるぞ」


「うるさい!!裏切り者!!」


「・・・雑煮の餅に餡が入っていなかったぐらいで腐るな」


「俺にとっては絶対に譲れないんだ!!」


「俺はどうでもいいんだが。出された食事は文句を言わずに食う。が、ウチの家訓だからな」


 嘉村が怒っている理由。単に元旦の食事に出た雑煮の餅が餡入りでなかったという、非常に些細な事であった。


 別にこれは不思議では無い。


 基本、軍隊の食事は贅沢である。


 なぜなら、軍人にとって最高の楽しみは食事なのだから。


 例を出すなら、任務中でも潜水艦の食事は基本、どの国でも充実している。


 狭い艦内にずっと閉じ込められているのだから、心の保養は絶対外せないというわけだ。


「ああ~!餡餅入り雑煮が食いたい、マンバのけんちんが食いたい~!!」


「・・・・・・」


 ひたすら絶叫しながら、意味も無く走り続けている嘉村に、高居は肩を竦めた。


「・・・何なら、俺が作ってやろうか・・・」


 かなり距離が離れていたにも関わらず、ボソッとしたつぶやきにも関わらず、嘉村は物凄い勢いで引き返してきた。


「本当か?」


「・・・もち米と小豆があればな・・・」


「よしっ!必ず調達する」


 変な方向にやる気満々になった嘉村は上機嫌になって再び走り出した。


「結局、走るのか・・・」


 走るのに飽きた高居は、歩きながら運動着の尻ポケットから1冊の単行本を取り出した。


 何度も読み返した為、表紙はかなり痛んでいる。


 高居にとっては、自分の人生を決めた大先輩の書いた、大切な本だ。


「お~い、直哉!!」


「何だ!?」


「早く来てみろ!!」


 嘉村の興奮した声に、ポケットに本を突っ込んで追いかけた。





 2人は目前の光景に心を奪われた。


 滑走路を次々と離陸していく濃い緑色の機体。


 零式戦闘機が、空に舞っている光景は、圧巻であった。


「かっけぇ~!!」


「・・・・・・」


 青い空を飛翔する、零戦は不思議な美しさを持っていた。


 時間が経つのも忘れて、2人はその光景をいつまでも眺めていた。


「何者だ!?ここは、部外者は立入禁止区画だぞ」


 急に鋭い声が掛けられた。


 振り返ると、飛行服姿の青年が、鋭い視線で睨んでいた。その青年の顔になぜか見覚えがあった。


「ほえっ?」


「?」


「君たちの所属は?」


「菊水総隊第10航空団所属、嘉村慶彦1等空尉」


「同じく、高居直哉1等空尉」


 青年の問いに、2人は答えた。


「失礼しました。菊水総隊の方々でしたか、自分は・・・」


 青年は慌てて挙手の敬礼をする。


「あぁ~!!坂井(さかい)三郎(さぶろう)特務中尉!!・・・いや、今は2等飛行兵曹だったかな」


 名乗りかけた坂井を遮って、高居は声を上げた。


「・・・私を知っているのですか?・・・あ、それもそうですね・・・」


「サイン下さいっ!!!」


 高居は、単行本を取り出して坂井の目前に突き付けた。


「俺も!俺も!あっ!!何もない!」


「・・・・・・」


 2人の興奮振りに、坂井はドン引きして単行本の表紙を見詰めて、怪訝な表情を浮かべた。


「・・・私の名前?」


「はいっ!これは、貴方が戦後に書かれた本です!!俺の宝物です!!」


「・・・・・・」


 坂井は高居の表情と、単行本を交互に眺めて照れたように、苦笑を浮かべた。


「私はそんな凄い人物なのですか?一介の飛行機乗りですよ。貴方がた将校殿の方がずっとすごいでしょう・・・」


「いいえ、俺にとって貴方は人生の先達です」


 興奮覚めやらぬ、高居の様子は嘉村でさえ見た事が無かった。





 大日本帝国軍は、菊水総隊の編成を手本に空軍の創設を決定。


 現在、陸海軍の航空隊から優秀な人材を集めて、航空予備軍を編成し訓練に当たっている。


 彼らの主任務は開発中の国産重爆撃機の護衛任務だという。


 長距離飛行の可能な重爆撃機の護衛専用の長距離飛行戦闘機も開発中だという事を坂井から聞かされた。


「いつの日か、貴方がたと一緒にこの空を飛びたいです」


 坂井はそう言って笑った。





 余談だが、坂井から単行本を貸してほしいと頼まれた高居は二つ返事でOKしたという。


 閑話をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は1回お休みをいただき、12月14日を予定しています。

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